社団法人日本品質管理学会

第33年度 自 2003年(平成15年)10月 1日
至 2004年(平成16年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:飯塚 悦功)

わが国の品質の現状に対し,時代が求める精神構造の確立,産業競争力という視点での品質の考察,社会技術のレベル向上という3つの基本施策が必要であると認識し,これを受けて第33〜34年度の2年間に学会として,概念の発信と教育・訓練機会の提供,計画研究・公募研究の充実,視野拡大の機会の創出,会員サービスの一層の向上による会員増強という4つの具体的施策を提示し,活動を行って参りました.この中で,下記の項目につきましては成果が得られましたが,いくつかの施策については実施のための準備段階にとどまったもの,未着手のものもありました.これらにつきましては,第34年度に確実に実施できるよう努めてまいります.

(1) 概念の発信,教育・訓練機会の場として,シンポジウム,事業所見学会,講演会,クオリティパブなどの数多くの定例行事を開催いたしました.また,ISO9001審査員のためのTQM基礎講座を開設し,多くの審査員の方々に受講していただきました.定例行事の中ではシンポジウムに大変多くの関心が寄せられ,200名以上の方に参加いただいたシンポジウムもいくつかありました.また,昨年度に引き続きISO9001:2000に基づく第三者審査のためのガイドライン説明会を大阪で開催し,多くの方にご出席いただきました.新しい概念の発信に関しては,編集委員会を中心に検討し,次年度の品質誌で公表すべく準備を進めました.
 
(2) 研究開発活動におきましては,昨年度も活動していた7つの研究会が今年度も引き続き活発な活動を行いました.また,新たにシミュレーションとSQC研究会の3つの部会が活動を開始いたしました.さらに,日本ものづくり・人づくり質革新機構(JOQI)からの研究委託を受け,医療の質保証用語の研究を行いました.JOQIの解散にともない,JSQCもいくつかの事業,研究を引き継ぎました.
 
(3) 視野拡大の機会として,(1)でも述べましたように定例行事とともに,いくつかの新規企画を提案し,実施しました.国際的な活動として,8月に開催されたThe Second ANQ Congress and 18th Asia Quality SymposiumにJSQCから多くの方が参加しました.本年末までのANQ議長国としての重要な任務をほぼ全うし,次期議長国台湾への引き継ぎの準備を始めました.日本学術会議,経営工学関連学会協議会(FMES),横断型基幹科学技術研究団体連合と連携した活動にも積極的に参画しました.
 
(4) 会員サービスにつきましては,従来の活動に加えて品質管理相談室の設置,賛助会員品質管理推進者懇談会,賛助会員への口数増加,新規加入の勧誘などを行い,会員増強に努めましたが,会員数はほぼ横ばいで推移しました.引き続き,会員増強策を実施してまいります.また,今年度は会員名簿発行の年にあたり,はじめてCD-ROMにより発行いたしました.
 

2.長期計画委員会(委員長:飯塚 悦功)

委員会は開催いたしませんでしたが,中・長期の課題を整理いたしました.一部の課題は,本年度より取り組みました.

3.事業委員会(委員長:神田 範明)

第33年度事業は本部(年次大会,研究発表会,ヤングサマーセミナー各1回,シンポジウム3回,事業所見学会3回,クオリティパブ6回),中部支部(研究発表会,シンポジウム各1回,講演会2回,事業所見学会3回),関西支部(研究発表会,シンポジウム各1回,講演会1回,事業所見学会2回,QCサロン6回)と順調に開催され,実績を上げております.支部行事は基本的に各支部の主体性にお任せしており,地域の会員のニーズを反映した行事を企画していただき,各々好評をいただいております.

本部事業も幅広いニーズに対応したタイムリーな企画を目標に実施して参りました.昨年10月2日の第94回シンポジウム(顧客価値創造へのアプローチ)から本年9月29日の第43回クオリティ・パブ(阿部 忠氏)まで全15回,のべ約1,500名もの多数の会員に参加いただき,お陰様でかなりの活況を呈しており,心より御礼申し上げます.以下簡単に主な行事の状況を説明いたします.

(1) 年次大会,研究発表会
第33回年次大会は昨年11月6日,名古屋工業大学にて開催し,研究発表41件,のべ228名の参加者がありました.前日には(株)デンソー,豊田工機(株)の2社にご協力いただいて見学会を開催,生産技術と品質保証体制の素晴らしさに圧倒されました.研究発表会は本年5月29日に日本科学技術連盟東高円寺ビルにて開催,61件もの(若手を中心とする)熱気溢れる発表があり,参加者も312名と,最大級の盛況ぶりでした.
 
