社団法人日本品質管理学会
第39年度 自 2009年(平成21年)10月 1日
至 2010年(平成22年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:鈴木 和幸)

 金融危機・新興国の急成長・急激な円高をはじめとする厳しい経済環境の中、本学会は変革する社会に貢献する品質管理を目指して、中期計画を着実に実施して行くことが、「品質立国−日本の再生」の実現に貢献するものであり、また本学会が社会に大きく認知され、そのポジションの向上に繋がる、との方針で活動を推進してきました。39年度は、中期計画の「Qの確保」、「Qの展開」、「Qの創造」と「共通領域の推進」の4本柱を継承し、更に充実発展を図るべく運営しました。これらの4本柱の主な活動は次の通りです。
(1) 「Qの確保」では、産学連携の強化を図るため、形態別産学連携の取り組みと会員情報データベースの活用を検討し、これらの40年度よりの実現を図りました。新たに「統計・データの質マネジメント計画研究会」を発足させ、新医薬品開発・公的統計におけるデータマネジメントの現状と問題について議論を開始しました。また、信頼性・安全性計画研究会は第2期として“IC 技術活用による信頼性・安全性情報システムの構築への理論と体系”、“安全・安心を達成するための社会インフラ構築”に関し討議を重ね、研究発表会を通して発信を行いました。
(2) 「Qの展開」では、医療の質・安全部会の活動成果として質マネジメントに関する成果発表や基礎講座を継続しました。また、原子力特別委員会では関連学会と原子力発電の安全管理と社会環境に関するワークショップを開催し、安全・安心への発信を行いました。新たに、初等中等教育における「生きる力」育成への活動支援として、TQE(問題解決力向上の為の初等中等統計教育)特別委員会を設け、教科書・指導書への問題解決法の導入、表彰制度の設立、中高教員への情報提供を目指すべく活動を行いました。また、運輸安全特別委員会を設け、運輸安全向上の為の管理技術に協力を開始しました。
(3) 「Qの創造」では、サービス産業における顧客価値創造研究会を中心に活動を継続し、顧客価値創造の方法論の定式化と確立に向けて、サービス企業実態調査とその分析を行い、研究発表会にて発信しました。
(4) 「共通領域」では、会員満足度調査を実施し、学会活動への評価、会員からの要望をまとめ、活動計画に反映し、特に、賛助会員へのサービス向上策の検討、会員情報データベースの構築を図りました。また、2009年12月に「新版品質保証ガイドブック」を刊行し、JSQC選書は本年9月で累計13冊を発刊し、次年度にさらに4冊を刊行すべく活動を推進しました。

 本年度の上記の主な活動の内、特に重点を置いたものが次の活動です。
 2008年から2010年にかけて改訂された新学習指導要領では、“いかに社会が変化しようと、自ら課題を見つけ、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力をはぐくむ「生きる力」”が理念としてうたわれています。受験目的ではなく、実社会における問題の解決に資する初等中等統計教育となるように、本学会では、TQE特別委員会を設け、小1から高1までの一貫した問題解決型の統計教育体系の構築、表彰制度の制定、問題解決の副教材の作成等に努めて参りました。また、公益法人法改正に向けての一般社団法人への移行申請の準備と移行宣言を検討しました。次期はJSQC40周年を迎え、記念シンポジウムの企画・開催(2011年5月27日)と、記念誌「あゆみ」の発刊準備を進めて参りました。

2.総合企画委員会(委員長:鈴木 和幸)

 39年度は第2期中期計画の第2年目にあたり、中期計画で設定した目標達成のための取組みが計画通りに進展するように関連委員会と連携しながら推進しました。さらに前年度と同様に中間での計画の進捗状況のフォローを行い、必要により各委員会や支部の目標の見直しなどを行いました。また、主な活動事項は下記の通りです。
(1) 中期計画をローリングし、大筋で計画通りの進捗を図ることが出来ました。
(2) 将来の人材育成として「TQE特別委員会」を設け、初等中等統計教育が自らデータを収集し、課題を見つけ、その課題を解決しうる「生きる力」の育成へ結び付くための種々の支援活動を企画し、実行しました。
(3) JSQC40周年記念事業について、記念シンポジウムの開催 (2011年5月27日)を決定しシンポジウム内容と記念誌「あゆみ」の企画を行いました。
(4) 会員満足度調査アンケートをメールアドレス登録会員2,410名に対して実施し、学会活動への評価、会員からの要望などをまとめました。
(5) 産学連携の強化・拡大について、会員情報データベースの構築、研究のキーワード、研究のテーマの登録など、賛助会員と学の研究者との交流の場の設置準備を進め、産学連携の研究のさらなる推進を検討いたしました。
(6) 人材育成について、若手への研究支援の継続決定とJSQC Activity Acknowledgementの新規創設の準備を進めました。
(7) ANQを中心とする国際活動への積極的推進について、理事会への派遣費用援助、若手へのANQ旅費支援の継続を企画しました。
(8) 賛助会員へのサービス向上について検討致しました。
(9) QC検定合格者へのサービス提供について検討いたしました。
(10) 公益法人法改正への対応にむけて、定款の変更案を作成すると共に、経理処理を最新の書式に移行すべく準備を進めました。
(11) 内閣府の要請に基づき、「統計」に関する情報の質管理研究会を発足いたしました。

3.事業委員会(委員長:大藤 正)

