2013年9月に竣工したヤマトグループ最大級の総合物流ターミナルで24時間営業の羽田クロノゲートを見学した。その良好な立地により陸海空のスピード輸送ネットワークと高付加価値機能を一体化した戦略的な拠点で、広く自社の物流サービスを広報活動の一環で紹介する、B-to-C企業らしい外部向け90分の見学コースが用意されている。
同ゲートウェイは、他の国内ゲートウェイやベースと呼ばれる複数の物流基地と連携するネットワークの重要なハブで、国際ネットワークはアジア向けには羽田空港経由沖縄、欧米向けには成田空港を拠点に繋がる。重要な“バリュー・ネットワーキング”の構想は、コスト、品質、スピードの3つの価値の相乗であり、どれかが欠けても機能しない。
近年のEコマースの進展による翌日配送の宅急便(ヤマト運輸の宅配便の商号)の需要拡大動向を受け、多頻度輸送で当日配送をも実現するしくみを構築中だが、この事はスピード輸送が標準となる進化し続ける(止まらない)物流改革を象徴する。
見学コースでは、クロスベルトソーターにより、荷物が行き先別に仕分けされるエリア等を紹介頂いた。見学中は多数の活発な質疑応答が行われた。
見学の最終エリアでは、今日的な映像によるしつらいのホールで、物流やヤマトに関するコンテンツを選択でき、FRAPSというピッキングによりノベルティ(お土産)を渡す工夫もこらされていた。
最後に、私は『クオリティマネジメント』(2002.7)で、ヤマト運輸の有富社長へインタビューを行った事があり、偶然にも因縁のある企業の見学だった。当時から本社オフィスは小さく、顧客(消費者)に近いSD(セールスドライバー)が主役のビジネスモデルであった。メーカー主導のSCMというよりデマンドチェーンマネジメント(DCM)を重視する事業戦略を継続実行する進化する企業である。グローバル化の波を受け、アジアにも翌日配送が当たり前になる日も来るだろう。
伊藤 由紀美(Y&I ジャパン)