(2) シンポジウム
以下の3回を開催,いずれも日本を代表する各界の識者の講演・発表と討論があり,好評をいただきました.
  • 2003年10月2日「顧客価値創造へのアプローチ−日本の品質保証体制の再構築−」
    日本科学技術連盟東高円寺ビル,参加者141名.
  • 2004年3月2日「医療の質向上を目指して−総合的質経営(TQM)としての質マネジメントシステム−」
    早稲田大学理工学部キャンパス,参加者192名.
  • 2004年7月15日「ISOマネジメントシステムの最新情報と企業の取り組み」
    早稲田大学理工学部キャンパス,参加者241名.
 
(3) 事業所見学会
以下の3回を開催,いずれも個性的で優れたTQM活動を展開する事業所を見せていただきました.
  • 2004年3月9日 (株)クロス・ロード(東京都杉並区)
    「お客様満足を目指すホームヘルプサービス」,参加者23名.
  • 2004年5月26日 東日本旅客鉄道(株)研究開発センタ−(埼玉県さいたま市)
    「JR東日本の安全のレベルアップ達成に向けた取り組み」,参加者25名.
  • 2004年7月2日 住友建機製造(株)(千葉県千葉市)
    「シックスシグマと小集団活動」,参加者30名.
 

4.中部支部(支部長:大西 匡)

(1) 基本的な考え方
グローバル化して行く「日本のものづくり」における品質確保の原点復帰と今後の方向をさぐる.
1) あたり前の品質の確保 −原点からの総点検−
2) グローバルな視点での品質管理活動のあり方の追求
(2) 具体的な行事のまとめ
1) 研究発表会(1回/年)9月3日,名古屋工業大学にて開催.参加者126名
『あたり前の品質を確保する品質管理の研究と実践』をテーマとして,発表事例は,産業界7件,学術界6件,産学共同3件の16件であった.昨年度同様,会場移動や準備の時間として発表と発表の間に5分間の準備時間を入れた.研究発表会終了後の懇親会では,発表者の苦労話や若手参加者から学会への意見など有意義な情報交換が行われました.
2) シンポジウム(1回/年)7月13日,中電本店 中電ホール 参加者179名
『日本のものづくり・人づくりに求められているもの』〜JOQIの提言から,今後の方向を探る〜」のテーマで開催しました.
トヨタ自動車 常務役員 佐々木 眞一 氏の基調講演に始まり,日本ものづくり・人づくり質革新機構(JOQI)の活動全体の報告と5部会の活動報告が行われ,その後パネル討論会を実施.参加者からは,トヨタ自動車の活動や,JOQIの取り組みとアウトプットに対し活発な質疑が行われました.
3) 講演会(2回/年)
  • 4月16日,(株)デンソー Dスクエアにて開催.参加者111名.テーマ「お客様に支持され続ける企業を目指して」で2件の講演を実施しました.
  • 7月29日,愛知県豊明市の豊明花き地方卸売市場にて日本品質管理学会,日本OR学会,日本経営工学会3学会の共済で開催.豊明花き地方卸売市場の見学と,「物流産業の安全性について」をテーマとした講演会2件を実施.参加者40名.見学と講演の組み合わせという新しい形態で実施しました.
4) 事業所見学会(3回/年)
  • 1月29日,豊田紡織滑谷工場にて開催,参加者34名
     テーマ 「環境調和型オイルフィルタの開発と生産システムについて」
  • 4月13日,中部国際空港にて開催,参加者46名
     テーマ 「中部国際空港における環境対策について」
  • 7月23日,アスモ梶@本社工場にて開催,参加者38名
     テーマ 「グローバル化に対応したものづくり」
5) 幹事研修会(2回/年)
2月22日,ヤマハ発動機鰍ノてオートバイの組立工場を見学,世界中のお客様に喜ばれるオートバイづくりを学び,8月27日には(株)豊田自動織機の織機ショールームを見学し,豊田佐吉翁の織機から最先端の織機までの変遷を学ぶことができ,有意義な研修の場とすることができました.
6) 若手研究会
金沢地区では石井先生(金沢工大)を中心として2回,東海地区では仁科先生(名工大)を中心として6回,産・学会からのメンバーにより活動を展開しました.
7) 実践活動研鑚会(新企画)(1回/年)
若い会員が自由に意見交換が出来る場を提供することを目的に企画し,5月7日に日本規格協会名古屋支部で開催.2件の事例発表をもとに活発な意見交換が行われた.実施状況を検討し次年度の開催を見送ります.