 第39年度事業は本部(年次大会、研究発表会、ヤングサマーセミナー各1回、シンポジウム3回、事業所見学会3回、クオリティパブ5回)、中部支部(研究発表会、シンポジウム各1回、講演会1回、事業所見学会2回)、関西支部(研究発表会1回、シンポジウム2回、講演会1回、事業所見学会4回)と順調に開催され、実績を上げております。支部行事は基本的に各支部の主体性にお任せしており、地域の会員のニーズを反映した行事を企画していただき、各々好評をいただいております。
 本部事業も幅広いニーズに対応したタイムリーな企画を目標に実施して参りました。昨年10月30日の第39回年次大会から本年9月22日の第71回クオリティパブまで全14回にわたり多数の会員に参加いただき、心より御礼申し上げます。特に学会行事の真骨頂である研究発表会、年次大会は会員諸氏の熱意により大変な活況を呈しました。以下簡単に主な行事の状況を説明いたします。
(1) 年次大会、研究発表会
 第39回年次大会は昨年10月30日、31日、大阪府の大阪大学にて開催し、研究発表55件、のべ195名の参加者があり、昨年より発表件数は7件増でありました。同時開催した事業所見学会にも多くの参加を頂きました。第92回研究発表会は本年5月29日〜30日に日本科学技術連盟東高円寺ビルにおいて昨年同様2日間で開催、一般発表で54件(昨年61件)もの熱気溢れる発表があり、またチュートリアルも2件講演があり、参加者も196名と盛況でした。今後運営方法について更に改善を進めますが、概ね満足の評価をいただきました。
(2) シンポジウム
 以下の3回を開催、いずれも日本を代表する各界の識者の講演・発表と討論があり、好評をいただきました。参加人数は3回合計で317名と、昨年度の水準を維持しました。
2009年12月11日 第130回「サービス産業の価値創造革新はこうする!」(日本科学技術連盟東高円寺ビル)
2010年1月30日 第131回「品質保証の方法論とその実践」(日本科学技術連盟東高円寺ビル)
2010年4月24日 第134回「第三者審査の質と品質マネジメントシステムの向上」(日本科学技術連盟本部)
(3) 講演会
 時宜を得た企画での実施を調整し、今年は開催を見送りましたが,来年度早々の事業として企画しました。
(4) 事業所見学会
 第39回年次大会に合わせて2事業所見学会を実施し,その他3回の事業所見学会を開催し、いずれも個性的で優れたTQM活動を展開する事業所を見せていただき、参加者から高い評価をいただきました。
2010年5月18日 第346回 全日本空輸梶@ANA機体メンテナンスセンター
 「航空機整備の現実とヒューマンエラー防止への取り組み」
2010年6月29日 第349回 日野自動車
 「トラックの新たな生産方式のご紹介」
2010年7月14日 第351回 サントリー 武蔵野ビール工場
 「ザ・プレミアムモルツのふるさとへ」
(5) クオリティパブ
 ほぼ隔月に開催し、20〜30人の少人数の参加者がくつろいだサロン的雰囲気で一流講師の講演を聞き、活発なディスカッションの場を提供する本部独自のユニークで贅沢な行事です。39年度も各界から以下の多彩なゲストとテーマで5回開催し、好評をいただきました。今後、クオリティパブでは、JSQC選書の著者にお願いする予定です。
2010年1月25日 第67回 矢野友三郎氏(製品評価技術基盤機構)
 「社会が変わる、標準が変わる」
2010年3月26日 第68回 野口和彦氏(三菱総研 研究理事)
 「組織の目標達成とマネジメント合理化を支援するリスクマネジメント」
2010年5月14日 第69回 岩崎日出男氏(近畿大学教授)
 「品質技術者を育てることは社会に対する企業責任−品質を第一と考える人材育成−」
2010年7月26日 第70回 皆川昭一氏(日本品質管理学会副会長)
 「車載情報機器をとりまく状況と,品質確保への対応」
2010年9月22日 第71回 田村泰彦氏(轄\造化知識研究所 代表取締役)
 「トラブル未然防止のための知識の構造化」
(6) ヤングサマーセミナー
  2010年9月4、5日、サンデンコミュニケーションプラザさんのお世話で、「QFD」をテーマに実施し、大学院生、大学生を含め、27名の参加がありました。

4.中部支部(支部長:木下 潔)

