社団法人日本品質管理学会
第41年度 自 2011年(平成23年)10月 1日
至 2012年(平成24年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:坂根 正弘)

 本年度は第3期中期計画の初年度にあたり、中期計画の「Qの確保」、「Qの展開」、「Qの創造」と「共通領域の推進」の4本柱を継承し、更なる充実発展を図るべく運営しました。これらの4本柱の主な活動は次の通りです。
(1) 「Qの確保」
 産学連携活動推進WGは、産学連携の更なる強化を図るため、7月に「開発・設計における品質のつくり込みとプロセスの見える化−産学連携の視点からのアプローチ−」と題してシンポジウムを開催し、5社の事例を紹介しました。また、研究テーマ一覧表の作成や賛助会員へのアンケート調査等によるニーズとシーズの明確化を図ると共に、産学連携の強化・拡大のための仕組みづくりを積極的に進めました。今後は、これらの成果を踏まえて、グローバル展開を行っている企業の現地教育に対する悩みを整理し、「品質管理教育プログラムの研究会」を開始します。
 信頼性・安全性計画研究会は、災害リスクへの備えという視点を重視した研究を行いました。ベストプラクティスの収集と解析を行い、リスクマネジメントのフレームワークを具体化・深化させ、その成果を第98回研究発表会で報告しました。
(2) 「Qの展開」
 研究開発委員会については、医療経営の総合的「質」研究会が開発した「医療のTQM七つ道具」に関する書籍が12月に出版されました。加えて発刊記念講演会をJSQC主催で4月に開催しました。
 部会については、医療の質・安全部会が患者状態適応型パス(PCAPS),医療の質マネジメントシステムを中心に研究し、その成果を3月、9月に研究発表会等にて発信しました。
 TQE特別委員会は、初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として、初等中等向け問題解決ステップの検討を行い、その成果をJSQC HPで公開しました。また、産官学協力の下にJSQC主催第2回科学技術教育フォーラムを12月に成城大学で開催しました。さらに、平成23年度より統計グラフ全国コンクール表彰に新たに日本品質管理学会賞を制定し、問題解決力向上に努めた優秀な作品に、総務省主催の第61回全国統計大会(11月開催)で第一回目の授賞を行いました。加えて、文部科学省初等中等教育局「教職生活全体を通じた教員の資質能力の総合的向上方策について」に関するパブリックコメントとして2つの提言を実施しました。原子力安全特別委員会は、関連学会と「原子力の安全管理と社会環境に関するワークショップ」を3月、10月の2回開催し、テーマ「安全の確保と信頼・理解の醸成」等に関する発信・公開を行いました。運輸安全特別委員会は、ISO 39001「道路交通安全マネジメントシステム−要求事項と使用のための指針−」の国内審議委員会(自動車事故対策機構)などへの参画・協力を行うとともに、品質管理分野から研究すべき課題の整理を行いました。ISO 39001は2012年10月に発行されました。
(3) 「Qの創造」
 サービス産業(販売業)における顧客価値創造研究会を中心に活動を行い、売上とブランドイメージをUPさせる販売サービスについてG社との共同研究を実施中です。
(4) 「共通領域」
 会員数については、現在(対前年同期比)正会員2382名(71名減)準会員99名(6名増) 賛助会員157社212口(4社28口増)となっています。企業を取り巻く環境が厳しく経費削減の波を受け正会員の数が漸減しています。
 会員サービス委員会は、企業に学会活動への参加を働きかけ、賛助会員数、口数を増やす努力をしました。また、毎回 約25,000人のQC検定合格者に対してJSQC入会の誘致を行い、品質管理の啓発・普及に努めました。さらに、QC検定に合格した会員に対する「JSQC認定上級品質技術者」および「JSQC認定品質技術者」の認定制度導入を検討し、制度を確立しました。加えて、主に企業に所属する方を対象に、「職域会員資格」を新設し、職域(例、品質保証部長やTQM推進室長)に対する会員資格を設けることで、人事異動や職場移動に伴う正会員の入退会の手続きを簡素化することを検討しました。
 公益法人法改定に伴い一般社団法人への移行に向けて、定款変更、公益目的支出計画の作成など、内閣府への一般社団法人移行認可申請を行いましたが、内閣府からいくつかの指摘事項があり、2012年1月に移行認可の再申請を行いました。9月下旬に正式な移行認可を受け、10月1日に登記を完了しました。それに併せて公益法人法対応特別委員会および規程委員会で新法人下での「代議員・役員候補者選挙規程」や関連内規の見直しと作成を行いました。今後は合同委員会に運営を引き継ぎます。年次総会を経て42年度から新法人として学会運営を開始します。
 国際委員会では、中国CAQと香港HKSQの共催で7/31-8/3に香港で開催された第10回ANQ大会にJSQCから48件の発表を行いました。国際活動の積極的推進の一環として若手へのANQ旅費支援を継続し負担軽減することにより、参加者の意識が向上していることが確認できました。
 なお 詳細は各委員会の報告をご覧ください。

2.総合企画委員会(委員長:坂根 正弘)

 第41年度は第3期中期計画の初年度にあたり、方針に沿って4本柱を継承し「安全・安心」と「信頼性」を基盤とした繁栄する社会の構築にむけて、産学官が取り組む課題や学会員のニーズに合ったテーマを取り上げていくことにしました。このため、総合委員会で議論を進め、企業が学会活動に関心を持つように働きかけることを念頭に計画を見直し、関連委員会や支部と連携しながら推進しました。
ねらい 「会員の増強」、「一般社会や企業で“TQM、品質管理の有効性”の意識向上」
方策  1. 経営者へのQC検定活用や学会参画の働きかけ
  2. 産(企業の会員)の学会活動への参加メリットを紹介
学会で行っている研究活動の内容がわかり易い資料を企業に紹介
  3. 産学連携活動に積極的な取り組みを継続 
学のシーズのメニュー化、産のニーズ(困りごと)の収集、共同活動推進
  4. モノ作りについて経験や知識の少ない学生に、社会や企業で求められていることを実感させる場の提供(考える力、現状把握能力、論理思考能力等)
 主な活動事項は下記の通りです。なお詳細は各委員会と部会の報告をご覧ください。
(1) 産学連携の強化・拡大、共同研究の推進
(2) QC検定制度の普及や品質管理の考え方や技法を広め産業界の活性化
結果として、学会員の増加を図る
(3) 初等中等教育指導要領の見直しに伴う「生きる力・考える力」育成支援
(4) ANQを通したアジア諸国へのTQM普及活動を積極的に推進
(5) 公益法人法改正に伴う一般社団法人移行申請と運営準備

