さる7月2日,第252回事業所見学会が天狗缶詰且O河工場で「HACCPによる品質管理」をテーマに50名が参加して行われた.工場のある豊橋地区は全国のうずらたまごの70%を産出するというめぐまれた立地条件にある.その地の利を活かして天狗缶詰且O河工場はうずらの水煮缶詰を主に生産している.材料は産卵して72時間以内の新鮮な食材を使用して厳重な受入検査のもとに缶詰加工をおこなっている.
今回のテーマであるHACCP(Hazard Analysis Critical Control Point System)とは「危害分析・重要管理点方式」のことである.3年前に世間を騒がせた0157による食中毒はまだ記憶に新しい.
HACCPは0157のような細菌の発生,混入を防ぐための品質管理のやり方としての最終製品の検査によるではなく,原材料の受入れから出荷に至るまでの各工程において管理点を定め危害の発生を未然に防ぐための手法である.いわば食品業界のISO
9000といってもよい.工場内は清潔作業区域,汚染作業区域に分かれ,清潔ゾーンの庸圧化により清潔ゾーンに空気が流れ込まないようになっている.さらにサッシ枠,動力,制御盤などにテーパ加工を施すなどして埃の堆積を防止するなど異物が混入する可能性を徹底して排除している.加えて高度に自動化された生産ラインではコンピュータを活用した衛生管理システムによって,工程を監視,記録することで異常に対する迅速な対応を可能にしている.「HACCP対応の工場にすることでユーザーに安心感を与えたい.」それが天狗缶詰鰍フ願いである.その思いが通じたのか営業が1年間かけても採用されなかった商談がHACCP対応工場となると同時に成立したという事例を聞かせていただいたときには市場の衛生管理に対する要求の高さに痛感した.
参加者の興味も高く,質問が40分間続き,急きょ予定を変更したほどであった.衛生管理に優れた工場であることはユーザーの満足はもちろん,働く人の快適性を高め働きがいをも満足させる.このことを肌で感じた見学会であった.
永井利孝(アマダワシノ)