標記講演会が2019年12月5日に日科技連東高円寺ビルで開催された。今回は2018年度の日経品質管理文献賞の受賞者の仁科 健先生と川村大伸先生らによる講演会で、文献賞の著書「スタンダード品質管理」の主眼である統計的品質管理がテーマ。製品のばらつきを減らすことは、品質管理での永遠の課題であり、そのための体系について理論的かつ実践的な側面で講演いただいた。
第一部は愛知工業大学 仁科 健先生から、ばらつきからみた品質管理の体系を説明いただき、前半はばらつきとばらつき退治の体系化として、品質の3つのばらつき、ばらつき退治のための4つの対策。後半はものづくりを俯瞰したばらつき退治と関連するいくつかの課題として、4つの対策と7つの課題を説明いただいた。3つのばらつきとは「(1)市場での満足感のばらつき」 「(2)市場にでるまでのばらつき」「(3)市場に出てからのばらつき」で、ばらつきの原因は「(1)市場ニーズ」「(2)工程の5M1E」「(3)市場のノイズ」が挙げられる。4つの対策は「(1)結果にアクション(流出防止)」「(2)原因にアクション(再発防止、未然防止)」「(3)適応的未然防止(原因の状況に応じた条件変更)」「(4)因果関係にアクション(どのタイミングでアクション取るか)」の理論の提案があった。
第二部は実際のばらつき低減の活動事例として、名古屋工業大学 川村大伸先生とナブテスコ 小川文子氏から発表いただいた。川村先生は日本の強みを活かしたものづくりとして、データの共有・連携がものづくりを加速、BtoBの活性化が競争力強化の鍵との見解。特に多品種少量生産工程でのn数が少ないケースでのデータ解析手法を提案いただいた。これからのSQCは既存のSQC手法の発展と機械学習手法の包含が必要と結論づけられた。
小川氏からは加工や測定がデジタル化・非熟練化、図面の3D化・幾何特性を用いた国際標準化の課題の提示がされた。工程を立ち上げ、初期流動時に不具合を顕在化し量産開始までの改善を結果系、要因系を自動監視する手法が斬新で画期的であった。
澤村 祐一(三菱重工環境・化学エンジニアリング(株))