3.事業委員会(委員長:兼子 毅)

 第41年度事業は本部(年次大会、研究発表会、ヤングサマーセミナー各1回、シンポジウム4回、講演会1回、事業所見学会4回、クオリティトーク4回)、中部支部(研究発表会、シンポジウム、講演会各1回、事業所見学会2回)、関西支部(研究発表会、シンポジウム、講演会各1回、事業所見学会2回、QCサロン5回)とほぼ例年通りの事業を開催しました。
 また、今年度は新しい試みとして、JSQC規格の発行に関連した講習会を1回実施いたしました。支部行事は基本的に各支部の主体性にお任せしており、地域の会員のニーズを反映した行事を企画していただき、各々好評をいただいております。
 今年度も多数の会員に参加いただき、心より御礼申し上げます。次年度以降もよろしくお願いします。以下簡単に主な本部行事の状況を説明いたします。
(1) 年次大会、研究発表会
 第41回年次大会は昨年10月28日と29日、愛知県の名古屋工業大学にて開催し、研究発表50件、201名の参加者がありました。
 第98回研究発表会は本年5月26日と27日に日本科学技術連盟東高円寺ビルにおいて開催され、一般発表で53件、参加者は202名でした。チュートリアルの参加者は91名と盛況でした。
(2) シンポジウム
 以下の4回を開催しました。参加人数は合計456名で昨年度の約1.5倍(昨年は308名)となりました。
2011年11月12日 第137回シンポジウム
  「品質の視点から見たサプライチェーンの課題と展望」(日本科学技術連盟東高円寺ビル)
2012年3月13日 第139回シンポジウム
  「ものづくりのグローバル化と現地化」(日本科学技術連盟東高円寺ビル)
2012年7月9日 第141回シンポジウム
  「開発・設計における品質のつくり込みとプロセスの見える化」(日本科学技術連盟本部)
2012年7月21日 第143回シンポジウム
  「品質マネジメントシステムの監査技法の向上とISO9001の活用」(日本科学技術連盟本部)
(3) 講演会
 以下の1回を開催し、参加人数は56名でした。次年度も、時宜を得た企画の実施を目指します。 
2012年4月20日 第112回講演会
  「『医療のTQM七つ道具』出版記念講演会」
(4) 事業所見学会
 年次大会と同時開催の2か所を合わせ、合計4回の事業所見学会を実施し、いずれもユニークで優れた活動を展開する事業所を見せていただき、参加者から高い評価をいただきました。
2011年10月28日 第41回年次大会 A:LIXIL榎戸工場、B:アイシン精機 小川工場
2012年6月28日 第359回 崎陽軒 横浜工場
2012年7月24日 第362回 富士ゼロックス 横浜みなとみらい事業所
(5) クオリティトーク
 ほぼ隔月に開催し、20〜30人の少人数の参加者がくつろいだサロン的雰囲気で一流講師の講演を聞き、活発なディスカッションの場を提供する本部独自のユニークで贅沢な行事です。41年度も以下の多彩なゲストとテーマで4回開催し、好評をいただきました。
2011年12月20日 第77回 鈴木 秀男氏
「サービス品質の構造を探る−プロ野球の事例から学ぶ−」
2012年2月21日 第78回 河野 龍太郎氏
「医療安全へのヒューマンファクターズアプローチ」
2012年5月17日 第79回 永田 靖氏
「工程能力指数−実践方法とその理論−」
2012年8月28日 第80回 本田 陽広氏
「FMEA辞書−品質問題を無くす設計と設計審査の考え方−」
(6) ヤングサマーセミナー
 2012年9月8、9日、埼玉県本庄市にあるサンデン・コミュニケーションプラザにて「品質保証の実践」をテーマに実施し、大学院生、大学生を含め、18名の参加がありました。
(7) 講習会
 JSQC規格「品質管理用語」の発行にともない、同規格の講習会を開催しました。今後各支部などでの開催も検討しています。
2012年6月15日 JSQC「品質管理用語」講習会(日本科学技術連盟本部)
 「用語の定義を通して品質管理の本質を学ぶ」

4.中部支部(支部長:山内 康仁)

