近年の偽装問題に象徴される、企業の不祥事は後を絶たず、いま一度、経営のあり方を見つめ直してみる必要がある。関西支部では、会員の皆様に品質力・組織力向上に向けた経営の原点とリーダーの役割について、理解を深めていただくことを目的として、標記講演会を5月9日、中央電気倶楽部5階ホールにて開催した。講演者は、(株)デンソー相談役の岡部弘氏と大阪ガス(株)常務取締役の永田秀昭氏である。
岡部氏は、企業不祥事の根底にある倫理観に無理解な現代社会の世相とグローバルスタンダード経営への偏重、ものづくり軽視の風潮に警鐘を鳴らされ、当たり前のことをきちんとやっていく「当たり前スタンダード」こそが、いま最も必要な時期であり、企業経営の原点であるとの考えでお話頂いた。
マネジメントの本質は、リーダーが会社を永続させるためのビジョンをしっかりと描き、それを実行できる組織とマネジメントシステムを確立することと明快だった。また、永続する組織づくりには、人を育成すること、良いものづくりには、高度な技能者が不可欠である等、とりわけ、人材育成の重要性を訴えられた。一つひとつの言葉に、デンソーを世界企業に成長させた岡部相談役ならではの重みと説得力があった。
永田氏は、「技術者発想を捨てろ!(ダイヤモンド社)」の著者としても知られるが、この著書にもあるように、製造部門の責任者として、日々、トラブルゼロという呪縛におびえていた現場の意識を変革し、技術者の目を輝かせることに成功された体験を、それを可能とした「技術者をプラス評価する仕組みづくり」を中心に、ユニークな事例を交えながら、お話頂いた。
このプラス評価の導入により、現場の一人ひとりの技術者が強くなるだけでなく、現場を強くできるマネジャーが養成でき、また、個々人の能力も含めた現場の弱いところも見えてくる等々、大変有意義なご示唆を頂くと共に、テンポのよい話しぶりと相俟って、大いに聴講者の好評を得た。
小橋 一志(関西電力(株))