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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2009年 5月 No.292

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■トピックス:トピックス:ISO 9000シリーズ最新情報
■私の提言:気軽に参加できる問題検討の場「ワークショップ」を活用しよう
・PDF版はこちらをクリックしてください →news292.pdf

■ トピックス
  ISO 9000シリーズ最新情報

東京大学 飯塚 悦功

 2009年2月23日(月)〜28日(土)、東京有楽町の東京国際フォーラムにおいて、第26回TC176総会が開催された。
日本がTC176を主催するのは3回目になる。最初が、ISO 9000シリーズの最初の版の内容が固まった1985年、次が2000年改訂の最終段階の2000年夏である。開催費を工面することが難しく、主催の立候補がないなかで、ISO 9001の対訳本の印税の寄付を元にして、日本が一肌脱いでの開催であった。

 総会の前、2008年11月15日ISO 9001の2008年追補改正版が発行され、12月20日にその翻訳規格のJIS Q 9001の2008年改正版が発行された。この追補改正版は、2000年版の要求事項の意図を変えずに、要求事項の明確化及びISO 14001との両立性向上を目的とするものである。追補改正版の明解な表現により、2000年版で誤解していたことが分かったら、QMSの運用を修正すべきだし、認証機関も審査、認証の判定基準を是正することになる。移行は2年間で行われる。新規認証または再認証(更新)は1年以内に2008年版基準に切り替え、2000年版での認証は2年以内に2008年版基準に切り替える。
 ISO 9001:2008の発行を受け、東京総会では、次期改正の方向性を検討する新しいタスクグループの会議が開催された。ブレーンストーミングの結果をまとめた文書が会期後に回付されている。もちろんこの内容が2015〜16年と想定される次期改正版を規定するものではないが、議論の方向性を示すものとはなっている。
 ISO 9001の発行を受けて、中小企業のためのISOハンドブックの改訂についての検討もなされた。ISO 9001要求事項に実質的な変化がないので、それほど難しい作業ではなく、改訂案は本年中にISO中央事務局に提出されることになるだろう。
 ISO 9001とコンシステントペア(統一性のとれた一対の規格)と位置づけされるISO 9004の改正については最終段階の審議が行われた。ISO 9004は、ISO 9001と異なり大幅な改正を計画している。そのベース文書は、JIS Q 9005(及びJIS Q 9006)である。持続可能な成長との副題を持つ、変化への対応に焦点をあてた、2005年12月発行のJISである。当初はISO 9001の追補改正審議と並行して進めてきたが、一方は追補、他方は大改正とあっては、ISO 9001の方が待っていられない。2007年6月にISO 9001追補はISO 9004に先んじて検討を進めることにした。
 2008年8月に回付されたDIS(国際規格案)の賛成多数を受けて、FDIS(最終国際規格案)作成作業が行われた。ISO 9004改正案のDISに対するコメントを処理して、会期後に準備される文書をFDISとして投票のために回付することが可決された。そのFDISは現時点(2009年4月13日)では、まだ発行されていない。このペースで行くと、国際規格が発行されるのは、本年11〜12月になりそうである。
 改正ISO 9004の出来には満足していない。日本の原案をほぼそのまま採用してくれればよいのだが、得意なところ、よく分かるところだけに着目して付けられるコメントを吸収していると「船頭多くして船やまに登る」となる。ISO 9004改正に対応してきた国内委員は、ISO 9004改正発行の暁には廃止も考えていたJIS Q 9005を改正する必要性を感じ始めている。
 用語と基本概念を規定しているISO 9000の改正審議も進められた。この改正はISO 9001には実質的影響を与えない。おもに、ISO 9004で取り入れた新たな概念の定義と、監査、計測、顧客満足、構成管理、プロジェクトマネジメントなど関連規格で使われている用語の定義の取り込みである。発行は2010年秋以降になってしまうだろう。
 監査の指針ISO 19011の改正審議も進められた。ISO/CASCO(適合性評価)で検討されているISO/IEC 17021-2との関係もあり、第三者認証審査を除くマネジメントシステム監査のための指針にすることになり、WD2(第2次作業文書)が作成された。
 最後に、重要課題とされてきた認証制度の信頼性について、マイナス面への対応から、プラス面を生かす方法の検討に軸足を移すことが確認されたことをお伝えして短い報告を終わる。



■私の提言
 気軽に参加できる問題検討の場「ワークショップ」を活用しよう

山梨大学/研究開発委員長 渡辺 喜道

 いわゆる団塊の世代の人々が大量に退き、企業内のQCの専門家が極度に不足している状況の中、QCの重要性が再認識されるようになっています。これはQCの基本を再度勉強しなおす絶好の機会とも考えられます。これを機に、気軽に参加できる問題検討の場であるワークショップを活用し、QCの基本を再確認してはいかがでしょうか。
 日本品質管理学会では、特定のテーマを調査研究するために、テーマ別に研究会を設置することができます。今までの体制で設置できる研究会は、公募研究会と計画研究会、研究準備会でした。公募研究会は会員からの公募を受けて、計画研究会は研究開発委員会独自の検討に基づいて、研究準備会は研究会を立ち上げるまでの準備として、それぞれ設置することができます。現在は、4つの計画研究会が活発に活動しています。
 今回、上記の研究会の他に新たな枠組みとして、ワークショップを設置できるように研究開発委員会内規を改訂致しました。ワークショップは気軽に参加できる問題検討の場であり、学会員が現場ベースで交流し、産業界等のQCに関するニーズを理解できる場を提供し、問題解決を図ることを目的としています。現場の品質管理ニーズは、高度な統計手法の活用だけではなく、目的を達成するために必要な実践的で基本的なQC関連手法も対象範囲としています。また、ワークショップのメンバー全員が何らかの材料を持ち寄り、それを材料として議論することに特徴があります。研究会と異なり、成果に関する報告書の提出の義務はありません。
 具体的なワークショップのテーマの案としては、効果的な作業標準やQC工程図、管理図、QFD、FMEA、FTAなどの現場で役立つQC手法に関すること、多種少量生産や超短納期生産などの生産形態に関すること、騒音・振動や油漏れ・水漏れ、組み立てミス、つけ忘れ、ppmレベルの管理などの日常のQC活動のこと、新人教育や非正規社員の導入教育、高度統計手法に関する教育など教育・訓練に関すること、などが挙げられます。
 このようなワークショップを活用していただき、QCの実践的問題について議論・検討することを通して、QC活動のさらなる活性化を期待しています。


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