金融商品取引法の制定(2006年6月)により、2008年4月1日以後に開始する事業年度により、上場企業に対して内部統制報告制度が適用されることとなった。民間企業の統制システムの法制化という驚愕すべき事態に対して、当学会は、会員の皆様にその内容を理解いただくことを目的として、標記講演会を10月2日、(財)日本科学技術連盟本部講堂にて開催した。
講演者は、企業会計審議会の専門委員として意見書「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について」の起草に携われた青山学院大学大学院教授、町田祥弘氏、産業界からは元日産自動車(株)、磯部孝征氏である。
町田氏には、我国の金融商品取引法の成立の過程から統制システム構築における留意点及び構築に至るまでの多岐に亘り、最新動向を踏まえつつ要点をお話いただいた。
特に、本制度構築の鍵は財務報告の範囲の決定に合理性を求めること及びそのことにつき監査人とよく協議を行い、双方で合意を取り付けることの重要性並びに昨今の情勢による監査人の保守的なスタンス(例えば結果として文書化範囲拡大傾向)の対抗として、企業側においては自社のリスク認識の明確化を図り、監査人にアピールすることそして絶えず実施基準(意見書)に立ち戻って判断の是非を考察することの必要性を訴えられた。本制度導入にあたりコスト肥大化の話を耳にする折、コスト削減、労力低減の視点から大変有意義な示唆をいただいたものと思う。
磯部氏は、新会社法に定められた4つの目的のうち、(1)業務有効性及び効率性、(2)事業活動に関わる法令等の遵守に着目し、それらと品質保証の関わりをわかりやすく説明された。又設計・製造プロセスにおける可視化の必要性及び有効な監査のあり方など自論を展開され、聴講者の好評を得た。
芳野 康夫(アジア航測(株))