(1) シンポジウム(第140回)
日 程: 7月11日13:00〜17:00 (場所:刈谷市総合文化センター)、*参加者:186名
テーマ; 「新たな時代を見据えた新たな成長力の確保」
〜パラダイムシフトの中、企業が継続的に成長するために大切なことは何か〜
  基調講演 法政大学:坂本 光司 氏;企業経営の目的・使命
  事例講演 ①西島(株):西島 篤師 氏;定年のない会社のものづくり、人づくり〜一生元気・一生現役〜
      ②未来工業(株):山田 昭男 氏;社員のやる気を引き出せ!〜発想と差別化の“型破り経営”〜
  パネル討論会 司会; 学会幹事
      パネラー; 坂本 光司 氏・西島 篤師 氏・山田 昭男 氏
(2) 講演会(第113回)
日 程: 5月21日13:00〜16:40(場所:刈谷市総合文化センター)、*参加者:158名
テーマ; 『新たな時代を見据えた新たな成長力の確保』
講 演; コマツ取締役会長 坂根 正弘 氏;ダントツ経営
中部大学 教授 武田 邦彦 氏;これからの日本のエネルギー問題を考える
(3) 研究発表会(第99回)
日 程: 8月29日13:00〜18:20(場所:名古屋工業大学)、*参加者:79名
テーマ; 「『実践的Qの確保』の拡大・深化」
発表内容
  産業 - 5件(SQC活用による最適設計・最適生産条件の追及、品質機能展開の応用など)
産学連携 - 2件(設計最適化技術におけるSQCの有用性の追求など)
医療 - 1件(歯科材料在庫低減の研究)
(4) 事業所見学会
  第1回(第356回):KYB(株) 岐阜北工場[3月26日参加者:35名]
 *テーマ;「岐阜北工場における品質改善活動」
  第2回(第360回):愛知製鋼(株) 知多工場・鍛造工場[7月2日 参加者:22名]
 *テーマ;「鋼材・鍛造品の品質改善活動」
(5) 幹事研修会
  第1回 4月20日;日本理化学工業(株) 川崎工場 訪問〔テーマ;品質を確保するための人材育成〕
  第2回 8月24日;コマツ粟津工場 訪問〔テーマ;「Qの確保」のための未然防止活動〕
(6) 研究会活動
  1) 東海地区若手研究会[名古屋工業大学;仁科教授 主催](計画5回/実績5回)
  2) 北陸地区若手研究会[金沢工業大学;石井教授 主催]研究発表会(計画2回/実績2回)
*研究発表会;(第一回)3月3日、発表7件 (第二回)8月2日、発表6件
  3) 産学連携現地現物研究会[早稲田大学;永田教授 主催 学側;仁科教授 産側;渡邊技監](計画4回/実績4回)
  4) 中部医療の質管理研究会[中部学院大学;國澤教授 主催 医療側;岐阜市民病院 冨田病院長](計画6回/実績6回)
*各部会(看護・薬剤・事務)を主管とし、テーマに基づいた活動を展開[偶数月開催]
*第6回中部医療の質管理研究会シンポジウム [12月18日 長良川国際会議場中部支部後援]
(7) その他:協賛行事
  第9回日本OR学会中部支部シンポジウム [6月30日 名城大学名駅サテライト]
テーマ;「最新データ・サイエンスの動向」

5.関西支部(支部長:岡原 邦明)

(1)
事業所見学会
第358 回5月24日(木) (株)GSユアサ 産業電池生産本部[参加者 42名]
  「GSユアサ産業電池生産本部のTQMの取り組み 〜社会インフラを支える蓄電装置の生産現場におけるTQMの取り組みを学ぶ〜」
   40名を超える申し込みがありました。丁寧な対応で見学会を受入れていただき、アンケートも大変好評で、充実した見学会となりました。
第361回7月27日(金) (独)国立文化財機構 奈良文化財研究所[参加者 26名]
  「奈良文化財研究所 埋蔵文化財センター 〜最先端科学による古代遺産の調査研究と研究成果の活用について学ぶ〜」
   通常は見学できない研究施設や研究内容を見せていただくなど、アンケート結果も大変好評でした。
(2)
講演会
第114回6月13日(水)PM (会場:大阪大学中之島センター)[参加者115名]
テーマ:「組織力を高める、ミドルマネジメントのあり方とその育成」
講演①: 『 組織力を 高めるミドルマネジメント 』 平井 孝志 氏
((株)ローランド・ベルガー 取締役シニアパートナー)
講演②: 『コーチングによる次世代リーダーの育成』桜井 一紀 氏
    ((株)コーチ・エィ 専務取締役)
 企業を中心に100名を超える申込がありました。ミドルマネジメント層に元気と勇気を与えて頂き、アンケート結果も上々でした。
(3)
シンポジウム
第142回8月28日(火)PM (会場:中央電気倶楽部)
テーマ:「日本の技術力・プロジェクトマネジメント力による成功例に学ぶ」[参加者122名]
講演①: 『「はやぶさ」 が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行、その7年間の歩み』
川口 淳一郎 氏((独)宇宙航空研究開発機構 教授)
講演②: 『10ペタフロップスのスーパーコンピュータ「京」』
    渡辺  貞 氏((独)理化学研究所 計算科学研究機構 統括役)
パネル討論:『スーパーコンピュータ「京」プロジェクト推進の実際』
司 会:今野  勤 氏(神戸学院大学 教授)
メンバー: 渡辺  貞 氏(講演者)
新庄 直樹 氏(富士通(株) 次世代テクニカルコンピューティング開発本部 システム開発統括部 統括部長)
長屋 忠男 氏(富士通(株) 次世代テクニカルコンピューティング開発本部 ソフトウェア開発統括部 統括部長)
  講演①については、はやぶさプロジェクトの歩みに加え、今後の方向性について、非常にわかりやすいお話を伺うことができました。講演Aについては、「京」の全体像から詳細にいたるまで技術的なお話を含めて紹介いただき、さらにはパネルディスカッションにおいて、実際にプロジェクトを進める上でのポイントなど、多くの示唆に富むお話を伺うことができました。アンケート結果も大変好評でした。
(4) 研究発表会
第100回9月14日(金)(会場:大阪大学中之島センター)[参加者50名]
特別講演『ナイチンゲールと統計学』 丸山 健夫 氏(武庫川女子大学 教授)
 発表件数は18件(研究11件、事例7件)。最優秀賞、優秀発表賞及び学生を対象とした優秀発表の表彰を行いました。
(5) 研究活動報告
1) 統計的品質情報解析研究会
 「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」を行いました。
2) 科学的先手管理アプローチ研究部会
 マネジメントの課題を階層別に取り上げ、日本品質管理学会が培ってきた数々のQC(信頼性、IE、OR等を含む)技術をベースにし、科学的な先手管理、源流管理へのアプローチを体系化しています。
3) 品質管理教育教材開発研究会
 学生が、モノづくりやそれを支える品質管理に対して興味が持てるように、学校・企業の教育分野で使える品質管理教育の教材を開発し、教育の仕方やマニュアルも併せて提案しました。
(6) QCサロン
第85回2月23日(木)品質管理教育教材開発研究会(JSQC関西支部)[参加者23名]
  『 開発教材「パッティング機」・・・みなさんで使ってみませんか? 』
第86回4月5日(木)岩崎 日出男 氏(近畿大学)[参加者26名]
  『 質を第一とする人材育成 』
第87回 6月14日(木)村川 賢司 氏(前田建設工業(株))[参加者18名]
  『企業の社会的責任〜CSRの視点からTQM・リスクマネジメントの融合に向けて〜』
第88回 8月 31日(金)岡田 育子 氏((医)橘会 法人本部)[参加者13名]
  『 医療と小集団活動 』
第89回 10月 25日(木)持田 信治 氏(流通科学大学)(予定)
  『 プロジェクトマネジメントの実践(仮題) 』
(7) 合同役員会 2011年10月13日(木)、12月9日(金)、2012年2月23日(木)、4月5日(木)、6月14日(木)、8月31日(金)

