伊藤 誠(安全・安心社会技術連携特別委員会)
標記シンポジウムが2018年12月22日に筑波大学で開催された。このシンポジウムは、日本原子力学会社会・環境部会、ヒューマン・マシン・システム研究部会、日本品質管理学会、日本人間工学会 安全人間工学委員会、筑波大学大学院システム情報工学研究科リスク工学専攻の共同開催であり、今回で第19回を迎えた。
今回は、「情報・知識の共有による安全・安心の確保」を主テーマとし、幅広い分野から話題提供がなされ、それに基づいたパネルディスカッションが行われた。
話題提供の1件目は、中央大学 中條 武志氏による「品質賞受賞組織に見る、情報・知識の共有による安全・安心の確保」である。デミング賞、日本品質奨励賞などの品質賞受賞組織は、情報・知識の共有によって、新たな顧客価値の創造や安全・安心の確保に成功している。この講演では、いくつかの代表的な事例を取り上げ、ICT技術の戦略的活用の様子などが紹介された。
2件目は、構造計画研究所 妹尾 義之氏による「災害時の安否確認システム−成功のポイントと難しさ」である。災害でインターネット接続網が寸断されたときに、スマホをピアツーピア的につなぐことによって、安否情報を伝えることができる仕組みをつくった事例をご紹介いただいた。
3件目は、東北大学 高橋 信氏による「制御システムセキュリティの重要性−CSSCの取り組みを中心にして」である。社会生活の根幹を支える重要インフラに対するサイバー攻撃によるリスクが重要になっている現状が紹介された。
続くパネルディスカッションは、筆者がコーディネータを務め、話題提供内容に対する質問をベースに議論を展開していく形で行われた。議論は多岐にわたったが、社会における安全・安心確保には情報・知識の共有が重要であるが、情報・知識の共有にもリスクが含まれることから、それらを総合的にとらえるものの見方、考察のフレームワークが必要であることをコーディネータとして実感した次第である。
ワークショップの内容は、報告書としてまとめられており、実費で入手可能である。