第271回事業所見学会は、7月6日重要文化財専修寺御影堂(三重県津市)平成の大修理現場において開催した。今回のテーマは、従来と異なり文化遺産の修理に焦点を当てて「文化財長期保存に向けた補修・復元管理」について企画した。参加者は、29名と少なかったが、女性参加者が8名と多く、例年にない見学会となった。
専修寺御影堂は、江戸時代の寛文6年(1666年)に建設された日本有数の木造建造物で、明治41年〜45年の修理以来の大修理が平成12年1月〜平成19年12月まで8年に渡って行われている。修理は、半解体修理と呼ばれる方法で、最初に建造物全体を覆う鉄骨造の素屋根を設けることから始まり、以降現在まで屋根等の解体が進んでいる。解体においては、各部材の破損状況を調査し、その履歴を記録するとともに、建造時の工法の調査も実施される。この結果を基に詳細な修理方針が決定され、具体的な修理が実行されることになる訳で、一般の建築物とは大幅に異なる工期を必要とする。また、修理後の耐用年数は150〜200年を見込む設計が実施されるそうで、一般の建造物とは異なる設計思想に文化財の貴重さを痛感させられた。
見学会では、現段階までに判明した事実の説明や、最初に実施された素屋根工事の記録が紹介された。素屋根は、1スパン4.5m高さ32.6mのメインフレームを13回、計58.5mスライドさせて移動するというトラベリング工事によって設営されたが、転倒防止等に細心の注意が払われて無事完了している。
修理現場では、日頃見ることのできない文化財の裏側まで見学することができ、7月の暑い中ではあったが、熱心な見学会となった。
古市 久男(新日本製鐵((株))
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