6.論文誌編集委員会(委員長: 山田 秀)

 論文誌編集委員会では以下の活動を行いました。
(1) ほぼ、毎月1回の論文誌編集委員会を開催しました。論文誌編集委員会の責任に基づき、査読意見を参考にしながら、編集委員会が掲載の可否を判断してきました。また、「著者責任」を基本とし、新規性・価値のある主張を含む論文については掲載する方向で進めました。
(2) 香港で開催されたANQ 2012にあたり、国際委員会の委託を受けて、以下の活動を行いました。
1) JSQCから提出された全てのアブストラクト(全49本)に対する審査
2) フルペーパーに対するBest Paper Awardの審査
(3) 投稿論文審査のスピード化も引き続きめざした結果、大幅に遅れるものはなくなりました。しかし、さらに迅速に審査が進むように、次年度以降に新たな対策を実施する必要があります。
(4) 読者にとって有益な論文補助情報をwebに掲載するべく、基本的な方針を定めました。この情報の例として、論文に掲載しきれない適用事例の詳細、事例における全データ、詳細な数理的な証明が挙げられます。
(5) 表1に過去5年間(37年度〜41年度)の月別投稿論文数を、表2に過去5年(36年度〜40年度)の投稿区分別採択数を示します。41年度は審査中のものがありますので、採択数は36年度から40年度を示しました。一度却下されたものが再投稿される場合もありますので、単純に採択率を計算することはできませんが、おおむね4割程度が採択されています。
 

表1 過去5年間の月別論文投稿数

  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
37年度 1 1 3 1 2 0 6 5 3 0 2 3 27
38年度 1 3 2 1 3 3 1 2 2 0 5 2 25
39年度 6 0 3 0 1 2 0 4 1 2 3 1 23
40年度 1 2 2 4 2 2 2 1 1 2 2 3 24
41年度 1 8 2 3 0 1 2 0 4 0 1 1 23

 

表2 過去5年間の投稿区分別採択数

   36年度 37年度 38年度 39年度 40年度 5年間合計 採択率
投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択 投稿 採択
  37 14 27 8 25 8 23 11 24 11 136 52 0.382
報文 17 4 6 3 8 3 9 6 16 9 56 25 0.446
技術ノート 5 2 6 3 5 3 2 2 3 0 21 10 0.476
調査研究論文 2 1 4 2 6 2 6 1 2 0 20 6 0.300
応用研究論文 4 3 3 0 3 0 5 1 2 2 17 6 0.353
投稿論説 6 2 7 0 2 0 0 0 0 0 15 2 0.133
クオリティレポート 3 2 0 0 1 0 1 1 1 0 6 3 0.500
QCサロン 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.000
レター 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0.000

7.学会誌編集委員会(委員長:田村 泰彦)

 第41年度では、Qの確保,Qの展開,Qの創造の学会中期計画の方針を踏まえ、企業で課題となっている品質管理に関わる内容を取り上げ、特集を企画しました。また、新しく連載企画を立ち上げ、学会員に新鮮な情報をタイムリーに提供できるようにしました。さらに、若手研究者からの情報発信の機会となるように、研究紹介コーナを設置しました。
 本年度は特集、連載などの企画について、1回/2か月程度のペースで委員会を開催し、継続的に内容を検討してきました。
本年度品質誌に掲載された特集のテーマは、以下の通りです。
  Vol.41,No.4(2011年10月発行): 『品質管理 事始め(ルーツを探る)第2報』
  Vol.42,No.1(2012年1月発行): 『デミング賞受賞企業における方針管理の発展と課題』
  Vol.42,No.2(2012年4月発行): 『グローバル化した経営環境における人材と技術』
  Vol.42,No.3(2012年7月発行): 『安全安心社会の実現−現在の取り組みと将来への道標−』
 また、Vol42,No3から以下のテーマについて連載を開始しました。
連載:ISO26262−自動車業界における機能安全に対する取り組み−
連載:医療・福祉機関における質・安全保証に関する取り組み
 以上のほか,執筆から発刊までの雑誌出版プロセスを見直し、各プロセスの作業効率を高め、出版コストを抑えられるように努めました。

8.広報委員会(委員長:西 康晴)

(1) Webサイトのアクセス数の増大をはかるために、現行のWebサイトの問題を列挙・整理し、改定案の全体デザインやページ構造、運用マネジメントについて検討いたしました。また、改定案のプロトタイピングに着手いたしました。
(2) 講演会やシンポジウムの様子、研究会活動、部会、委員会活動などの議論や成果を積極的に掲載していくべく、新たなスキームの検討を行いました。資料の掲載や画像・映像配信を将来的に行っていくために、電子媒体への掲載許諾・配信許諾の枠組みを定め、予想される問題点などについて検討いたしました。
(3) 外部Webサイトや雑誌などへの寄稿や連載を通じた学会活動の広報について検討いたしました。

9.会員サービス委員会(委員長:渡辺 喜道)