<事業内容>
1. シンポジウム
第132回 7月2日(金) 会場:60周年記念会館シャインズ(刈谷市) [参加者140名]
テーマ:「『実践的Qの確保』の構築に向けたTQM活動の進化と拡大−品質の確保に向けて我々は何をなすべきか−」
  基調講演 Qの確保 −信頼性・安全性の確保と未然防止−
        ;JSQC会長(電気通信大学)鈴木 和幸 氏
  事例講演 (1)「品質問題」をなくす設計と設計審査
        ; 潟fンソー 本田 陽広 氏
      (2)設計のヒューマンエラーとその防止策
        ; アイシン精機梶@麻田 祐一 氏
      (3)製品安全とトレーサビリティ
        ; セイコーエプソン梶@澤野 謙二 氏
      (4)CS向上につなげるサービス・マネジメント革新
        ;NECパーソナルプロダクツ梶@安達 俊行 氏
  パネル討論会  リーダー:鈴木会長
       パネラー:事例講演者全員
    「ものづくり」の原点を忘れず、開発〜生産〜サービスのプロセススルーで「品質」を確保する愚直な活動が大切であることを再認識できたとして、参加者から好評を得ました。
2. 講演会
  第108回 5月21日(金) 会場:60周年記念会館シャインズ(刈谷市) [参加者130名]
テーマ:「『実践的Qの確保』の構築を通してものづくりの原点回帰へ、そして飛躍へ」
  講演 「日本のグローバル展開における『ものづくり』NIPPON BRANDの確立にむけて」
        ;日野自動車梶@相談役 蛇川 忠暉 氏
        「トラブル未然防止のための知識の構造化」
        ;轄\造化知識研究所 代表 田村 泰彦 氏
  具体的な未然防止のプロセス実践事例、問題解決の事例に触れることで、これからの品質経営やものづくりのあり方再構築及び技術伝承を考える機会を得ることができた、とのご意見もいただき有意義な講演会となりました。
3. 研究発表会
  第93回 8月25日(水) 会場:名古屋工業大学2号館(名古屋市) [参加者126名]
テーマ:「『実践的Qの確保』実現に効果的・効率的な取組み」
発表内容: 産業界―8件
  学界―2件(設計のための公差調和・複数の特性の結合設計)
  医療―1件(実験計画法によるプロメリアの開花不良低減に関する研究)
  産学連携―3件(コンピュータ実験における空間充填計画の性能比較など)
産学医の領域から最新の研究テーマの発表を得て活発な議論が行われました。
様々な分野におけるテーマが参加者の関心を集め、充実した発表会となりました。
4. 事業所見学会 (計画2回/実績2回)
  1) 第347回 3月24日(水) 鞄穴C理化 音羽工場(愛知県音羽町) [参加者52名]
テーマ:「東海理化における自工程完結のための未然防止」
生産現場における質疑も活発に行われ、未然防止の活動を現地現物で体感できる充実した見学会となりました。
  2) 第350回 6月16日(水) 中部電力梶@知多火力発電所(愛知県知多市) [参加者28名]
テーマ:「知多火力発電所における品質と環境への取組み」
設備保全管理の重要性や環境への取組みが実感でき、有益な見学会となりました。
5. 幹事研修会
  1)
第1回 5月14日(金) 会場:テルミナ貸し会議室(名古屋市)
  トヨタ品質問題を題材として真因について議論を行うと同時に、未然防止を図る方策に関する意見交換を行いました。
  2)
第2回 9月/10〜22日 (Eメールを利用し幹事間の意見交換会を実施)
  Qの確保についての方法論などに関する意見交換を行いました。
6. 研究会活動報告
  1)
東海地区若手研究会
  提供されたテーマを議論することによって自己研鑽,相互研鑽を図ることを目的とし、完成度の高いテーマは研究発表会などで発表しました。
  2)
北陸地区若手研究会
  地元製造業者、受講生及び指導講師による実践的研究会として工程管理技術の伝承と産学官連携による人材育成活動の発展を目指した活動を展開しました。
  3)
産学連携現地現物研究会
  研究テーマ(ロバスト最適化など)の推進を図ると同時に、活動成果について 「開発・設計における『Qの確保』」の書名で上梓(5月25日)しました。
  4)
中部医療の質管理研究会
  各部会(看護・薬剤・事務)を中心に、各分科会の改善テーマに基づいた活動を展開しました。
第4回 中部医療の質管理研究会シンポジウムを中部支部後援で開催しました。
2009年12月13日(日) 会場:長良川国際会議場(岐阜市)   [参加者約150名]
各現場の立場から医療の質改善の取組みについて活発な議論を展開しました。
7. その他
  中部支部協賛行事:第7回日本OR学会中部支部シンポジウム
    9月22日(水) 会場:名古屋大学ベンチャービジネスラボラトリー(名古屋市)
テーマ:「役に立つ最適化ツールとその応用」
今後も他学会との交流を深めるよう活動を進めます。

5.関西支部(支部長:白井 良平)

(1) 事業所見学会
第348回 4月16日(金) コマツ 大阪工場(大阪府枚方市) [参加者39名]
「コマツ大阪工場における品質管理の実践 〜建設機器メーカーの品質保証活動〜」
40名を超える申込があり、部門長出席の質疑応答など、充実した見学会となりました。
第351回 7月13日(火) 潟сNルト本社京都工場(京都府宇治市)[参加者36名]
「ヤクルトの品質保証から学ぶ〜新興国での消費も拡大する安心を安定的に提供するヤクルトの工夫〜」
50名を超える申込があり、「品質管理」「安全衛生管理」の2部門から特別講演を実施していただき、充実した見学会となりました。
(2) 講演会 
第109回 6月25日(金) (会場:大阪大学中之島センター) [参加者94名]
テーマ:「環境成長経済に立ち向かう企業戦略」
 講演(1) 「第5の競争軸 〜21世紀の新たな市場原理〜」
潟Cースクエア 代表取締役社長 ピーター D.ピーダーセン 氏
 講演(2) 「脚光を浴びる太陽光発電 〜その可能性と長寿命化への課題〜」
太陽光発電技術研究組合 理事長 桑野 幸徳 氏
→企業、大学から幅広く申込がありました。著名な講演者による講演でありアンケート結果も好評でした。
(3) シンポジウム
10月8日(金) に「〜(社)日本品質管理学会40周年記念〜 関西支部20周年記念シンポジウム」として実施することになりました。
(4)
研究発表会
94回9月10日(金) (会場:大阪大学中之島センター)[参加者 約65名]
 「研究セッション」と「事例セッション」の2つのセッションを設けて実施しました。発表件数は17件(研究9件、事例8件)で最優秀賞、優秀発表賞の表彰を行いました。
特別講演:荒井 栄司 氏(大阪大学大学院 教授)「グローバル化と次世代のCAD/CAMに求められるもの」
(5) 研究活動報告
1) 統計的品質情報技術開発研究会
「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」を通してSQC活動を活性化させます。
2) 科学的先手管理アプローチ研究部会
マネジメントの課題を階層別に取り上げ、日本品質管理学会が培ってきた数々のQC(信頼性、IE、OR等を含む)技術をベースにし、科学的な先手管理、源流管理へのアプローチを体系化します。
3) 品質管理教育教材開発研究会
学生が、モノづくりやそれを支える品質管理に対して興味が持てるように、学校・企業の教育分野で使える品質管理教育の教材を開発し、教育の仕方やマニュアルも併せて提案します。
(6) QCサロン
第75回 2月12日(金) 長田 敏 氏((独)製品評価技術基盤機構) [参加者35名]
  「製品事故例から見る昨今の製品安全・消安法の動向と課題」
第76回 4月15日(木) 吉川 浩一 氏(椛コ田製作所) [参加者28名]
  「ムラタセイコちゃん誕生秘話」
第77回 6月18日(金)加藤 裕幸 氏(潟Pイ・オプティコム) [参加者15名]
  「ケイ・オプティコムの光ブロードバンド普及への取り組み」
第78回 8月 6日(金)神山 増己 氏(パナソニック電工梶j [参加者13名]
  「パナソニック電工における品質マネジメントの考え方と取り組み」
第79回 10月 7日(木)北廣 和雄 氏(積水化学工業梶j
  「モノづくり教育の課題と取組み〜課題考察と積水化学における取組み事例(安全・品質・技能)」 [参加者25名]
(7) 合同役員会 2009年10月8日(木)、12月17日(木)、2010年2月12日(金)、4月15日(木)、6月18日(金)、8月6日(金)