5.関西支部(支部長:中島 昭午)

(1) 基本的な考え方
大変革時代において,品質管理に求められるものの追求を通じ,企業への貢献,関西支部の存在感の確認
「現場に密着した,新たな管理技術の再構築」−上手なもの造り,現場の技術の伝承−
1) 現場重視,現場力の向上
2) 現場力の向上のための新規で易しい手法の開発
(2) 活動のまとめ
1) 事業所見学会
月桂冠梶@(清酒製造における品質管理)(3月10日)
関西国際空港 (2期工事の施工管理技術))(4月23日)
2) シンポジウム
第98回 ビジネスプロセス革新の最前線
  〜新しいものづくりへの革新をめざして〜(9月15日)
第100回 日本ものづくり・人づくり質改革機構活動報告(8月25日)
3) 講演会
第90回 TQMの推進とデミング賞への挑戦(3月13日)
4) 研究発表会
第76回(9月27日予定)
5) 研究会
関西支部としての研究会を実施
6) QCサロン
原則,偶数月第3金曜日に開催(6回/年)
関西支部会員(メールアドレス登録者約350人)に開催案内を通知
7) 事業運営幹事会
事業運営幹事会から合同役員会として,支部長,理事,幹事長,代議員,幹事をメンバーとして2〜3ヶ月に1回開催

6.投稿論文審査委員会(委員長 尾島 善一)

投稿論文審査委員会では以下の活動を行いました.

(1) 前年度方針を引き継ぎ,レフリーと著者との議論に投稿論文審査委員会がより積極的に関与するという姿勢で臨みました.
(2) レフリーや著者から,論文審査における投稿論文審査委員会と編集委員会との関係および独立性について複数の問い合わせがありました.委員会で慎重に審議した結果,学会誌編集委員会(現 編集委員会)との独立性を明示すべく本委員会の名称を論文誌編集委員会と改称することを理事会に提案致しました.
(3) 18AQSの論文奨励・作成支援に関して,国際委員会の委託を受け,以下の活動を行いました:
1) 17AQSへJSQCから提出された全てのアブストラクト(全22本)に対する,最終論文(フルペーパー)作成への助言と順位付け
2) 若手への参加奨励金の適用対象者の選定
3) 若手のフルペーパーに対するBest Paper Award with Encouragement(JSQC)審査
(4) 前年度に引き続き,投稿論文審査のスピード化をめざし,新規投稿へのfirst response を3ヶ月以内に行うことを目標に活動しました.しかしながら,結果は3ヶ月以内のfirst responseは56%(前年度70%)と低下してしまいました.
(5) 30年度の投稿論文数19本,31年度27本,32年度は20本に対し, 33年度は29本となりました.掲載論文は31年度13本,32年度16本に対し,33年度は低調で6本の論文の掲載という結果になりました.
(Vol.33 No.4: 2編,Vol.34 No.1:1編,Vol.34 No.2: 2編,Vol.34 No.3:1編)
  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
30年度 19
31年度 27
32年度 20
33年度 29

7.編集委員会(委員長:久保田 洋志)

編集委員会は,次のような編集に対する基本的な考え方について合意して活動をしてきました.
@ 特集は品質管理関連の論文とする.
A 品質管理の専門家に対する情報発信で商業誌と差別化する.
B 実務家の職務の遂行および改善・変革に役立つ内容とする.
C 論理的緻密性ではなく,提唱的ないし提案的な概念・内容・構想と説得力を尊重する.

そして,日本品質管理学会飯塚悦功会長の方針を踏まえて,次の内容を具体的に展開した特集テーマを検討しました.
@ Q-JAPAN構想のキャッチコピーの下で,パラダイム転換を実現するために,概念と基本的課題および対処の方向付けを提示する.
A 産業競争力の視点からの質を追究する.
B 社会技術のレベル向上に貢献する.
C 学会誌による会員サービスの向上を図る.