会員数について(かっこ内は昨年度末比)
 現在、名誉会員30名(同数)、正会員2382名(71名減)、準会員99名(6名増)、賛助会員157社212口(4社28口増)、公共会員22口(1口減)となっています。
長引く経済不況などによる経費削減の波を受け、今年度も正会員の退会の残念な動きが続いていますが、坂根会長の働きかけなどにより、賛助会員数が増えました。特に、口数が大きく増加しました。
当委員会では、今後を見据えて、以下の施策を鋭意検討して参りました。そのうち、一部は達成できました。
(1) 職域会員の新設
 主に企業に所属する方に適用する会員資格で、職場の職域に対して会員の資格を提供する制度です。例えば、企業の品質保証部長になった方が、少しの変更手続きで、会員資格を取得できる制度です。この制度により、特に企業に所属している会員の方へのサービスが向上する可能性があります。
(2) QC検定と連動した資格制度の導入
 QC検定合格者が社会的地位を誇れる「JSQC認定 上級品質技術者」及び「JSQC認定 品質技術者」の資格制度の導入について検討し、制度を確立しました。これは、産業界に品質面で貢献できる能力を持っていることを証明する資格です。
(3) フェロー会員(仮称)制度
 永年正会員として活躍して来られ、高い実績を持つ方々を「フェロー会員(仮称)」として優遇する制度について、検討中です。
(4) 賛助会員にとってのメリットを増強
 賛助会員の特典を増やし、入会のメリットをわかりやすくすべく検討中です。例えば、正会員と同様に研究発表や品質誌への投稿、研究会への参加が可能となる、などです。

10.規定委員会(委員長:平岡 靖敏)

 一般社団法人移行に関連して、「選挙管理規程改訂案」、「選挙管理事務内規改定案」、「役員・代議員選挙にかかる理事会運営内規案」の作成を公益法人法対応特別委員会に協力して行いました。また、JSQC活動の拡大に合わせて、関係する委員会と協力して、「定款改定案」、新規規程案(1件)及び既存規程改定案(2件)、新規内規案(1件)、既存内規改定案(2件)の作成を行いました。
(1) 定款(改定案)
 新たな会員区分として「職域会員」を設けるため、定款の改定案についての検討を行いました。
(2) 学会規則第101選挙管理規程(改定案)
 当学会の一般社団法人への(2012年10月1日の)移行に合わせ、代議員及び役員の選出方法を変更するため、及び職域会員区分の新設に伴う選挙権・被選挙権の明確化を目的に改定案の検討・作成を行いました。
(3) 学会規則第104 会員規程(改定案)
 新たな会員区分として、企業の“役職”に固定した「職域会員」を設け、改定に向けた案の検討・作成を行いました。
(4) 学会規則第110 資格認定規程(制定案)
 新たに「品質技術者」資格を認定することに伴う新たな規程案の検討を行いました。
(5) 学会規則第201 資格審査内規(改定案)
 会員資格の審査方法について、実態に合わせた改定案の検討を行いました。
(6) 学会規則第203 選挙管理事務内規(改定案)
 新法人への移行に伴い、代議員・役員の選出について、理事会から独立して実施するため、選挙管理規定と合わせて改定案の検討を行いました。(様式を含む)
(7) 学会規則第208 代議員・役員選挙にかかる理事会運営内規(制定案)
 新法人への移行に伴い、代議員の選出を役員会から独立した実施方法とするため、選出に関連して理事会として行う活動を明確にするための新規内規案の検討を行いました。

11.研究開発委員会(委員長:永田 靖)

 今年度は、「テクノメトリックス研究会」、「信頼性・安全性計画研究会」、「医療経営の総合的「質」研究会」、「サービス産業における顧客価値創造研究会」、「統計・データの質マネジメント研究会」、「先進的生産方式に対する工程管理研究会」の6計画研究会を毎月ないしは4半期に1回程度の割合で開催し、活発な活動を展開しました。

(1) テクノメトリックス研究会(主査:山田 秀 20名)
   テクノメトリックス研究会では、「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」のために、手法、考え方、事例などについて幅広い視点から研究しています。研究会では、今までにおおむね3ヶ月に1度の開催で、メンバーが上記の手法、考え方、事例などについて紹介し、メンバー間での議論により研究成果を練り上げていて、今年度も同様に開催しました。議論したテーマの例として、次があります。これらの成果は、研究発表会などで報告されています。
  1) 実験計画法の検討
・調合誤差因子実験と通常の直積実験の推定精度比
・枝分かれ実験型のデータで応答変数が二項分布する場合
・中心対象配置に関連する統計モデルとMCMC
・コンピュータシミュレーションにおける実行可能領域探索のための実験計画
・実験計画法のルーツ
  2) 因果分析の検討
・品質管理における媒介分析
・Sharp bounds on causal effects using a surrogate endpoint
・変数群の因果分析
・観測数が一様分布に従うベルヌーイ試行における多数回停止オッズ問題について
・The effect restoration method in linear causal models
  3) 統計的手法の理論的側面
・工程能力指数−実践方法とその理論−
・ロジスティック回帰における不均衡データへの対処法
・数量化V類について−逆・裏・待遇・その他−
・条件付き独立性における関係式の導出
  4) 解析事例の検討
・国会事故調査委員会への自由記入欄に書かれた意見からわかること
・統計科学の実践研究−エクセレント事例の物語−
・顧客生涯価値の短期データからの推定顧客生涯価値の短期データからの推定
・遺伝学と統計学との関係
  5) 解析手順の検討
・量産前試験検査の方法
・顧客生涯価値の短期データからの推定
・Evaluation of Micro EV’s spreading to Local Community by multinomial logit model
・距離に関するまとめ
   
(2) 医療経営の総合的「質」研究会(主査:永井 庸次 18名)
 従来までの研究活動を継続しました。
  1) 月1回の研究会を実施し、常時10〜15名の委員等の出席がありました。
  2) 「医療のTQM七つ道具」が2011年12月に日本規格協会から出版されました。
    各委員が分担執筆しました。
    発刊記念講演会を品質管理学会主催で2012年4月20日に開催しました。
    各種学会等で広報活動を実施しました。
 医療マネジメント学会
 全日本病院学会
 日本病院会学会等
  3) IOM発行「医療ITと安全」を参考にして、毎回我が国の電子カルテの安全性に関して検討しました。
    各委員が分担を決めて外部専門家と一緒に討論しました。
    この討議内容を種々の講演会等で医療界・産業界に拡大していく予定です。
    医療デバイス等の副作用報告等の問題点・課題を討議しました。
    メディカルアラームの問題点等医療事故を生じやすい状況認識に関する課題を討議しました。
  4) 医療機関におけるTQM普及を促進する医療制度・政策のあり方の提案
    TQMに関する基本的な考え方を含めて、品質管理学会、医療マネジメント学会を含めて、各種学会で発表しました。
    飯田、永井、中條各委員が全日本病院協会主催の医療安全管理研修会に講師として参加しました。
   
