第70回講演会が4月27日,名古屋の中電ホールにおいて2名の講師を招き約100名の参加者を得て開催された.
■講演1.缶コーヒー“BOSS”の企画・開発 高橋
賢蔵 氏 サントリー(株) 商品開発研究所 課長
缶コーヒーの新製品開発プロジェクトチームのリーダーである講師より,カスタマーインに徹して大幅な売上増を達成した活動についてお話頂いた.缶コーヒー市場は,多い時には年間10種類以上もの新製品が発売される競争の激しい市場であるが,特に市場調査,ユーザー調査に力を入れた活動を行った.ユーザーをヘビー,ミドル,ライトに区分,ヘビーユーザーのユーザー像を明確にし,飲み方の実態調査,本音を出させる座談会を通じコーヒーの選択基準,望んでいる味などを調査した.ここで得られた知見は,従来の同社,あるいは競合他社が向かってきた方向とは異なる部分があった.メーカーの思っているユーザーニーズが真のお客様ニーズとずれている恐れのあること,真のニーズを把握するためのカスタマーインの活動が如何に大切か示唆に富む講演であった.
■講演2.自動車部品のコンカレントエンジニアリング 花井嶺郎氏 (株)デンソー 取締役
顧客ニーズに応える製品をタイムリーに世の中に提供する事の重要性は,益々強くなってきており,各社がコンカレントエンジニアリング(CE)に取組んでいる.講師は,製品開発と緊密に連携した生産準備活動をCEという言葉が世に出る10年以上も前から実践されてきた.その展開状況と今後の更なるレベルアップに向けての展望についてお話を頂いた.“開発の最初から”の生産技術部門の知恵の織込み,設計による組立性評価法の確立,“同時並行”業務のマネジメント方法の開発,“一貫性”を持った全体最適化のための開発体制と,製造サイドも含めた1200以上もの端末を結んだ情報の共有化システムなど具体的な展開事例が紹介された.また,今後はコンピュータ技術の向上により,一層の統合化,迅速化が期待できると共に,それらを使いこなし,成果へと結びつけることのできる人材育成も重要であると展望された.
八重口 敏行(トヨタ車体)