編集委員会は今年度8回開催しました.特集については,前年度編集委員会の企画による「基本を忠実に」「品質管理教育」「ステップアップSQC」,「「品質管理」とデジタルエンジニア」を掲載するとともに,今年度編集委員会の企画による「Q−Japan構想」をVol.34,No.4に掲載致しました.また,Vol.35の特集テーマとして,「ナレッジマネジメントの工学的アプローチ」「産業競争力と国際標準化戦略」「顧客価値創造のためのブランド戦略と品質経営」「海外に学ぶ日本のTQMの課題」の企画について検討してきました.

8.広報委員会

事業委員会,会員サービス委員会,Web特別委員会と連携をとりつつ,以下の取り組みを行いました.

(1) JSQCニューズの発行
第248号〜第255号まで8編を計画とおりに発行しました.本年は第1ページに掲載するトピックス記事を年間の行事計画にあわせて,筆者をあらかじめアサインして進めることにしました.
主なトピックス
  • グリーン調達の傾向
  • JOQI(日本ものづくり・人づくり質革新機構)報告
  • ANQ(Asian Network for Quality)紹介
(2) プレスへの情報発信
学会行事,受賞記事などのソースを品質管理関連誌に発信し開催を依頼し「クオリティー・マネジメント」,「アイソス」,「標準化と品質管理」に掲載されましたが日経新聞など経済紙への掲載はありませんでした.このため,委員会を結成し広報媒体とアプローチの方向につき検討しました.
(3) 「ニュースソースの発掘」と「発信方法」(検討中)
いろいろ品質問題が取りざたされておりますが,世の中で話題になっている「品質に関わる問題」について,JSQCから何らかのコメントを発信すべきと考え,誰が,どのような媒体に,どのタイミングで行なうかなどにつき検討を開始しました.

9.会員サービス委員会

第33年度は32年度に引き続き活動の内容の充実による,会員のサービス向上をはかるべく以下の(1)(2)の事項を重点的に実施しました.

(1) 新サービスの企画と充実
第31年度以降に企画した以下の新しいサービス内容を充実させました.
@ 「品質管理相談室」(相談室特別委員会が担当)の立ち上げ支援
A 「賛助会員 品質管理推進者 懇談会」の実施

下表の通り,第33年度は2回開催し,インターラクティブな,話題(情報)提供→意見交換→役に立つ教訓等の獲得,が実現できたと考えます.
年/月 テーマ 話題提供者
(敬称略)
会社数 出席者 学会誌
1 02/10 シックスシグマ
−その本質とTQMへの提言−
狩野紀昭 20社 22名 33-2
2 03/5 TQM9000
 −ISO9000を超えて−
飯塚悦功,丸山昇 22社 30名 33-3
3 03/1 品質管理の基本を考える
−海外のTQM支援活動および西堀榮三郎から学ぶもの−
小田部譲,松本隆 14社 19名 34-2
4 04/6 モチベーションを考える
−人の心を動かし,組織の中で人間性と創造性を発揮させるには−
近藤良夫,松本隆,
伊藤典夫,川島学,
菊入みゆき
17社 19名 34-4

(2) 会員増強策の実施
正会員および賛助会員の減少傾向に歯止めをかけるべく,以下の会員増強策を実施しました.

@ 賛助会員の口数増加の申し入れ
A 賛助会員の新規加入の勧誘
B 正会員の新規加入の勧誘

品質システム審査員を対象として,新制度で審査員に要求されている専門能力開発(PD)実績が効果的に得られる手段として以下の講座を受講←→学会入会を薦めました.(事業委員会,広報委員会と連携して,開催・PR.)

03年12月〜04年4月に開催された「ISO9001:2000 審査員のためのTQM基礎講座」いずれも,未だ十分な成果を上げたという段階ではありませんが,今後も継続して実施する必要があると考えます.
2004年9月30日現在の会員数: 名誉会員32名,正会員3,064名,準会員126名
賛助会員177社203口,公共会員22口

(3) その他(未実施事項)
以下の項目については,実施計画にあげていましたが,実施できませんでした.

@ ご意見・ご要望の把握・集約のためのアンケート
日頃学会の行事に参加している方々の要望を含め,非参加者や地方の会員のご意見を伺う機会がほとんどない.そこで,できるだけ多くの会員の学会に対する意見・要望を聞いてみたい.この目的でメールアドレス登録者約2000名を対象にアンケートを実施し,その集約結果をもとに学会としての「顧客満足度」の向上を図りたいと考えていましたが,実施には至りませんでした.
A 支部「賛助会員 懇談会」の新設
関西,名古屋での開催希望もあり,支部とも相談して開催を検討しましたが,実現に至りませんでした.