(3) 信頼性・安全性計画研究会(主査:伊藤 誠 18名)
 第一期(36-38年度)と39、40年度の成果に基づいて、下記の項目に関し、分野ごとのベストプラクティスの収集と解析、ケーススタディ、委員の研究成果の報告、委員間の情報共有と討議を行い、災害リスクへの備えという視点を重視してQRISフレームワークの具体化・深化に取り組み,活動状況は[1]によって報告を行いました。横幹連合の震災対応の取り組みにも,学会を代表して参加しました。41年度を持って第二期3ヵ年が終了するので、活動の成果の取りまとめを行い、42年度にシンポジウムを開催すべく、準備を行いました。
  1. 信頼性・安全性作りこみ技術
    1) 新規トラブル未然防止法の高度化
    2) 次世代品質・信頼性情報システムの具体化と深化
    3) ハザードに着目した根本原因分析(RCA)の高度化
  2. 安全・安心を達成するための社会インフラ構築
    1) 品質と安全を重視する組織文化の確立
    2) ユーザ・メーカ・社会行政の三者の協業による信頼性・安全性確保のための方法論
    3) 信頼性・安全性作りこみの視点からの管理職教育と品質管理教育の高度化
  3. 研究成果のとりまとめと情報発信
    1) 研究会での成果のまとめ
    2) 学術講演会、シンポジウム等での積極的な情報発信
      [1] 伊藤誠他(2012):「第2期信頼性・安全性計画研究会報告 第4報-成功事例から学ぶ-」、JSQC第98回研究発表会
       
(4) サービス産業における顧客価値創造研究会(主査:石川 朋雄 15名)
 当研究会は学会中期計画における「Qの創造」をサービス産業において展開すべく設置された計画研究会で、2007年1月から活動を開始しました。サービス産業における実践的な顧客価値創造のシステムを提案し、製造業を含めた全産業でのQの創造を可能ならしめるのが目標です。
 第41年度の主な成果は以下の通りです。
  1) 実践研究の推進
(自動車販売業)A社との共同研究・・・2010年秋から実践的研究を推進するため、「自動車販売業における新規感動サービスの開発」として、P7を活用したグループインタビュー、アイデア発想から仮説案の抽出、ユーザー実態把握と仮説案検証アンケート、アンケート調査データの解析、具体的な施策案提案の流れで価値ある新サービスを創造しました。
(保守サービス)B社との共同研究・・・2012年夏からさらなる実践研究を推進するため、B社と当研究会の間で研究開始について基本合意しました。9月は同社の問題点と課題の抽出、今度の進め方について討議しました。トータルサービスの仮説案を出すべく、調査設計をするとともに新サービスの創造をいたします。
       
(5) 統計・データの質マネジメント研究会(主査:椿 広計 20名)
 概ね隔月の研究会を行うと共に、研究会の間に、1省、1自治体への2回のヒアリングを追加し、ISO20252の公的統計への利用可能性について前年度に得られた仮説を検証しました。長周期の調査については人材育成面で若干問題があることも指摘されたところです。本研究会に研究委託を行った内閣府統計委員会は9月に本研究委員会の研究成果の利用可能性について、検討の必要性を認めたところです。現在、ISO20252を公的統計の現場で理解できる読み替え版チェックリストの公表を何らかの形、可能ならばJSQC規格 の形で行うことを検討中です。
 41年度は、これらの成果を5月にギリシャで行われた公的統計の質保証に関する国際学会のポスターセッションで発表し、多くの反響をえました。
 また、この学会では英国政府の物価指数作成プロセスがISO 9001の認証を受けているなど興味深い国際動向を認識することができました。これら統計データの質保証に関わる国際動向は研究会メンバーに共有されると共に、日本マーケティングリサーチ協会においても紹介されました。
 この他にも、
  1) 医薬品開発におけるデータやドキュメントの質保証について平成23年11月に京都国際会議場で行われた国際質保証学会の報告
  2) 加工統計に対する質マネジメントに関連して、日銀の物価指数作成プロセスについての勉強会と、物価指数をGUM(計測の不確かさ)の立場で解釈
  3) 国連統計委員会が発表した公的統計データの品質マネジメントに関する指針などの内容も検討したところです。
(6) 先進的生産方式に対する工程管理研究会(主査:安井 清一 9名)
 本研究会は2012年6月から活動を開始し、ほぼ月1回のペースで会合を開催し、第41年度は4回の会合を開催しました。高度化生産ラインにおいて、よく知られている工程管理の方法では管理が難しい問題について、統計的工程管理の方法を中心に、それに付随する事柄まで視野に含めて、品質管理における工程管理の体系を研究するのが目的です。第41年度はメンバーが事例を持ち寄り、解析、議論などの活動を行いました。その結果として、統計的工程管理においては多変量分析と管理図との融合、特に、回帰分析との融合は統計的な意味においてだけではなく、管理論上および実務上において重要な意味を持つことが示唆され、普及まで含めた研究活動の重要性を確認しました。
 また、固有技術と融合した回帰式のモデリングにおいて、他分野におけるアプローチとして薬物動態学について議論し、工程管理への応用の可能性を検討しました。

12.国際委員会(委員長:鈴木 知道)

