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JSQCニューズ 2015年 5月 No.340

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■トピックス:品質管理検定レベル表改訂について
■私の提言:温故知新−日本の品質管理の再興を願って
・PDF版はこちらをクリックしてください →news340.pdf

トピックス
品質管理検定レベル表改訂について

(独)統計センター 椿 広計

品質管理検定レベル表改定の経緯
 品質管理検定は、2005年に開始されて10年になる。2015年3月に実施された第19回検定までの累積受検申込者数は616,672名、累積合格者数は332,264名に達し、わが国品質管理界でも屈指の人財育成事業に成長した。
 品質管理検定運営委員会は2012年4月から制度見直しを開始し、2013年1月に「品質管理検定新制度の概要」を発表し、準1級制度の創設や複数回受検による研鑽の奨励などを展開した。この結果、第19回受検者数は、61,512名と過去最高になっている。
 制度見直しの際、産業界の国内外のニーズや品質管理の発展に併せて変化する「品質管理で求められる知識・能力」に対応するために、「品質管理検定レベル表の定期的な見直し・改訂」を実施することも表明した。今般、認定団体である日本品質管理学会理事会の承認を受けて、2015年9月に実施される第20回検定から、改訂品質管理検定レベル表に基づく出題で検定が実施されることとなった。

レベル表改訂作業とその方針
 改訂作業は2013年7月から2014年8月まで、小職を責任者とするレベル表改訂WGが行った。そこでは、日本品質管理学会、産業界、技術小委員会(出題委員会)からの意見の取集が行われた。品質管理の基本的考え方が短期的に変わることはないので、全面改訂の必要性はないというのが当初からのコンセンサスであった。しかし、現行の出題範囲の問題点を拾い上げると共に、日本品質管理学会編「品質保証ガイドブック」との整合性、特にレベル表大項目のあり方などについての議論を行った。また、1級から3級までに必要な知識を概観するために、出題範囲とする項目を縦軸に、必要な知識のレベルを横軸にしたQC検定レベル表マトリックスを作成することとした。
 レベル表マトリックスは、品質管理に必要な知の領域も可能な限り俯瞰できるよう、大項目、中項目(実践分野では一部小項目も加えている)を配置した。また、各小項目に対して、知らなくても良ければ無印、言葉として知っていれば良い項目は△、その内容を知識(定義と共に基本的な考え方)として理解すべき項目は○、その内容を実務で適用できる項目は◎が付されている。今回のレベル表で試験範囲に追加された項目については級ごとに*も付されている。例えば、実践分野には大項目「品質保証」には中項目「新製品開発」、小項目「品質保証体系図」が配置されているが、3級は△*として新たに試験範囲とし、2級は、○、1級は、◎といった形で従来通りということが分かるようにした。

前回レベル表からの変化点
 今回改訂で強化した項目は、実践分野では3級に限定された。中項目「新製品開発」小項目「課題達成型QCストーリー」、「測定誤差の評価」、「官能検査、感性品質」、「品質マネジメントの原則」、「ISO9001」である。多くは、△レベルとしての追加である。
 手法分野は、確率分布、計数値データに基づく検定・推定を中心に強化が行われている。3級では、「相関係数」が◎、「正規分布」、「指数分布」、「p管理図、np管理図」が○レベルを要求している。級では、計数値に関わる確率分布(二項分布、ポアソン分布、統計量の分布)が◎、大項目としての「計数値データに基づく検定と推定」の大半が◎に強化された。これ以外に「回帰診断」、「信頼性データのまとめ方と解析」が○になっている。1級でも、あらたに「ノンパラメトリック法」と「感性品質と官能評価手法」が○として追加された。
 品質管理検定を利用して品質管理を勉強する方が大変多くなったが、比較的専門家が受検した初期から比べると合格率は減少している。しかし、品質管理活動ないしはそのリーダーに必要な知識には、一定の保証が必要である。産学の多くの皆様方には、これからも十全の準備と研鑽を積んで品質管理検定に挑戦して頂くことをお願いしたい。


私の提言
温故知新−日本の品質管理の再興を願って

 
(一財)日本規格協会 研修事業部長 古川 静男

 孔子の名言に「温故知新」という言葉がある。会員のみなさんには、言わずもがなではあると思うが、温故知新とは、“昔のことをよく学び、そこから新しい知識や道理を得たり、過去の事柄を研究して、現在の事態に対処する”ことである。そこで、最近の日本の品質管理教育の状況を考えてみたい。高度成長期には、当会をはじめとする管理技術を普及する団体や企業内で開催されるセミナー・講習会は盛況を極め、また、TQC(M)やQCサークルなどの活動に関する発表会も然りであった。さらに、管理技術をテーマとした機関誌などでは、各社の事例が豊富に掲載され、参考としたいものは容易に入手することができた。
 ところが、昨今のグローバル化の進展が凄まじい中、規模の大小を問わず日本企業の多くが海外進出を果たし、QCDそれぞれの局面で競合他社と凌ぎをけずっている状況であり、その忙しさのあまり、品質管理教育の実態は高度成長期とは程遠い状況になり、おざなりにされているのではなかろうかと感じている。
 現在、本学会では、これらを打開し日本の品質管理の再興のために、大久保会長のリーダーシップの下、長期計画検討会に於いてこれからの本学会の在り方を討議中であるが、今後、当会をはじめ管理技術を普及する団体などが参画してALL JAPANでの品質管理活動支援体制を構築し、もう一度品質管理の概念を正しく発信し、日本の品質管理の再興を提言する予定である。
 今年はISO9000、14000規格のダブル改訂が予定されているが、奇しくも石川馨先生の生誕100年の年でもある。孔子の教えに倣って石川馨先生など先人の智慧や高度成長期の事柄を研究して、新しいものと旧いものを融合させ、更に有効な管理技術を開発し、それを活用することにより日本の品質管理が再興すること願っている。また、標準化を普及推進する教育機関の一員として、そのお手伝いが出来ればと考えている。

 


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