10.規定委員会

以下の内規の改定案を作成し,理事会への報告・承認を得て施行しました.

  (1) 学会規則211 支部内規(このうち関西支部内規) (改定案)
  (2) 学会規則223 広告受入内規 (制定案)
  (3) 学会規則224 基本財産の運用益の使途に関する内規 (制定案)
  (4) 学会規則325 Webサイト掲載情報管理マニュアル (制定案)

11.研究開発委員会

(1)テクノメトリックス研究会(主査:山田 秀 17名)
今年度は,特に特定のテーマを決めず,各自が興味のあるテーマを持ち寄り,それらについて議論を行っています.テーマの具体例としては,統計的因果分析,MTS法,対応があるデータにおけるオッズ比検定,分割表とマルコフチェーン,ブースティングによるスコアリングモデル,コンピュータ上でのシミュレーション実験,変化点モデルに関する分布論,など,数理的な検討があります.またこれらの高度な手法を実務的に使用可能にするべく,エクセル上での実装を行いました.

(2)医療経営の総合的「質」研究会(主査:田村 誠 16名)
1) 委員会参加病院(先駆的取り組みを行う病院)の訪問調査および職員に対するアンケート調査の結果(「医療経営の総合的『質』研究会 報告書および資料集」,平成15年3月)を出版用に修正.
2) 調査対象を委員会参加病院のみでなく一般の病院まで拡大し,総合的質経営の取り組み状況を問うアンケート調査を作成し,全日本病院協会 医療の質向上委員会と協力して実施(平成15年9月).また,その結果を分析・で発表(平成16年5月,下記4)参照).
3) 医療関係者への啓蒙活動の一環として,医療関係団体が主催する研修会,シンポジウム,出版物等に委員の参加・講演・寄稿等をお願いした.具体的には以下の通り・四病院団体協議会主催の「医療安全管理者養成講習会プログラム」の企画協力(平成16年7月〜9月)
  • 「第45回全日本病院学会シンポジウム−医療の質を考える−」にて講演(平成15年10月)
  • 社団法人日本品質管理学会・社団法人全日本病院協会共催の「第96回シンポジウム医療の質向上を目指して−総合的質経営(TQM)としての質マネジメントシステム−」にて講演(平成16年3月)
    −医療と経営の総合的「質」改善−横糸による組織的強化の実践から−
    −医療の総合的「質」経営について−4年にわたる研究会活動から−
4) 品質管理学会関連の会合あるいは出版物に経過あるいは成果の報告を行いました.具体的には以下の通りです.
  • 「第33回年次大会研究発表大会」にて発表(平成15年11月)
    −医療の総合的「質」経営の方法に関する研究(第2報)−
    −医療経営の総合的「質」経営に関する研究−6病院の調査「方針管理」について−
  • 「日本品質管理学会第74回研究発表会」にて発表(平成16年5月)
    −医療機関の総合的質経営に対する意識に関する調査研究−「医療の質向上に関するアンケート」から−

(3)3PS研究会(主査:大藤 正 15名)
3PS研究会は2002年5月29日に準備会をもってスタートし,2年間の研究活動を終了しました.日本社会では就職せずに就社するといわれているが,企業に帰属して働くにしても,起業するにしても,これからの社会では個人に対してはプロフェッショナルであることが求められ,協働に対してはパートナーが満足することが求められ,集団としての活動ではプロジェクト全体の満足が求められます.ヤン・カールソンの「真実の瞬間」ではないが,逆さまのピラミッド構造による最前線の従業員を最優先させる企業を目指すのであれば,3Pの満足について十分検討する必要があると考えられます.3PS研究会の成果の詳細については,「3PS研究報告書」としてまとめ,第74回の研究発表会で報告し,品質誌にも報告したので,こちらを参照頂ければ幸いです.

(4)次世代型小集団活動実践研究会(主査:永井 一志 18名)
32年度からの研究活動を継続し,33年度では以下のテーマに取り組みました.