(1) 第10回ANQ (Asian Network for Quality)大会への協力、参加
 2012年7月31日〜8月3日に、中国のCAQと香港のHKSQの共催で第10回ANQ大会の開催が予定されました。JSQCからは48件の発表を行いました。若手研究者の育成を目指した、若手研究者への旅費支援援助については、報告書の提出により参加者の意識が高まっていることが確認できました。
(2) ANQ活動への積極的な支援・参加、ANQの基盤確立へ
 ANQの活動に積極的に参画しました。2012年3月には、ロシアのモスクワでのANQ理事会に出席しました。ANQ理事会に先立って行われたANQ-CEC(ANQ品質管理検定委員会)にも委員を派遣しました。7月30日、31日に行われた香港での理事会にも参加し、積極的に議論をリードしました。
 また、アジア品質管理賞や品質管理検定についても健全な発展を期すよう検討を深めました。そしてANQそのものの基盤の充実にむけて積極的に取り組みました。

13.標準委員会(委員長:中條 武志)

 2011年10月にJSQC規格「品質管理用語」(JSQC-Std 00-001)を発行しました。また、2012年6月に事業委員会と連携し、「JSQC規格講習会−用語の定義を通して品質管理の本質を学ぶ−」を開催しました。経済産業省および日本規格協会のご協力をいただきJIS化の検討を行いましたが、JIS Q 9000との関係に配慮し、一旦見送ることになりました。
 品質管理の普及・発展のために標準化が必要な領域を明確にしました。また、その中のから「日常管理」を取り上げ、原案作成ワーキンググループを立ち上げ、規格原案の作成に着手しました。
 JSQC規格の他、研究会・部会・委員会が発行した報告書・書籍を広く学会員に知ってもらい、活用してもらうため、一覧にまとめ、シンポジウムや研究会での配付、学会ホームページや品質誌への掲載を行いました。

14.FMES関連、横幹連合関連(棟近 雅彦)

 41年度も引き続き、FMES代表者会議、FMES/JABEE委員会、FMESシンポジウムに参画し、経営工学関連学会との交流、JABEEの審査活動、FMESシンポジウム等の活動に、中核団体として協力してまいりました。FMES代表者会議は、2011年10月に開催され、新たな試みとして「経営工学のこれからを語ろう」と題して連携討論会を行い、各学会の将来的な課題を紹介し、議論しました。
 また、2012年4月に代表者会議が開催され、FMES事務局をOR学会から経営工学会に引き継ぐことが確認されました。FMESシンポジウムは、2011年10月に設備管理学会担当で「危機に強い製造業のマネジメントと設備管理」というテーマで、また2012年6月にプロジェクトマネジメント学会担当で「新たな社会システムの創出に向けて」というテーマで開催されました。
 横幹連合に関しては、これまでの活動を継続し、特に積極的な参画には至りませんでした。

15.研究助成特別委員会(委員長:仁科 健)

 本事業は学会創立30周年記念事業として第31年度より開始されたものです。助成金額は1件5万円で4件以内。対象者は、日本品質管理学会の正会員もしくは準会員、申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者、留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者です。今年度の応募者は14名でした。応募者から提出された申請書(研究課題、研究目的、研究実施内容など)を委員6名により審査し、4名を選考しました。

16.QC相談室特別委員会(委員長:橋本 紀子)

 第41年度も、学会ホームページ上で、相談室の運営を行いました。
 今年度も、以前に生じた「あらし」の問題は生じませんでした。再開設以降6年間にわたり行っている、1)トップページから直接相談室をリンクせず、相談室に関する説明ページを経由、2)質問、回答の際は、相談室に掲載されているパスワードの入力が必要、という一手間の効果が続いていると思われます。
 今年度も例年と同じく、レベルの高い質問が寄せられ、ボランティアの活発で的確な回答がなされ、一定数の閲覧者を獲得しました。質問数は、上半期の動きが鈍かったため一桁台にとどまったものの昨年度を上回り、38年度をピークに落ち込み続けた流れを反転させることができました。38年度以降本年度までの質問件数、回答数、閲覧数をあげます。

  質問件数 回答数
(延べ数)
閲覧数
(延べ数)
41年度 4 11 1,847
40年度 1 1 778
39年度 7 7 18,110
38年度 10 10 55,827

今後もまずは広報に努め、より開かれた、活発な質疑応答の場をめざします。

17.原子力安全特別委員会(委員長:中條 武志)

 原子力安全・保安院の後援を受け、日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム部会/社会・環境部会)等と共催で「原子力の安全管理と社会環境に関するワークショップ」を2012年3月と10月の2回開催しました(テーマは「安全の確保と信頼・理解の醸成」と「エネルギー問題に関する国民的議論」)。これらの詳細は、講演・討論記録として公開されています。
 また、原子力安全基盤機構や社会安全研究所が中心となって進めている「ヒューマンファクターを主体とした安全管理技術に関する課題の整理と戦略マップの作成」、日本原子力学会規格「返還廃棄物の確認に関する基本的考え方」改正などへの参加・協力を行いました。これらの詳細は、報告書・規格として公表されています。

18.運輸安全特別委員会(委員長:中條 武志)

 ISO 39001「道路交通安全マネジメントシステム−要求事項と使用のための指針−」の国内審議委員会(自動車事故対策機構)、国土交通省の「運輸審議会運輸安全確保部会」などへの参画・協力を行いました。ISO 39001については、2012年10月に発行されました。
 運輸安全マネジメントの実践において品質管理分野から研究すべき課題を明らかにするために、運輸安全の専門家と特別委員会の委員による検討会(2回)を開催しました。

19.JSQC選書特別委員会(委員長:飯塚 悦功)

 品質に関わる概念・方法論・手法を社会が理解し適切に適用できるように支援するための一方法として、品質マネジメントに関わる、基本的考え方、マネジメントシステム、手法・技法、推進・運用、さらには品質に関わる時事の背景・意味の解説をする一連の書籍の出版化検討(企画・編集)をJSQC選書刊行特別委員会で進めました。
 同委員会を2回開催し、発行書籍候補の列挙、短期(1年程度)的な発行計画(主題、著者、発行時期など)を審議し決定しました。決定された主題にかかる構想の審議や原稿案の査読を行い、結果的には、2011年11月下旬に第6弾として、(第17巻)『 問題解決法−問題の発見と解決を通じた組織能力構築−』及び(第18巻)『工程能力指数−実践方法とその理論−』 を同時に発行しました(出版社:日本規格協会)。

