2019年6月14日(金)、大阪大学中之島センターにおいて関西支部主催の第135回講演会が開催され、71名の参加者が標題のテーマについて熱心に聴講した。
講演1は、「製造業におけるデータサイエンスの役割」と題した竹村彰通氏(滋賀大学データサイエンス学部長)による講演であった。ビッグデータは、21世紀の石油といわれるほど、価値の高い資源だとされるが、統計学部は日本では他国と比べて、非常に少ないという現状がある。滋賀大学では、社会のニーズを埋めるため、多くの企業や自治体と連携して、現実の問題解決を進めてきた。ビッグデータを分析するときの注意点は、現状のAIで得られるのは相関の情報であり、因果を示しているわけではないことがある。さらに、中間層数やノード数の大きい深層学習のモデルは基本的にブラックボックスであることが多く、予測はできるものの、説明はむつかしいとされた。
講演2は、「機械学習がモノ作りにもたらす変革あるいは原点回帰」と題して伊地知晋平氏(DataRobot Japan)から講演をいただいた。機械学習が得意とする課題は、判別、検知、分類、推定、予測といったものであるが、製造現場からよくある相談は、要因分析、最適化、因果分析といったいずれも機械学習にとっては「応用問題」となる課題が多い。昨今現場で取れる大量のデータを使って解析するのが課題解決の近道であるといった思い込みがあるように感じられるが、経験からするとドメイン知識(固有技術)の蓄積があるならそれらから導き出した因果仮説を計画された実験によってテストする方法をまず試した方が良い。製造現場では次のような場合に機械学習が有効だろう。1)固有技術の蓄積がない、2)因子が非常に多い、3)実験が困難といった場合である。特に因子が多数なケースでは多重検定のリスクを避けるため、 機械学習では一般的なブートストラップ法などで解析結果の再現性を検証できる。講演の後半には、半導体製造工場のデータを用いてDataRobotを用いたデモを見せていただいた。
最後に、活発な質疑応答が行われ、閉会した。
山田伊知郎(桃山学院大学)