2003年10月(第 7回):労働形態・労働意識の変化と小集団活動
2003年11月(第 8回):次世代型小集団活動の方法論(その1)
2004年 1月(第 9回):次世代型小集団活動の方法論(その2)
2004年 2月(第10回):小手段活動成果の測定(その1)
2004年 3月(第11回):小手段活動成果の測定(その2)
2004年 4月(第12回):まとめ(報告書の作成)

33年度の活動では,欧米で着目されている小集団活動として,知の共有と創造を目的としたナレッジ・コミュニティを意識し,日本における小集団活動への展開を検討しました.2004年4月をもって研究会は終了し,研究成果を報告書(A4判109ページ)にまとめました.これらは,希望者に実費で領布されています.

(5)環境マネジメント研究会(主査:岡本 眞一 21名)
11月度は中山哲男氏(産業環境管理協会)による講演を実施しました.
1月度は研究会で実施するアンケート調査の内容についてディスカッションしました.
3月度は会合は実施せず,アンケート案を各自考案することとしました.
6月度は井上正昭氏(BSI)による講演会を実施しました.

(6)リフレクター研究会(主査:布施 輝雄 10名)
1) 時代先取り標語リフレクター
開発したい商品のイメージ発想の仕掛けについて,「世の中の変化の予見」とこれによる「顧客の潜在要求のあぶり出しの仕掛け」という事に注目しました.「潜在要求のあぶり出し」を,未知の天空を探る天体望遠鏡と見なし,天体望遠鏡の「リフレクター」という概念を,知識創造の手段として検討することにした.「世の中の変化の予見」ということについて,1960年代:重厚長大技術・1970年代:軽薄短小技術・980年代:軽薄短小型技術の応用・1990年代:軽・我・華・鮮など,時代を端的に表現する時代評語があります.これらの時代標語は,企業や自治体組織が意識的・無意識的に拘らず,長期方針・戦略を立案してきました.これら時代標語の0次・1次レベルは,社会的ニーズであり,2次・3次と順次展開することにより,個別市場・顧客のニーズに結びついていきます.品質機能展開の要求品質展開表は,顧客の潜在要求を反映(反射)したもので,一件毎の要求票は,天体望遠鏡の一枚一枚のリフレクターに相当します.
2) “人”リフレクター
人が生み出す「ヒラメキ・気づき」は“知の種子”であり,刺激に対する反応である.外部刺激については,@対象の観察―記録―データ化―分析・解析という科学的アプローチによる気づき・ヒラメキ.A会話によりその人の持つ暗黙知を刺激し,気づき・ヒラメキという形で形式知化されます.ここ数年「質問技法」に関する書物が多数発刊され,そこで記述されている内容に共通しているのは「質問により相手の気付き」を促すと言う点にある.これは,質問により相手が「自分の暗黙知に気付く」ということで,質問―応答―質問の繰り返しで,できるだけ多くの気付き・ヒラメキを生み出すことにあります.
3) 思い
同じ条件を与えても,メンバーにより出されるアイディアに大きな差がある.気付き・ヒラメキが生まれるのは,場に与えられた情報に依存するだけでなく,メンバーが保持する形式知・暗黙知の影響が大きい事と,課題・問題に対する思いの違いによります.一人一人の思いは,組織に参加する以前から保持している思いと,組織に所属し上司・メンバーとの交流により,後天的に醸成された思いがあります.リーダーは組織メンバーがどの様な思いを持っているかの把握と,メンバー確定後の思いの醸成・維持・強化がリーダーの重要な役割です.価値観の多様化で,従来の管理力の一つである「動機付け」について,今後の研究が必要となります.
4) 活動実態
月・日 10/28 12/04 01/20 02/24 03/23 04/24 05/25 06/29 07/29 08/31
参加者 10 8 10 10 8 9 9 7 7  

(7)デジタルエンジニアリングと品質保証研究会 (主査:金子 龍三 7名)
代表的な業界の商品について顧客の観点から品質問題を研究員,報道,Web情報及び失敗情報に基づいて調査を行いました.研究会ではこれらのフィールドで発生する問題について直接原因究明技術と真の原因究明技術を紹介し,研究員の技術と知識を加味して分析を行いました.

その結果,フィールドでの不具合は@ハードウェア・ソフトウェアの部品,工法,インタフェース問題,A情報インタフェース問題,B操作性問題,C他システム.他装置接続性と統合問題,D環境条件仕様問題,Eそして設計結果予測(従来からの研究分野である検証技術問題を含む)から発生していることが判明しました.

このことは学会誌に報告した品質保証課題の要件開発課題【管理技術的には妥当性確認技術,商品計画段階では要件定義技術】に研究課題があることが判明しました.