20.公益法人法対応特別委員会(委員長:鈴木 秀男)

 2011年7月において内閣府に一般社団法人移行認可申請を行いましたが、内閣府からの指摘に伴い、2011年10月に開催された40年度通常総会にて、定款変更案の変更、役員等選挙規程の変更の承認をもらい、2012年1月に移行認可の再申請を行いました。2月に内閣府から認可の基準に適合するとの回答をもらい、9月下旬に正式な移行認可を受け、10月1日に登記を行いました。さらに、本特別委員会の活動としては、計8回の会合を通して、新法人下での代議員・役員候補者選挙規程、関連内規の作成を行いました。

21.TQE(問題解決力向上のための初等中等統計教育)特別委員会(委員長:鈴木 和幸)

 初等中等統計教育が“生きる力”をはぐくむ教育となるべく、40年度の活動を継承し、以下の取組みを行いました。
(1) 産官学協力の下に JSQC主催第2回科学技術教育フォーラム「科学技術立国を支える問題解決教育−日本再生への産官学共創の人材育成−」を2011年12月27日(火)に成城大学にて開催しました。本学会会長/コマツ会長 坂根 正弘氏、日本アイ・ビー・エム(株) 最高顧問/元経済同友会 代表幹事 北城恪太郎氏、文部科学省 高等教育局 審議官 常盤 豊氏をはじめとする教科調査官・総括研究官・指導主事ならびに総務省、NHKなどより約230名が参加し初等中等統計教育が“生きる力”をはぐくむ教育となるべく、情報共有と討議を行いました。
(2) 初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として、統計グラフ全国コンクールにおける問題解決力向上に寄与する作品に対し、40年度に新たに設けた日本品質管理学会賞の第1回目授賞作品として学芸大学附属国際中等教育学校2年 奥井祐貴さんを選出し、2011年11月16日に表彰を行いました。また、この作品を通して問題解決教育に関する普及啓蒙活動を展開しました。
(3) 40年度に提唱した 初等中等教育における問題解決の基本3ステップ、
1) データにより現象を正しくとらえる
2) 現象の因果・メカニズムを究める
3) 対策を実施する
を普及すべく、JSQC HPへのWEB公開を行い、また、このWEBを通して統計グラフ全国コンクールへの問題解決への取り組み増加をはかりました。
(4) 文部科学省初等中等教育局よりの「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」に関するパブリックコメントとして、以下の提言を行いました:
提言1: “新たな学びを展開できる実践的指導力”育成への教科横断的教員養成コア・カリキュラムの必要性とその設置
提言2: 教科横断的教員養成課程への産業界の専門家人材活用と支援体制の構築
(5) 第3回科学技術教育フォーラムをJSQC第42年度に開催すべく議論と企画検討を行いました。
(6) TQEの3年以上にわたる全活動を示すTQEニュースを本学会HPに掲載し、初等中等における問題解決力向上への啓蒙・普及を図っています。

22.部会

(1) ソフトウェア部会(部会長:渡辺 喜道 81名)
 ここ数年継続して議論している、ソフトウェア開発のノウハウ集を作成する会合を定期的に開催しました。過去のソフトウェア開発の経験から有用であった知識の収集、分類を行いました。今年度は、25個の新たな知識を収集し、整理しました。
 また、次号の品質誌で昨年までに収集し、整理した知識のその一部を公開する予定です。さらに、この活動の集大成として、部会で得られた成果を基に、シンポジウムを開催する予定です。
 さらに、他団体との連携も、昨年度と同様に行い、各種行事の後援などを行いました。
   
(2) QMS有効活用及び審査研究部会(部会長:福丸 典芳 145名)
 40年度から引き続き次の7つの研究テーマに関して1回/月の頻度で第4期研究活動を行いました。
    WG1「適合性を証明する審査の研究2」
WG2「WG1の研究内容の検証」
WG3「ビジネスプロセスにおけるQMSの位置付け」
WG4「経営に役立つ『自己適合宣言』の研究」
WG5「次世代対応の第二者監査技法の研究」
WG6「経営に貢献するISO9001 推進の研究2」
WG7「有効性を高める審査活動のための審査ツールの標準化」
 研究成果の途中経過報告として、次に示す機会で発表を行い、参加者から多くのご意見をいただきました。
・第143回シンポジウムの開催(2012.7)
 
(3) 医療の質・安全部会(部会長:棟近 雅彦 177名)
 今年度の研究活動としては、従来から引き続き、厚生労働科学研究費、文部科学研究費の研究グループ、およびQMS-H研究会と共同しながら、患者状態適応型パス(PCAPS)、医療の質マネジメントシステム等について研究してまいりました。
 これらの研究成果の公開の一環として、2012年3月に,患者状態適応型パスの研究班、QMS-H研究会との共催で、「医療社会システムの確立に向けて」と題するシンポジウムを開催しました。大変多くの方が参加し、活発な議論が行われました。さらに、2012年9月には、科研費研究グループとの共催で、PCAPS中間成果報告シンポジウムを開催いたしました。研究発表も、JSQCはもちろん、医療の質・安全学会、日本医療・病院管理学会、ANQ、QMOD等で、部会員の研究発表を行っています。
 教育・啓蒙活動については、従来から開催してきた「医療の質マネジメント基礎講座」の事務局を(株)テクノファに移管し、JSQC主催のセミナーとして引き続き開講しました。今年度からは、厚生労働省より示された「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」に準拠した内容の、医療安全管理者養成研修として厚生労働省に確認され、全日程を修了した方は、医療安全管理者としての要件を満たすことになりました。全14回の講座を通じて、延べ700名以上の方が受講しました。このセミナーを受講するために部会員に申請する方もいらっしゃいますが、部会員数としては横ばいであり、引き続き部会員増加に向けて努力してまいります。