6.論文誌編集委員会(委員長: 棟近 雅彦)

 論文誌編集委員会では以下の活動を行いました。
(1) 前年度方針を引き継ぎ、毎月1回の論文誌編集委員会を開催しました。論文誌編集委員会の責任に基づき、査読意見を参考にしながら、編集委員会が主体的に掲載の可否を判断してきました。また、「著者責任」を基本とし、新規性・価値のある主張を含む論文については原則として掲載の方向で進めました。
(2) 8thANQがインドで開催されるにあたり、国際委員会の委託を受けて、以下の活動を行いました。
1)8thANQへJSQCから提出された全てのアブストラクト(全35本)に対する審査
2)フルペーパーに対するBest Paper Awardの審査
(3) 投稿論文審査のスピード化も引き続きめざした結果、大幅に遅れるものはなくなりました。しかし、さらに迅速に審査が進むように、次年度以降に新たな対策を実施する必要があります。
(4) 委員会業務の効率化をめざして、投稿論文審査内規、運営マニュアル、投稿要項等の規程類の見直しを行いました。まだ、すべては完成していませんが、40年度からこれらの規程に従って業務を行えるように、進める予定です。また、これらの見直しにより、論文の投稿がより容易になると考えています。
(5) 表1に過去5年間(35年度〜39年度)の月別投稿論文数を、表2に過去5年(34年度〜38年度)の投稿区分別採択数を示します。39年度は審査中のものがありますので、採択数は34年度から38年度を示しました。一度却下されたものが再投稿される場合もありますので、単純に採択率を計算することはできませんが、おおむね4割程度が採択されています。
 
表1 過去5年間の月別論文投稿数

  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
35年度 3 1 3 3 2 1 3 1 6 2 1 1 27
36年度 4 1 1 1 4 3 4 4 8 1 4 2 37
37年度 1 1 3 1 2 0 6 5 3 - 2 3 27
38年度 1 3 2 0 4 3 1 2 2 0 4 - 22
39年度 4 5 2 1 0 2 1 4 1 2 3 - 25
 
表2 過去5年間の投稿区分別採択数

  34年度 35年度 36年度 37年度 38年度 5年間合計 採択率
  投稿数 採択 投稿数 採択 投稿数 採択 投稿数 採択 投稿数 採択 投稿数 採択  
  23 9 27 8 37 14 27 8 25 7 139 46 0.331
報文 6 1 11 3 17 4 6 3 8 4 48 15 0.313
技術ノート 4 1 3 2 5 2 6 3 5 3 23 11 0.478
調査研究論文 2 1 7 1 2 1 4 2 6 0 21 5 0.238
応用研究論文 4 1 3 0 4 3 3 0 3 0 17 4 0.235
投稿論説 2 0 2 1 6 2 7 0 2 0 19 3 0.158
クオリティレポート 5 5 1 1 3 2 0 0 1 0 10 8 0.800
QCサロン                     0 0  
レター             1 0 1 0 2 0 0

7.学会誌編集委員会(委員長:福丸 典芳)

 第39年度は第38年度の編集指針及び運営指針に基づいて、Vol.39-4、Vol.40-1及びVol.40-2までの特集を1回/2か月程度のペースで継続的に検討してきました。Vol.40-3からは委員長交代に伴い、次のような指針で検討を行っています。
 学会での研究活動や現在の企業などで課題となっているTQMに関わる内容を掲載し、学会員への情報提供のため、以下の方針に基づいた編集活動を行うこととしています。
  (1)学会での研究結果の情報発信
(2)企業等での特徴のある品質保証に関する活動の情報発信
(3)ISOマネジメントシステム規格の制定・改正動向の情報発信
(4)事業環境を考慮した組織の品質保証の課題についての取組みに関する情報発信
以上の方針に基づき、本年度品質誌掲載されたテーマは以下の通りです。
    Vol.39-4(2009年10月発行):『安全・安心を確保するための技術基盤の構築』
Vol.40-1(2010年 1月発行):『品質管理事始め(ルーツを探る)』
Vol.40-2(2010年 4月発行):『顧客視点に立った変化への対応』
Vol.40-3(2010年 7月発行):『ISO統合マネジメントシステムの運営管理』

8.広報委員会(委員長:兼子 毅)

(1) 会員サービス提供の電子化
 従来の印刷物や紙媒体による広報や会員への告知、会員からの情報収集などを、可能な限り電子化すべく準備を進めました。本年度発行予定であった会員名簿を電子的なデータベースとして保持し、会員だけが閲覧できるような仕組みを構築いたしました。
 また、会員サービス委員会が実施した会員満足度調査も電子メールとWebを利用して実施し、極めて低コストでかつ迅速にアンケート調査を実施いたしました。今後も会員サービス委員会などと連携し、タイムリーな広報活動を行う礎を構築していく予定です。
(2) 社会的認知度の向上
 学会では社会的な要請に応えるため、原子力安全やTQE(問題解決能力向上を目的とする初等中等統計教育)に関する特別委員会が設置され、積極的な活動を続けています。これらの学会活動を積極的に社会に広報していくための仕組みを構築しました。学会設立40周年に向け、よりいっそうの学会活動の広報が可能になりました。

9.会員サービス委員会(委員長:神田 範明)

