伊藤 誠(安全・安心社会技術連携特別委員会)
このワークショップは、日本原子力学会、日本人間工学会などとの共同主催によるものであり、原子力に限らず、様々な分野の安全・安心を確保するための管理技術やリスクコミュニケーションなどに関する議論を継続的に行っている。第18回目を数える今回は、「安全文化の醸成と全員参加の実現」をテーマとして、事例発表とパネルディスカッションを行った。
事例発表では、原子力分野から倉田聡氏(原子力安全推進協会)、医療分野から種田健一郎氏(国立保健医療科学院)、建設分野から小原好一氏(前田建設工業、本会会長)が登壇した。倉田氏は、原子力分野における安全文化についての取り組みと課題を紹介したうえで、安全を希求する組織文化として「安全文化」をとらえ、組織の文化を変えていくという視点を持つこと、そのためにマネジメントシステムに組み込むことの重要性を主張された。種田氏は、医療分野における安全文化野醸成のために「チーム」を機能させることの重要性を述べ、米国を期限とするTeamSTEPPSという訓練プログラムの導入、推進の事例を説明された。小原氏は、建設分野における安全を向上させるためのTQMの導入、推進を通じて全員参加の体制を構築していく事例を報告された。
パネルディスカッションでは、中條武志氏(中央大学)がコーディネータとなり、講師の3名に、五福 明夫氏(岡山大学)、木村 浩氏(パブリック・アウトリーチ)、飯塚 悦功氏(東京大学)の3名が加わり、安全文化をどう定義するか、安全文化の醸成のために全員参加が必要であるか、ビジネスの中でどう位置付けていくか、などという論点を中心に、フロアからの質問に答えつつ、パネリスト同士での意見交換が行われた。安全文化は結局のところスローガンに過ぎないのではないか、本当の意味で「全員」が参加するのは難しいのではないか、などといった本音ベースの刺激的な問題提起もあり、議論が尽きることはなかった。