2010年10月15日に、名古屋工業大学の加藤雄一郎氏による講演会が開催された。加藤氏はブランド戦略を専門としているが、企業ブランド価値創造に向けた経営システム最適化手法の開発をブランドTQMとして様々な発信を行っている。
加藤氏はブランド・プロポジションの設計について、現状態を理想状態に持ち込む際に、実現根拠を考慮する考え方を示している。そして、今回の講演会では究極的な理想状態と製品・技術の特徴との関係を、理想、要求・期待項目、品質要素、機能、部品機構、技術資産の6層構造で表すVBridgeというフレームワークも示している。
これは、マーケティングパラダイムがSellingからMarketingに移行し、さらにBrandingに、つまり「できたものを売る戦略」から「ニーズに合ったものを売る戦略」に移行し、さらに「売れ続けるための戦略」へと変遷し、マーケティングの強調点が“取引”から“関係性”に移行しているからであると主張している。
そして、企業ブラント価値を創造することの意義について、企業を取り巻く利害関係者を「価値を創る人」と「評価する人」に大別し、企業価値創造の担い手である顧客と従業員に焦点を当てて説明している。TQMにおいても顧客満足に焦点を当てて活動し、顧客の継続意向であるロイヤルティの重要性が論じられている。しかし、顧客の信頼を獲得するだけでは足りず、将来を見通した「将来期待」と「共創要求」が重要な要素であるとしている。
さらに、ロイヤルティを支えている「信頼」と「将来期待・共創要求」という時制の異なる要素を考慮して顧客関係性を構築するために、ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」を引用し、内発的モチベーションの重要性を示唆した。これらの講演内容は、今後のTQMの発展のために貴重な一石を投じており、素晴らしい講演会であった。
大藤 正(玉川大学)