・会員数について
 現在の正会員2551名(149名減)、準会員80名(2名減)、賛助会員159社185口(11社12口減)、公共会員24口(1口増)。
 経済不況による経費削減の波を受け、今年度も正会員や賛助会員退会の残念な動きが続いています。ただ、中期計画で掲げた40歳代以下の正会員比率目標40%に対しては、昨年度より約3%改善し、39.1%に達しました。
・QC検定合格者への勧誘
 こうした中で、本年度新たに入会された正会員の約30%をQC検定の合格者が占めるようになりました。これはかなり高い数値であり、(財)日本規格協会のご協力を得て実施した検定1〜2級合格者への入会勧誘が奏功を現したことを示しています。今後もこの活動を継続し、品質管理への高い知識と意欲を持った合格者を学会へとつなげる努力をしたいと存じます。
・会員満足度調査の実施
 40年度を迎えるに当たり、会員の満足度とその構造を知ることは学会運営にとって非常に重要です。本年4月会員2395名に配信し回収607名、回収率は25.3%と高率でした。
 この調査から多くの知見を得ました。例えば当学会の満足度は、研究者にとっては高いが、企業人にはやや低いです。満足度は有益度と質の高さが重要です。産学交流・会員間交流の場が多く、専門家に相談ができ、会費の割に価値の高いことが望まれています。

10.規定委員会(委員長:平岡 靖敏)

 本年度は、以下の「内規」1件を理事会での審議・承認を経て改定しました。また、以下の「マニュアル」を論文誌編集委員会及び規定委員会にて審議・承認を経て制定・改定しました。
  (1) 学会規則第204「研究会内規」/2010.01.27改定
 この内規の改定は、内規が適用される範囲及び責任・権限を明確にするとともに、賛助会員からの参加の場合の範囲を明確にするために改定しました。
  (2) 学会規則第328「論文誌編集委員会幹事マニュアル」/2010.09.17制定
 このマニュアルは、論文誌編集委員会における幹事の役割を明確にし、レフェリー間のコミュニケーションの円滑化、審査の質向上と迅速化を図ることを目的に制定しました。

11.研究開発委員会(委員長:渡辺 喜道)

 今年度は、「テクノメトリックス研究会」、「安全性・信頼性計画研究会」、「医療経営の総合的「質」研究会」、「サービス産業における顧客価値創造研究会」、「統計・データの質マネジメント研究会」の5つの計画研究会が活発に活動しました。
 「テクノメトリックス研究会」では、品質誌に2編の論文発表、4件の研究発表会での発表を行いました。「安全性・信頼性計画研究会」では、リコール事例並びに次世代信頼性・安全性情報システムの具体化を進めました。また、品質誌に2回の特集を組みました。さらに、2件の研究発表会での発表を行いました。「医療経営の総合的「質」研究会」では、6件の研究発表会での発表を行いました。また、医療のTQM七つ道具の出版に向けての原稿執筆や「まあ、いいか」防止ツールに関するアンケート調査を実施しました。「サービス産業における顧客価値創造研究会」では、シンポジウムを開催し、研究成果を公表しました。「統計・データの質マネジメント研究会」は公的統計の質の確保に関する研究を実施するために2010年3月に設置されました。研究期間は3年間です。
 また、「多品種少量生産に対する工程管理に関するワークショップ」が9月に立ち上がりました。ワークショップは、産業界所属会員等が品質管理関連で抱えている問題等を気楽に議論できる場です。活発な活動を期待しています。


(1) テクノメトリックス研究会(主査:中西 寛子 20名)
  ・研究概要
 テクノメトリックス研究会では、「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」をスローガンとし、品質管理に役立つ手法、考え方を幅広く探索しています。おおむね3ヶ月に1度の開催ですが、各メンバーが興味あるテーマを持ち寄り、それについて議論を行いました。
  ・研究発表
 はじめに、近年、研究会の主テーマとして取り上げています「MTシステム」および「異常値探索」に関する発表例を列挙します。
「タグチのRT法で用いる距離の性質とその改良2」
「T法・改良T法と重回帰分析」
「Kernel based MTS divergence」
「A Novel Anomaly Detection Scheme Based on Principal Component Classifier の紹介」
 また、様々な学会においても議論されている「因果探索法」については以下のような発表がありました。
「因果探索のための多変量解析」
「SEM&GMの融合事例」
「無向独立グラフに基づく回帰係数の弱併合可能条件」
「Direct/Indirect Effectsによる代替エンドポイントの評価」
 さらに、品質管理において最も基本的な内容については以下のような発表がありました。
「測定機器の性能比較のための等SN比性の検定(再)」
「工程能力指数の統計的推測」
「学生実験における統計的品質管理の取り組み」
「変量因子の拡張(問題提起)」
「判別問題におけるサンプルサイズの決め方」
 ここにあげた内容以外にもゲストを呼ぶなど多数の発表がなされました。このように品質管理手法の数理的基礎や実際の応用に関するテーマを取り上げる一方で、統計理論一般についても議論を行いました。これらの議論を元に研究をさらに進めたものの一部は、SQC研究発表会や品質誌の投稿論文などで発表されています。
   
(2) 医療経営の総合的「質」研究会(主査:永井 庸次 18名)
   38年度の研究活動を継続し、39年度では以下のテーマに取り組みました。
2009年  
9月(101回)医療の七つ道具のうち、「QFD」再整理 ・・赤尾委員、国枝外部講師
  水戸病院での安全管理についてのアンケート結果について・・中條委員
10月(102回) 医療の七つ道具のうち、「QFD」再整理 ・・・・・・国枝外部講師
  「まぁ、いいか」防止アンケートについて・・・・・・・・永井委員
11月(103回)「まぁ、いいか」防止アンケートについて・・・・・・・・永井委員
12月(104回)「薬剤師によるQC 活動」報告 ・・・・・・・・・・ 中村外部講師
  「まぁ、いいか」防止ツールの提案・・・・・・・・・・・中條委員
2010年  
1月(105回)療養型病院における薬剤に関する改善事例報告 ・・・・進藤外部講師
  水戸総合病院における電子カルテの現状について ・・・・・永井委員
2月(106回)「まぁ、いいか」防止ツールの整理 ・・・・・・・・・・・中條委員
3月(107回)アメリカ視察報告  ・・・・・・・・・・・・・・・・酒向外部講師
4月(108回)「まぁ、いいか」防止アンケートの分析 ・・・・・・中條、永井委員
5月(109回)「まぁ、いいか」防止アンケートの分析 ・・・・・・・・・中條委員
6月(110回)医療の七つ道具のうち、「QFD」再整理 ・・・・・・・国枝外部講師
7月(111回)ひたちなか総合病院の現状報告  ・・・・・・・・・・・・永井委員
8月(112回)病院の移転に関する報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・槙委員
9月(113回)
 上記の議論を踏まえて、39年度には以下を実施しました。
A) 研究会メンバーが全日本病院協会主催の「医療安全管理者養成講座」において、講師を務めました。
B) 委員2名が執筆者の一員となった新版 品質保証ガイドブックが発行されました。
C) 新版医療安全管理テキストを発行しました。
飯田委員の編集のもとに、飯田、池田、永井、中条、光藤委員が一部執筆しました。
D) 医療の七つ道具」(仮称)について、5月29、30日に第92回品質管理学会研究発表会で発表しました。
「まぁ、いいか」認識ツールから「まぁ、いいか」対策ツールへ
    永井、鈴木、光藤、中条、飯田委員、ほか
 
