第232回事業所見学会が,9月2日,神戸市六甲アイランドに日本本社とテクニカルセンターを置くP&Gファー・イースト・インク社(以下,P&G社と略す)の明石工場で井上公秀工場長を始めとして多くの従業員のご協力を得て,参加者39名で開催された
同社は1837年に米国オハイオ州シンシナティで創業されたP&Gを元とし,1972年には日本法人を設立し,モノゲン,チアー,パンパースなどを提供してきた.
同社の全世界の従業員数は約10万人である.日本法人のP&Gは国内4工場,7事業所で約5000人であり,1983年に創業を開始した明石工場では現在約800人の従業員によりパンパース,ウイスパー,アテントなどの紙製品を生産している.
同工場は1993年にTPMを導入し,従来からのIWS(Integrated Working System)活動とあいまって効果を上げ,1996年には優秀賞を授与されている.
同工場の品質保証システムは,原料メーカ・製造工程・製品保管倉庫・消費者に大別することができる. 例えば,原料はメーカのデータにより受け入れするようにしており,その品質システムのチェックを年1回ないし2回,監査プログラムに従って実施している.
このように各工程での定期的な監査が世界で約150名のP&Gの監査員により行なわれている.
製造現場の見学におけるパンパース,ウイスパーのラインでは原料の紙ロールから製品がパックされて出てくるところまで全自動で製造され,不良品もビジュアルモニターセンサーにより識別し自動的に取り除かれている.
また,工程管理のためのデータも定期的に自動抜取りを行い,目視検査を行うとともに物性検査などはQA室で行われている. これらの結果は全てオンライン化されており,現場でいつでも必要な情報をコンピュータの画面に表示することが出来るようになっている.
これらの情報により,倉庫に入った製品の中で合格品だけがピッキングリストに従って出荷される仕組みになっている. 以上のように,グローバル企業として,原料納入から消費者までの一貫した世界共通の品質保証システムを提供しているこの工場から学ぶことが多く,有意義な見学会であった.
宮下 文彬(関西大学)