中條 武志(安全・安心社会技術連携特別委員会)
2016年12月23日(金)の午後、65人が参加し、「信頼を得る方法」をテーマにワークショップが開催されました。これは、日本原子力学会の社会・環境部会とヒューマン・マシン・システム研究部会、日本人間工学会の安全人間工学委員会との共催で年1回開いているものです。
前半は、異なった領域の専門家からの「信頼(Trust)」に関する講演がありました。まず、社会安全研究所の首藤由紀氏から、信頼に関する技術・人材マップの作成の経緯とその中で関係者が相互に信頼している社会の状況を目指すべき姿としたことのご紹介と、福島事故以降のご自身の経験を踏まえて、信頼は獲得すべきものではなく、様々な取り組みの結果として得られるものであるという問題提起がありました。また、同志社大学の中谷内一也氏からは、社会心理学分野における従来の研究やご自身が行った調査結果を踏まえて、組織に対する信頼は能力認知(有能さ)、動機付け認知(誠実さ)に加えて、価値共有認知(自分と同じ価値観)が大きく影響すること、信頼が低い場合には価値共有認知の影響が大きいことの報告がありました。さらに、筑波大学の伊藤誠氏からは、自動運転に対する過信・不信を研究されている立場から、信頼とは何か、信頼が損なわれると社会のコスト負担が大きくなること、予想に反して盲信→確信→予測という順序となること、意見の不一致が放置されると不信が生じることなどの報告がありました。
後半は、東京大学の飯塚悦功氏、パブリックアウトリーチの木村浩氏が加わり、客観的な事実と信頼の関係、信頼を得る方法(自主的運命共有、魅力の訴求と限界の説明など)についてのパネル討論が行われました。分野ごとに状況が異なるため、結論を得るまでには至りませんでしたが、今後の実践と研究に向けて幾つかの重要な示唆の得られたワークショップでした。