病院リニューアルを契機とした医療の業務革新について    永井委員
当院における診療情報の一元管理について 永井委員
   
(3) 信頼性・安全性計画研究会(主査:伊藤 誠 18名)
   急速な技術の進展と社会・市場構造の変化により激変する社会・経済環境の下で、“ものづくり”における信頼性・安全性(R&S)を確保するために、下記の項目に関し、分野ごとのベストプラクティスの収集と解析、ケーススタディ、委員の研究成果の報告、委員間の情報共有と討議を行うとともに、QRISというフレームワークで整理することを提案しました[1]。また、本事業年度中に重大なリコール事例が発生したので、これらを題材に、克服すべき課題の明確化を行いました。得られた成果は、[2]で学会員へ還元を図ります。
A.信頼性・安全性作りこみ技術
  1)新規トラブル未然防止法の高度化
2)次世代品質・信頼性情報システムのフレームワーク構築と基礎的評価
3)ハザードに着目した根本原因分析(RCA)の高度化
B.安全・安心を達成するための社会インフラ構築
  1)品質と安全を重視する組織文化の確立
2)ユーザ・メーカ・社会行政の三者の協業による信頼性・安全性確保のための方法論
3)信頼性・安全性作りこみの視点からの管理職教育と品質管理教育の高度化
[1] 伊藤誠他(2010):「第2期信頼性安全性計画研究会報告第1報−次世代信頼性・安全性情報システムによる未然防止への取り組み−」、JSQC第92回研究発表会、pp.147-150
[2] 伊藤誠他(2010):「第2期信頼性・安全性計画研究会報告 第2報−グローバル化のもとでの信頼性・安全性つくり込みのための課題−」、JSQC第40回年次大会研究発表会
   
(4)  サービス産業における顧客価値創造研究会(主査:石川 朋雄 16名)
 当研究会は学会中期計画における「Qの創造」をサービス産業において展開すべく設置された計画研究会で、2007年1月から活動を開始しました。サービス産業における実践的な顧客価値創造のシステムを提案し、製造業を含めた全産業でのQの創造を可能ならしめるのが目標です。2010年1月からは研究会として第4年度となり、主査を交代して新体制で始まりました。
 第39年度の主な成果は以下の通りです。
1) 第2回サービス産業実態調査の更なる分析・・・昨年8月に実施した大がかりな調査の、企画方法面の分析を行い,第39回年次大会にて発表しました。
2) シンポジウムの開催・・・昨年12月11日に、学会としてのシンポジウムを開催し、これまでの成果を集約しました。
3) 第3回サービス産業実態調査の実施・・・本年9月、サービス産業の従事者に焦点を当て更なる調査を実施し、サービス創造の成功度に関する要因を探り、精密なモデル化を行います。
4) サービス産業(販売業)A社との共同研究・・・実践的研究を推進するため、A社と当研究会の間で研究開始について基本合意しました。9月には同社が販売の流れと問題点について報告し、今後のスケジュール、進め方を討議しました。12月迄に一応の結論を導く必要があるため、短縮型のP7をとりあえず実施し、価値ある新サービスを創造することとしました。
   
(5) 統計・データの質マネジメント計画研究会(主査:椿 広計 20名)
 本研究会は、内閣府統計委員会の依頼に基づき、2010年3月理事会で計画研究会としての設置が承認されました。その後、総務省・厚生労働省・日本銀行などの公的統計関係者、日本統計学会、日本適合性認定協会、日本マーケティングリサーチ協会、日本製薬工業協会医薬品評価委員会生物統計・データマネジメント部会からの委員・エキスパートメンバーの派遣を求め、約20名の委員・エキスパートで7月にキックオフの研究会、9月にISO20252に基づく市場調査・社会調査の製品認証制度についての調査を行いました。この間9月に早稲田大学で実施された統計関連学会連合大会・横幹連合総合シンポジウムに品質管理学会企画セッションを実施し、3件の講演と討論を行い、調査の質マネジメントに関わる問題点の抽出を行いました。

12.国際委員会(委員長:鈴木 知道)

(1) 第8回ANQ(Asian Network for Quality)大会への協力、参加
  2010年10月19日〜22日に、ANQの幹事国であるインドで第8回ANQ大会の開催が予定されています。主催であるインドのISQに対して、様々な面から支援を行いました。日本からの参加者についても、35件の発表申込がありました。ANQでのリーダーシップを発揮できるよう、引き続き多くの参加者を募る予定です。若手研究者の育成を目指した、若手研究者への旅費支援援助を継続します。
(2) ANQ活動への積極的な支援・参加、ANQの基盤確立へ
  ANQの活動に積極的に参画しました。2010年春には、中国の北京でのANQ理事会に出席しました。10月に行われるANQデリー大会の運営方針等について、積極的に議論をリードしました。また、アジア品質管理賞や品質管理検定についても健全な発展を期すよう検討を深めました。そしてANQそのものの基盤の充実にむけて積極的に取り組みました。
(3) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する具体的な検討
  ANQ内の各組織を重点として、幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について検討し、関係学協会と積極的に交流し、本会会員に有用な国際活動を展開できるように務めました。具体的な実現方法については、今後の課題となります。

