JSQC 社団法人日本品質管理学会
HOMEENGLISH 入会案内 お知らせ 記録・報告 定期刊行物 論文・記事募集 関連情報 リンク コミュニケーション・メーリングリスト
学会誌「品質」
JSQCニューズ
Copyright (c); 2001 JSQC

JSQCニューズ 1998年2月 No.202

ニューズ・トピックスの一覧へ戻る
巻頭言「法制度の変革と製品安全」
私の提言「新たなクオリティの模索」

・PDF版はこちらをクリックしてください → news202.pdf


■ 巻頭言  法制度の変革と製品安全

中央大学 宮 村 鐵 夫
はじめに

新民事訴訟法の施行,製品安全規制の見直しの動きなどについて紹介し,製品安全についての自己責任・情報開示の重要性が一層鮮明になってきていることについて喚起したい.

新民事訴訟法と文書管理

本年1月1日から70年ぶりに全面改訂された新民事訴訟法が施行され,1995年7月1日施行の製造物責任法と関連して,製造物責任を巡る司法による紛争解決に大きな変化が予想される.

民事訴訟法改訂の趣旨は,

  1. 証拠が一方の当時者に偏在する事件における証拠収集手段の充実
  2. 争点等の整理に向けて当事者が十分な訴訟準備を可能にする証拠収集手段の充実
である.このため,
  1. 文書提出義務の範囲の拡充
  2. 当事者照会制度の創設
による証拠収集手段充実がはかられ,文書管理が一層重要になってきている.

文書提出義務範囲の拡充

文書提出義務範囲については,
  1. 文書提出義務の範囲の拡大
  2. 文書の一部の提出命令
  3. 文書特定のための開示請求手段
  4. イン・カメラ手続の新設
  5. 文書提出命令違反の効果
について改訂・新設が行われ,旧法と考え方が大きく変化している.

 例えば,文書について一般的提出義務を定め,提出を免れる場合を

  1. 刑事訴追や有罪判決を受けるおそれのある事項が記載されているとき
  2. 職務上知り得た事実で黙秘すべき事項,及び技術又は職業の秘密に関する事項であって,黙秘の義務が免除されていないものが記載されているとき
  3. 専ら文書の所持者の利用に供するための文書
とするネガティブ方式で規定し,旧法のポジティブ方式と異なっている.

したがって,ISO9000シリーズの品質システムに基づき作成・保管している文書は提出義務があり,廃棄手順の透明化と厳格な履行を含む文書管理が一層重要になってくる.

当時者照会制度の創設

今回新しく創設された制度が,アメリカのディスカバリーに類似した当事者照会制度である.これは,
[1]当時者が,[2]主張又は立証を準備するために必要な事項について,[3]相当の期間をさだめて,[4]相手側に回答を,[5]文書で紹介できる制度である.

除外理由については,下記の項目

  1. 具体的又は個別でない場合
  2. 相手方を侮辱し,又は困惑させる照会及び既にした照会と重復する場合
  3. 意見を求める照会
  4. 相手方が回答するために不相当な費用または時間を要する照会
  5. 証言拒絶事由と同様の事由のある事実についての照会
を定めている.この制度を活用した当事者間の事前準備により裁判の争点を明確にして集中審理を行い,裁判の迅速化を図ることを狙いとしている.
製品安全規制の見直し

通商産業省では,昨年3月より商務流通審議官の私的研究会として製品安全研究会(筆者が座長)を設置し,電気用品取締法など通商産業省所管4法の基本的な見直しの方向について検討を進めている.最終的なまとめは本年2月に行う予定であるが,今までに
  1. 技術基準を性能規定化し,構造・形状などへの基準の具体化は,JISなどを活用し,製造業者自らの責任で実施
  2. モニタリング,製品事故情報の公表,回収などの事後規制についての処置の拡充
  3. 検査のワンストップサービスの実現
などが議論にのぼっている. すなわち,製品安全に関して企業自らの主体的な取り組みを求め,安全にかかわる問題が発生した場合には,行政当局が強制回収命令などの事後処置を迅速に行うというように,従来の事前規制から事後規制へ重点を移行する方向である.
おわりに

法規制の見直しの下で,製品安全についても作り手のアカウンタビリティが重要になってきている.したがって,製品安全の基本方針と製品・技術開発への浸透・実践への具体化が急務となってきている.

■ 私の提言  新たなクオリティの模索

NX運動推進室  吉澤 正孝
昨今,日本経済の閉塞観が漂っている.マクロ的には,バブル期に行ったことの清算をしているといわれている.東洋の陰陽思想でないが,陽の極から陰の極に向かって反転作用がおきているのであろうか. 人間が営む社会も巨大なるシステムであり,小さな揺れの影響が時として結果を大きくばらつかせるものである.現在の閉塞観はバブル期の清算もあろうが,金融・サービス業に対する自由化の流れが根底にあることも理解しておく必要がある. これらの潮流は,第二次産業に対しても新たなるビジネスの機会でもあるが,金融・サービス業だけでなく広く教育,医療,公的サービスも含めての自由競争時代が到来しつつあるものと理解している.

日本の品質管理分野における歴史を振り返ってみると,鉄鋼の自由化,自動車や建設機械の自由化,そして電気業界の自由化また70年代に訪れた二度のオイルショックなどと業種,形態は変われど何度となく同様な危機がおとずれ,それに対応してきた. それには,技術,マネジメントなど企業を運営する上でのさまざまな工夫がなされ,素晴らしい方法が開発され,実際に応用され成果を生んできた.

現在の品質管理に対する期待は,これらの潮流にたいして,新たなる答えを要求しているものと考える.今まで得られた知識を基本に新たなる品質経営の方法の概念とそれを展開する方法論の確立が必要な時期にきていると考えている. すでにアメリカのマルコム・ボルドリッジ賞や,ヨーロッパ品質賞に代表される,国家レベルの品質賞の基本コンセプトは,品質に対するパラダイムシフトを起こしている.

企業を取りまくステーク・ホルダーの面から価値を見いだし提供し,如何にその満足度を向上させるかの視点にいれた経営としてのクオリティ(品物の質でない)の向上に取り組んでいる. 今後,これらを参考にするとともに,今まで創造されたマネジメントに関する方法などを原点にもどり見直し,要求に答える必要があると考えている.


このページの最上部へニューズ・トピックスの一覧へ戻る

--------The Japanese Society for Quality Control--