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第69回講演会(本部)ルポ

アップデート:1999/2/23 ルポの一覧に戻る
「甦れ品質の日本」 第69回講演会(本部)は「甦れ品質の日本」と題して,日本の品質管理に対する意見を日本経済新聞社編集局産業部次長・徳田 潔氏,東京大学経済学部教授・梅沢 豊氏の有識者お二人に語っていただき,約100名の参加者と共に有意義なひとときを過ごした.

徳田氏は元日経ビジネス副編集長で,本年3月9日号の同誌の特集記事「甦れ品質の日本」を担当され,米国,日本各地での幅広い取材経験に基づいて,ジャーナリストの立場から魅力的なお話を展開された. MB賞やGEのシックスシグマに代表される米国での活発なQC運動が競争力の復活を支え,しかもそれが単に日本のQCの焼き直しではなく,わかりやすさ,評価しやすさやCSの観点を強調したことにあることを示唆された. また,最近のGE中央研究所での取材エピソードを交え,シックスシグマ運動がGEの品質改善運動から企業革新運動にまでなっていること,社内の資格制度を作り徹底させていること,DFSS(Design For Six Sigma)なる,筆者らのP7(商品企画七つ道具)に類似したシステムを社内で普及させ,中央研究所が社内コンサルタンティング事業を行っているなどを紹介された. 今度は日本が逆襲する番であるとし,ソフトウェア分野,トヨタのSQC,タグチメソッド,P7などにその糸口があることを提起された.

梅沢氏は『経営学者の立場からみる「TQM」:−応援者からの提言』と題され,経営学者として最近のTQMの動きについて意見を述べられた. まず経営学上の用語の正確な定義を解説され,TQM委員会編『TQM−21世紀の総合「質」経営』(日科技連出版)が提示した,経営に貢献しうるTQM構築への熱意を高く評価しつつも,中核となる諸概念があいまいで整理されていないと指摘され,いきなり企業・組織の「質」の向上を目指す(良「質」経営)よりは,良質の製品・サービスを生むプロセス・システムに主眼を置くマネジメント(「質」本位のマネジメント)の方がTQCの拡張としてはナチュラルではないか,と述べられた.

また,TQMは経営プロセスと経営リソースから成る経営システムを対象とするが,経営システムの質とは何か,またそれを競争力(具体的には技術力,対応力,活力)とどう関係づけるか,厳しい経営環境の中でそれで十分効果的なのか明瞭でないと言及. また,「質」はコスト,納期,効率などに比しより根元的であるがゆえに組織の求心力が生ずるが,他の多くの新しい経営手法も結局は経営の質の向上を目指しており,厳しい経営環境下でTQMが採用されるためにはより差別化する必要があること,それには経営とは何か,その質とは何か,という本質をより明確にすること,「強い会社」にTQMがどれほど貢献しているかを明らかにすること,より戦略面や商品開発面の検討を進めること,文系の実務家や研究者の比率を高めることなどが求められるとされた.

QC界の内部からでは得られない極めて貴重な情報と意見をお二人からいただき,参加者との質疑応答も大変積極的に対応していただき好評であった. このような講演は学会ならではのものであり,今後の参になりそうである.

神田 範明(成城大学)

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