13.標準委員会(委員長:村川 賢司)

 第2期中期計画の中間年度として、前年度活動の基本事項を継承・発展し、品質管理用語の定義・解説の検討と啓発普及、品質管理学会標準化の仕組みの試案検討、国際標準化への情報発信などを進めました。
 品質管理用語に関しては、前年度に発刊したJSQC選書「日本の品質を論ずるための品質管理用語85」を確定するために調査研究した文献を掲載した標準委員会報告書PartTを公開し、品質管理用語の啓発普及を進めました。さらに、PartTの続編として新たに60余りの品質管理用語PartUを選定し、その定義と解説のための調査研究に取り組みました。
 品質管理の普及・発展に資すると考えられる標準を当学会が制定し、管理するための仕組みを検討しました(例えば、品質管理学会標準管理規程の試案など)。
 国際標準化に対する情報発信に関しては、ISOによる道路交通安全マネジメントシステムの国際規格開発に標準委員会として参画するなど、当学会の標準化への組織的な関与を深めることに努めました。

14.FMES関連(鈴木 秀男)、横幹連合関連(椿 広計)

 FMESには、JABEE関連の業務を行うFMES/JABEE委員会と、シンポジウムを開催するための実行委員会、そしてその両委員会を統括するFMES代表者会議があり、いずれも当学会から委員を派遣しました。当学会がFMES事務局を長らく務めてきましたが、本年度の途中で日本OR学会に引き継ぎました。第26回となるFMESシンポジウムは、「21世紀のクリーンエネルギーとビジネス」というタイトルで6月に開催されました。
 学術会議との関連では、FMES関連学会から選出されている連携会員が所属する総合工学部会WGとの連携による活動を推進しています。
 2009年12月横幹連合第2回コンファレンス(東北大学)における学会長懇談会、横幹連合4月定例総会、9月臨時総会・会長懇談会に代議員(皆川副会長)・鈴木会長が出席し、第4期科学技術基本計画に関わる議論に参加しました。9月の第3回横幹連合総合シンポジウム(早稲田大学)には、TQE委員会が問題解決型教育、統計・データの質マネジメント研究会が調査の質マネジメントの2つのセッション企画を行いました。

15.研究助成特別委員会(委員長:石井 和克)

 学会創立30周年記念事業として第31年度より開始された当該事業は「21 世紀を担う若手研究者や海外からの留学生に対し,その研究活動をサポートすること」を目的として第39年度は9年目となり、応募者数は過去最高の16名(内留学生4名)でした。第38年度からの委員7名により5名の採択者を決定しました。本年度の採択者には留学生はいませんでした。研究助成を受けた方々は過去9年間で39名にのぼり、その内、留学生は5名となっています。また、39名中、大学関係者が37名、内5名が教員でした。採択者の内、研究奨励賞受賞者が3名、ANQ Best Paper Award受賞者が5名おり、また、採択者による研究発表件数はANQ、年次大会、研究発表会(本部所管)で延べ75件におよびました。このように採択者の学会貢献には大きなものがありました。

16.QC相談室特別委員会(委員長:猪原 正守)

 QC相談室では、インターネットを活用した学会会員の相互研鑽を支援するため、複数の質問を受け付け、会員相互による回答をもって目的を遂行しています。本年度は、
  (1)  品質と機能の関係
  (2)  アンケート調査へのグラフィカルモデリング適用について
  (3)  偏りがある分布の規格設定について
  (4)  アンバランスな二元配置データの平均平方の期待値の計算方法
  (5)  品質ロゴ
  (6)  寿命推定(加速試験)について
  (7)  多品種少量生産の初期流動管理について
の7件が投稿されました。会員相互による自主的な回答がなされたものがある一方、会員からの自由回答がなく相談室から回答者を選定してご回答いただいたものが3件ありました。内容的には、学会で標準的な指針(考え方や方法)のあるものもありましたが,新規性のある内容もあり、会員相互研鑽を一部ではありますが、支援できていると自負しています。

17.原子力安全特別委員会(委員長:中條 武志)

 原子力安全・保安院の後援を受け、日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム部会/社会・環境部会)等と共催で「原子力発電の安全管理と社会環境に関するワークショップ」を2010年3月と9月の2回開催しました(テーマは「教育・訓練」と「コミュニケーション」)。
 また、原子力安全基盤機構や社会安全研究所が中心となって進めている「原子力安全に関する人材・技術マップ」の作成、日本原子力学会の「標準委員会原子燃料サイクル専門部会返還廃棄物確認分科会」や「地層処分対象放射性廃棄物の品質マネジメント特別専門委員会」、原子力安全・保安院の「原子炉安全小委員会安全管理評価WG委員」などへの参画・協力を行いました。

18.運輸安全特別委員会(委員長:中條 武志)

 運輸事業における安全の確保が社会的な問題となっており、組織的なマネジメントが求められるようになってきています。このような中、JSQCとして運輸安全の分野についても積極的にかかわっていくという姿勢を社会に示すとともに、必要とされる管理技術の開発や、開発した管理技術の普及に対して、中長期計画に基づいて組織的に取り組んでいくことのできる体制を整えることを目的に運輸安全特別委員会を設けました。ISO 39001「道路安全マネジメントシステム−要求事項と使用のための指針−」の国内審議委員会(自動車事故対策機構)、国土交通省の「運輸審議会運輸安全確保部会」などへの参画・協力を行いました。

19.JSQC選書特別委員会(委員長:飯塚 悦功)

 品質に関わる概念・方法論・手法が、広く社会一般に理解され適用される状況の実現を支援する一つの方法として、品質マネジメントに関わる基本的考え方、マネジメントシステム、手法・技法、推進・運用、さらには品質に関わる時事の背景・意味の解説をする一連の書籍の出版の企画・編集を進めました。
 JSQC選書刊行特別委員会を2回開催し、発行書籍候補の列挙、短期(1年程度)的な発行計画(主題、著者、発行時期など)を審議し決定しました。決定された主題にかかる構想の審議や原稿案の査読を行い、計画に従って、2009年10月には第3弾として4冊(『日本の品質管理を論ずるための85用語』、『リスクマネジメント』、『ブランドマネジメント』、『シミュレーションとSQC』)、2010年4月には第4弾として3冊(『人に起因するトラブル・事故の未然防止とRCA』、『医療安全へのヒューマンファクターズアプローチ』、『QFD』)の計7冊を発行しました(出版社:日本規格協会)。

