第243回事業所見学会は,9月11日(金)に「基本の実行(良い原料から良い製品を)」をテーマに開催された.
キューピーマヨネーズの名前は広く知られていて,あまりにも私たちの生活の中にとけ込み,今回のように事業所見学会というものがなければ,マヨネーズが加工食品であるという意識さえ持たずにそのままそっと食卓の上にいつづけていくと思われた.
見学者はわれわれ事務局3名を含めて,総勢45名になっていた.
石村工場次長による工場概況説明の中で,キューピーマヨネーズの原料の70%が植物性サラダ油であると知って大変驚いた. あとは,15%が卵黄,残りの15%が酢および食塩で占められている.
卵黄は低温殺菌(68℃)で処理され,サラダ油と酢などでかき混ぜながら乳化させられる. キューピーマヨネーズはほとんど生だ!そのため,良い原料を仕入れることに力が注がれていた.
特に鮮度が高く品質の良い卵を購入するために産地直送を基本とし,取引先の養鶏業者との信頼関係を重視して,年2回の訪問を欠かさずおこなっているそうである.
工場見学の時に,自動的に卵を割り,卵白と卵黄を分離していく割卵機の様子は強烈であった. 分離の効率は卵の鮮度に依存し,キューピーマヨネーズは卵黄しか使用しないために,鮮度が卵の最重要品質項目の一つになっている.
割卵機からでた卵の殼は捨てられることなく,健康食材などに利用される.
キューピーマヨネーズのプラスチック容器にも驚かされた. あの小さな容器の容器壁が3重になっているのである. この多層構造のために,容器はほとんど酸素を通さず,品質の劣化防止に役立っていることを,高山品質管理課長の品質管理実施状況説明の折りに知った.
見学会での最後は杉村HACCP担当課長による伊丹工場でのHACCPプロジェクトの取り組みの説明であった. 総合的衛生管理という立場から,トップダウン型で,一般的衛生管理(PP)を基礎として位置づけ,中間に危害分析(HA)と教育・訓練(E&T)を置き,中心にHACCP実行を据えるという枠組みでの明快な説明があった.
今回の事業所見学会は,加工食品業界のこれからを見通せる指針となる内容であった.
磯貝 恭史(大阪大学)