第71回講演会が平成11年5月21日(金)午後コミュニティプラザ大阪コンポホールで39名が参加して開催された.
今回の講演会のテーマは「厳しい状況の中でのものづくり〜海外におけるものづくり〜」で,森本亮造氏(靴太平洋人材交流センター)の「ものづくりのまえに人づくり」と西村治雄氏(松下電器産業梶jの「為替と人と材料の戦い〜海外におけるものづくり〜」の2講演が行われた.
森本氏の講演では,太平洋人材交流センターの紹介後,アジア諸国における海外進出の形態をはじめ,企業が海外進出する際に問題となる人づくりについての講演であった.
アジアは世界人口の6割の住む巨大市場であり,アジアから見た企業進出の魅力また進出企業から見た魅力など,さらには海外進出における新しい経営問題として
(1)日本的生産システムの海外移転 (2)労務・人事管理の現地適応があり,いずれも人的コンタクトが不可欠で,人類,宗教,ものの価値観が違う環境の中で日常作業プロセスの中にトレーニングを組み込む,社員のエンプロイアビリティを高める,フレンジ・ベネフィットの現地適応等の人づくりについて戦術をまとめられた.
特に,現地での人づくりは文化の違いが大きくOne Wayでなくコミュニケーションを含め経営諸施策の整合性を高めることが重要であると指摘され,相手国の文化を理解し「怒らず,焦らず,驚かず…」と結ばれた.
西村氏の講演では,松下電器グループの海外事業展開の歴史や根本的な役割,考え方についてご自分の経験談や事例も交えて講演され,(1)グローバルなものづくりの視点,(2)ものづくりの概念と構成要素,(3)為替と新製品開発との闘い,(4)為替と材料の闘い,(5)人との闘い(現地化)および(6)グローバル化の評価の項目について興味ある講演であった.
海外におけるものづくりにおいては,現地でのものづくりの考え方,材料の入手方法と品質,製品品質についての文化の考え方など詳細な生産システム構築と品質保証のグローバル化への講演であり,松下グループのグローバル品質は「どこの国でつくっても同じものがつくれる」体制が見えてきたこと,Second
Generationが誕生したと強調された. また事業部のグローバル化の格差の是正,地域による支援の格差,QA体制の高位平準化が課題であると結ばれた.
両講演とも厳しい日本の社会状況の中で,企業の海外進出に対する人づくり,ものづくりという今回の講演会のテーマに即した有意義な内容の講演であった.
坂元 保秀(大阪短期大学)