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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2019年9月 No.375

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■トピックス:JSQC規格「新製品・新サービス開発管理の指針」の発行に当たって
■私の提言:働きがいと業務機能展開
・PDF版はこちらをクリックしてください → news375.pdf

トピックス
JSQC規格「新製品・新サービス開発管理の指針」の発行に当たって 

原案作成委員長 永原 賢造

 本規格は、品質保証の体系的な活動の実施に当たって中核をなすもので、あらゆる組織で活用いただける。

規格のねらい
 経営環境が変化している中にあって、組織が発展していくには、顧客・社会のニーズを把握して新たな価値を創造し続けていくことにある。
 このための活動が「品質保証」であり、当学会では、(1)顧客・社会のニーズを把握し、それに合った製品・サービスを企画・設計し、これを提供できるプロセスを確立する、(2)ニーズが満たされているかどうかを継続的に評価・把握し、満たされていない場合には迅速な応急対策・再発防止対策を取る、および、(3)顧客・社会との約束として明文化し、それが守られていることを証拠で示し、信頼感・安心感を与える、これら(1)~(3)を体系的に行う活動と定義している。
 しかし、ISO9001の普及とともに、品質保証が(3)部分の狭い意味で捉えられることが多くなった。このため、新製品・新サービス開発管理のねらい・内容について、十分な理解のないまま間違った視点で取り組んでいる組織も少なくない。
 そこで、品質保証の理解をより確実なものとし、顧客・社会のニーズに基づく価値創造が適切に行われるようになることを目的に本規格を制定するに至った次第である。

計画から発行に至る経緯
 2016年11月から計画の検討が始まり、標準委員会で審議・承認を経て、産学原案作成メンバー12名(中部、関西支部からも参加)による原案作成が2017年3月よりスタートした。
 都合16回の委員会を重ねて原案ができあがり、その後、様々な分野の代表からなる審議委員会での審議を経てパブリックコメントの募集が行われた。35件のコメントが集まり、これらに対する対応が審議され、最終案がまとまった。これが、2019年5月の理事会で承認され発行に至った。

規格の構成と内容
 この規格の第1~3章は、「適用範囲」、「引用規格」、「用語と定義」となっている。また、第4章の「新製品・新サービス開発管理の基本」では、次の3つを解説している。

  1. TQMにおける新製品・新サービス開発管理の役割
  2. 顧客価値創造の基本的な考え方
  3. 新製品・新サービス開発管理における重要なマネジメント活動

 第5章では、「重要なマネジメント活動の進め方」と題して、4章の(3)項で示した次の10項目についての推奨事項を解説している。

  1. 開発プロセスの見える化
  2. 新製品・新サービスの企画と潜在ニーズの把握
  3. プロジェクトマネジメント
  4. ボトルネック技術の特定とブレークスルーの実現
  5. 設計における標準化
  6. デザインレビュー
  7. ばらつきに対して頑健な設計
  8. 部門間連携と情報・知識の共有
  9. 初期流動管理、市場・客先における品質情報の収集・活用
  10. 新製品・新サービス開発プロセスの見直し・改善と顧客満足度調査

 最後の第6章「新製品・新サービス開発管理のためのツール」では、活用が期待されるツール類を解説している。

  1. 品質機能展開(QFD)
  2. 商品企画七つ道具
  3. 実験計画法・パラメータ設計
  4. FMEA・FTA・ワイブル分析
  5. CSポートフォリオ・T型マトリックス

 なお、本規格では、「組織」という言葉を製品・サービスの提供に関わるあらゆる部門や会社群を含む意味で用いている。これは、新製品・新サービス開発管理には、多くの部門や企業の連携が必要であることを強く意識したものである。
 少しでも多くの組織で本規格を活用していただき、顧客・社会のニーズに基づく新たな価値の創造に取り組んでいただければ、本規格作成に関わったメンバーとしてこの上ない喜びである。

※本規格講習会を次の通りに計画しており、多くの参加をお待ちしています。
 ・日時:10月28日(月)13:00~17:30
 ・会場:日本科学技術連盟東高円寺ビル


私の提言
働きがいと業務機能展開

コニカミノルタ(株) 原賀 秀昭

 「働き方改革」という言葉をテレビや新聞で聞かない日は無い毎日ですが、その目的は、多様な働き方を選択できる社会を実現して労働生産性を向上させることが全面に押し出されているように思います。確かに、「働く環境の改善」も大切ですが、それと同時に、ひとり一人が「働きがい」を持つことが重要と思われます。
 皆さんは、イソップの寓話「三人のレンガ職人」をご存知でしょうか?旅人がある町を歩いていると、重たいレンガを運んでは積みを繰り返している3人のレンガ職人に出会いました。
 そこで旅人は「何をしているのですか?」と尋ねました。
 すると、1人目は、「見ればわかるだろう。親方の命令でレンガを積んでいるんだよ。もういい加減こりごりだ」と答えました。2人目は、「レンガを積んで壁を作っているんだ。この仕事のおかげで家族を養えることに感謝している。」と答えました。3人目は、「レンガを積んで、後世に残る大聖堂を造っているんだ。こんな仕事に就けてとても光栄だよ。」と答えました。
 私は、品質機能展開(QFD)のひとつである「業務機能展開」を応用して、業務機能と目的・目標を関連付けることにより、業務の意味を見える化する取り組みを続けてきました。業務機能は、「〇〇を△△する(対象と動作)」で表現され、3人のレンガ職人の場合「レンガを積む」「壁を作る」「大聖堂を造る」が業務機能です。そして、1人目の目標は「無し」、2人目の目標は「家族の幸福」、3人目の目標は「社会貢献」です。
 もうお分かりいただけたと思いますが、目標によって仕事の意味づけが変わり、業務機能表現も異なってきます。
 そして、目標を昇り詰めていくと、3人目のレンガ職人のような共通善(common good)に繋がり、組織の理念・ビジョンと個人の自己実現目標がこのレベルで一致できた時に、内発的動機のもとで業務を通じて最高の働きがいを感じることができると思います。
 この実践には、組織および自分自身の「善い目的」まで遡った目標展開と、その実現のための業務機能展開を行ったうえで、二元表を使って目標と業務の紐づけを行うことで、ひとり一人が、「今の業務は何のために行うのか」「為すべき業務はこれで良いのか」を突き詰め、組織のビジョンと自身の自己実現目標と重ね合わせながら、仕事の意味づけをしっかりと行うことが有効と考えます。


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