これらはTQM宣言での関係者・関係性概念が学会として概念の段階に留まっており具体的な技術として確立していないことを示しています.そこで研究会では関係者・関係性について代表的な商品について技術的検討を行いました(屋外設置使用システム,屋外固定使用システム,屋外移動使用システムの仕様検討項目等).さらに環境条件について検討しました.業界(研究会参加者が電気・電子・ソフトウェア関係に限れている)にもよるが,デジタルエンジニアリングの適用が必要な分野は上記@〜Eです.

研究会ではE項に関連してデジタルエンジニアリングのプロセス別適用可能性を検討するためにプロセスの妥当性についての研究も行いました.

(8)シミュレーションとSQC研究会 第1部会(主査:仁科 健)
1) 活動テーマ
以下を当研究会の活動テーマとします.
@CAEにおけるSQCへのニーズ分析を行います(CAEの現場では何が問題か?課題マップの作成)
ASQCからCAE に発信できることを探ります(SQCからCAEへ啓蒙すべき点は何か?)
B@に関連して,第2分科会と協力し,CAEからのニーズに応えるためのSQCの問題 点を探りSQCへの提案を行います.
2) メンバー
【主査】仁科健(名古屋工業大学),【副査】吉野睦(潟fンソー),椿広計(筑波大学),石井成(名古屋工業大学),猪原正守(大阪電気通信大学),木村次雄(東亜合成梶j,杉山哲朗(中部品質管理協会),松田眞一(南山大学),山田秀(筑波大学),四方田英利(トヨタ自動車梶j,秋山茂樹(ブラザー工業梶j,松田順一(三洋電機梶j,前田拓志(潟fンソー),垰本直生(アイシン精機梶j,石井隆(富士総合研究所)
3) 活動内容
  • 2004年3月13日にキックオフし,今年度は研究会を6回開催しました.会場は中部品質管理協会会議室.
  • 研究会ではメンバー各社でのCOEの実践および実践での問題点を紹介してもらい,上記テーマに関する議論を行いました.
  • 5月15日に名古屋工業大学において開催された横幹連合とのジョイントワークショップ“デジタルエンジニアリング時代の品質管理の課題”に参画しました.当分科会からは副査である吉野睦委員が“CAEにおけるSQC活用上の問題点”と題して講演を行いました.
  • 年次大会において活動経過を報告します.

(9)シミュレーションとSQC研究会 第2部会(主査:山田 秀)

今年度は,シミュレーション実験に既存のSQC手法を適用するための基礎固めを行いました.具体的には,統計的手法適用の妥当性,統計的解釈などです.さらに,数理計画,数式処理など他分野からこの問題を捉えるとどのようになるのか等,学際的な検討も始めました.

(10)シミュレーションとSQC研究会 第4部会(主査:天坂格郎)

当研究会は,『(科研費)技術開発促進のための新たな統計科学体系とそれに基づく情報システム開発』を研究母体にしており,5月15日(CAE*SQCワークショップ,名古屋工大)のキックオフミーテイングを契機に立上げました.
実施状況:
第1回 6月22日(筑波大学) 17時―19時 7名/8名
第2回 7月13日(筑波大学) 17時―19時 6名/8名
第3回 8月18日(JSQC東高円寺) 17時―19時 5名/8名
第4回 9月14日(JSQC東高円寺) 17時―19時  名/8名
ミッション: 当面の研究課題は『品質保証体系の理念的検討を行う研究会』として,自動車産業における数値シミュレーションに必要な設計品質保証体系の確立です.
初年度の活動目標: 当WG4の初年度の研究活動は,CAE*SQCにかかわる品質保証(QA)に視座した,自動車産業(車両メーカー*部品メーカーに至る)の業務フローを整理し,CAEの活用実態,問題点・有効性などを可視的技術も援用して,MAP化を第34年度完了目標にスタートさせました.
実施内容: P・DCAE解析を効果的なものにするためにSQCを援用することの効用・問題点(改善点など)を,先進企業の事例研究を進めています.
Q・D,自動車の設計―製造に係わる品質保証の実際をリサーチ中.
CAE解析,特に数値シミュレーションが抱える問題点をリサーチ中.

12.国際委員会(委員長:渡辺 喜道)

第33年度の国際委員会は,第32年度の活動を継承し,主に以下の事業を実施しました.