20.品質保証ガイドブック編集特別委員会(委員長:中條 武志)

 日本品質管理学会編「新版 品質保証ガイドブック」(日科技連出版社、B5版、1312頁)を、編集特別委員会による最終校正を経て、2009年11月に発行できました。
 また、2010年1月30日(土)に、出版記念シンポジウム「品質保証の方法論とその実践」を開催しました(参加者144人)。委員会として、ご執筆者をはじめご協力頂いた多くの方々に対して心から感謝の意を表します。

21.公益法人法対応特別委員会(委員長:鈴木 秀男)

 今年度は、一般社団法人への移行を前提に、定款変更案の作成、新・新会計基準による40年度予算の作成、移行スケジュールの作成など、具体的な準備作業を行いました。
 また、383回理事会において「一般社団法人への移行」の承認決議を行いました。移行申請時期については2011年11月から2012年4月を想定しております。JSQCの現状の基盤から判断して、一般社団法人への移行は特に問題ないと考えております。

22.TQE(問題解決力向上のための初等中等統計教育)特別委員会(委員長:鈴木 和幸)

 日本的品質管理TQMが生み出した統計的問題解決法は、米国にてDMAICなる名称の下に広がり、さらにこれは、欧米諸国の初等中等統計教育における問題解決型の学習サイクルとして国際的に標準化されつつあります。また、欧米諸国の統計教育カリキュラムの充実さは我が国のもの(1998〜2009)とは格段の差があります。遅れをとった我が国は、2009年の新学習指導要領にて、小1より高1まで統計教育が必修化されました。本学会では、この統計教育が「生きる力」、すなわち“基礎・基本を確実に身に付け、いかに社会が変化しようと、自ら課題を見つけ、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力”をはぐくむことに資する教育となるよう支援をすべく、TQE(Total Quality Education)特別委員会を2010年2月に立ち上げ、以下の活動を行って参りました。
(1)  教科書ならびに指導書への統計的問題解決法の織り込みを図るべく、教育関係出版社の方々への講演会を東京と大阪にて行いました。
(2)  学校現場における問題解決優秀事例への表彰制度を制定し、JSQC40周年行事の一つの柱としました。
(3)  中学・高校の教員・教育委員会を対象とするセミナー・シンポジウムを企画・実行しました (2010年7月19日)。
(4)  日本統計学会、応用統計学会、日本科学教育学会をはじめとする他学会との連携を深め、統計的問題解決法の普及を図るため、JSQC以外の種々の学会・シンポジウムにての発表を行いました。
(5)  副教材「QC入門−データに語らせる−」を作成し、出版社、教員の方々への問題解決事例の教材を提供すべく、活動を進めました。

23.部会

(1)ソフトウェア部会(部会長:渡辺 喜道 79名)
   前年度から継続して、研究活動を行う会合を定期的に開催しました。昨年度に引き続き、過去のソフトウェア開発の分野で有用であった「形式知」の集積、分類を行うとともに、その結果の一部をWebサイトで公開しました。また、現在のソフトウェア開発において不足している部分、すなわち新たな研究が必要な領域を明らかにする活動を進め、新たな形式知を発掘する活動を実施しました。
  また、他団体との連携も、昨年度同様活発に行い、各種行事の後援などを行いました。
   
(2)QMS有効活用及び審査研究部会(部会長:福丸 典芳 134名)
 
1) 第2期研究活動の推進及び研究成果の報告
 前年度から引き続き6つの研究テーマに関して1回/月の頻度で研究活動を行い、第2期活動を4月で完了しました。
  ・WG6の年次大会での研究成果発表(2009.10)
・第134回シンポジウムの開催(2010.4)
・第2期研究報告書の発行(2010.4)
2) 第3期研究活動の推進
 第3期研究活動を2010.6から6つのWGで、1回/月の頻度で研究活動を開始しました。WGのテーマは次の通りです。
  WG1:適合性を証明する審査の研究
WG2:審査員の専門性による効果的な審査の研究
WG3:受審組織のQMS大改造への提案
WG4:次世代対応のQMS構築と審査技法の研究
WG5:マネジメントの原則から見た統合審査技術の研究
WG6:経営に貢献するISO9001推進の研究
 
(3)医療の質・安全部会(部会長:棟近 雅彦 186名)
 当部会は、活動開始後約5年が経過し、現在の部会員数は約190名です。昨年とほぼ同数で、残念ながら増加することはできませんでした。今後も部会員増加に向けて努力して参ります。
 今年度の研究活動としては、厚生労働科学研究費の研究グループ、およびQMS-H研究会と共同しながら、患者状態適応型パス(PCAPS)、医療の質マネジメントシステム等について研究して参りました。
 これらの研究成果の公開の一環として、2010年3月に、患者状態適応型パスの研究班、QMS-H研究会との共催で、「医療社会システムの構築に向けて」と題するシンポジウムを開催しました。大変多くの方が参加し、活発な議論が行われました。さらに、2010年9月には、科研費研究グループとの共催で、PCAPS中間成果報告シンポジウムを開催いたしました。研究発表も、JSQCはもちろん、医療の質・安全学会、日本医療・病院管理学会等で、部会員の研究発表を行っています。
 教育・啓蒙活動については、QMS-H研究会、医療QMS研究会での成果を生かし、2010年8月より、「医療の質マネジメント基礎講座」を昨年度に引き続き開催し、10月までに、全14回を開催予定です。昨年度の内容をさらに改訂し、充実した内容にすることができました。当部会が関連する研究会に参加していない一般の医療機関からも、多くの受講生が参加するようになりました。