(1) 第2回ANQ(Asian Network for Quality)会議・第18回AQS(Asia Quality Symposium)の共催,支援,および積極的参加
2004年8月16日〜18日にISQ(Indian Society for Quality)主催のもとニューデリーで開催された第2回ANQ会議・第18回AQSにむけて,会議・シンポジウムへの論文投稿,参加勧誘を積極的に行い,JSQCから22本の論文発表,43名の参加者を得ました.
また,電話回線を利用して日本とインドを結んだサテライトセッションを試行的に実施しました.回線の品質があまりよくなかったため,途中で回線が切断されるアクシデントに遭遇しましたが,アジア地区の品質における新しい会議の形態を実験的に提示できたと評価できます.さらに,第32年度に引き続き,若手研究者に対する最優秀論文賞を企画し,2名に贈呈した.会議・シンポジウム全体に渡り,JSQCとして充分な貢献ができたと評価しています.
(2) ANQの基盤確立のための調整
2004年4月2日,3日に台北で開催されたANQボードメンバ会議において決定された事項に基づき,会議・シンポジウムの実施に協力しました.また2004年8月16日に開催されたANQボードメンバ会議および総会において,議長・事務局組織としての役割を担い,必要な調整・取りまとめ役を務めました.
(3) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスの検討
第32年度のASQ(American Society for Quality)との論文・記事の掲載に関するアライアンスの検討結果を受けて,アライアンスに関する現状を再確認しました.その確認事項をもとに,ASQに限らず,幅広く海外の学協会と交流をもつための方策・仕組みについての検討を開始しました.

13.標準委員会(委員長:椿 広計)

(1) 第32年度に実施した品質管理関連分野の標準化活動とその活用状況調査結果を年次大会において会員にフィードバックしました.
(2) ISO9000審査員を対象としたTQMの基礎講座を5回開催し,今後のISO審査員への標準的TQM教程のあり方を議論しました.
(3) 医薬品・医療機器の管理,食品安全衛生管理などの専門家を招聘し,品質管理の新たな重点標準化分野に関する情報収集活動を行いました.

14.日本学術会議 経営工学関連(担当:圓川 隆夫)

日本学術会議には,本学会として経営工学研究連絡委員会と人工物設計・生産研究連絡委員会経営管理工学専門委員会の合同委員会に委員を派遣し,現在9つの学会から構成されるFMES(経営工学関連学会協議会)の連携のもとで活動を行っています.この合同委員会は,FMESの代表者会議を兼ねており,FMESの最高決議機関になっています.本年度は,昨年12月より学術会議第19期の活動が開始され,同時に合同委員会の活動も開始いたしました.従来,学術会議は1期3年でしたが,学術会議の構造改革にともない,来年の9月で終了することになっています.詳細は未定ですが,研究連絡委員会は廃止され,別の形態で各学会と学術会議が連携することになります.

FMESには,JABEE関連の業務を行うFMES/JABEE委員会と,シンポジウムを開催するためのFMESシンポジウム実行委員会があり,いずれにも本学会から委員を派遣しています.

JABEE関連では,2003年度に経営工学分野の本審査を開始し,2大学2プログラムを認定しました.本審査の審査員,審査結果を検討するFMES/JABEE審査委員会にも本学会から推薦された方が参画しています.FMESシンポジウムは,今年度の幹事学会をOR学会が務め,2004年7月に「経営戦略とリスクマネジメント」をテーマに開催いたしました.シンポジウム当日には,FMES学会長会議を開催し,意見交換を行いました.さらに,2003年11月には,FMESホームページを開設しました.FMESには独立でサーバーを持てるだけの経済的基盤がないために,本学会ホームページの一部を借用する形で運用しています.ここには,JABEE審査やシンポジウム関連の情報を掲載しております.

15.顧問の承認

定款第26条ならびに内規203号に基づき,去る9月15日開催いたしました第345回 理事会において,次のかたを推薦することを議決いたしましたのでご提案いたします.

 狩 野 紀 昭  氏   (東京理科大学 教授)

16.会費未納者の除名

定款第13条(1)および資格審査内規4項により,理事会の議を経て,以下の会員を除名することになりました。

なお,当学会では除名者をできるだけ少なくするため,対象者名簿を作成,資格審査委員,理事などを通じて本人と連絡を取るよう努めましたが,連絡をとることができず,やむをえず除名せざるを得ませんでした。