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JSQCニューズ 2018年12月 No.369

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■トピックス:品質工学会との共同研究会始動
■私の提言:AIと人間性尊重
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トピックス
品質工学会との共同研究会始動

独立行政法人統計センター 椿 広計

 2018年10月30日、JSQC生産革新部会の新研究会、「商品開発プロセス研究会」第1回研究会が、日本規格協会で開催されました。委員自己紹介に続き、近岡淳氏(近岡技術経営研究所)が研究目的、山田秀氏(慶応大学)がJSQC規格の体系と「新製品開発の指針」案、椿がISO TC69/SC8「新製品・新技術開発加速技法」が開発したISO 16355シリーズ「新製品・新技術開発プロセス」、田口伸氏(American Supplier Institute)がDFSS(Design For Six Sigma)の概要を紹介しました。新研究会は、JSQCと一般社団法人品質工学会(Robust Quality Engineering Society、 以下RQES)が、両理事会の議を経て立ち上げた共同研究会で、二学会共同研究会は、JSQC・サービス学会両理事会で立ち上げた、サービスエクセレンス部会の「サービスのQ計画研究会」に続く二例目です。RQESは1998年に創設され、JSQC名誉会員だった田口玄一氏が創生したタグチメソッドを基に、技術開発戦略などの展開を目指してきた学会です。1990年代までは、JSQCにも「パラメータ設計研究会」などタグチメソッドの研究会が存在し、品質誌にもその種の特集が組まれていました。しかし、RQES立ち上げ後、両学会の交流はありませんでした。
 2年前JSQCとRQESとの両学会理事だった、藤本眞男氏(当時、日本規格協会)から、Qに関するオールジャパンの連携を目指す JAQ運動として、品質系2学会を繋ぐ研究活動開発提案を頂戴しました。その後、谷本勲RQES会長(アルプス電気会長)、近岡RQES理事と会談し、顧客志向商品開発に関わる研究会の立ち上げに合意しました。私の会長退任後、 JSQCから椿、山田理事(47年度研究開発担当)、大藤正氏(玉川大学)、永井一志氏(玉川大学)、RQESからは近岡理事を中心に事務機器業界を中心とする幹部と、第47年度準備会合を続け、研究会立ち上げ方針を議論しました。研究目的は、商品開発に資する汎用的な技術体系の構築、その産業界全般への発信、更に日本主導の標準化活動推進としました。これにより、社会の生産性向上とQuality Excellenceの革新に資することができると考えました。新研究会は、個別の管理技術を研究対象とするのではなく、多様な管理技術をモジュールとした効果的、効率的な商品開発プロセスを迅速に設計・実装し、開発プロセスを的確にマネジメントする総合的経営技術の確立を研究します。初年度は、両学会の強みを把握した上で、商品開発で活用される汎用技術・管理技術を整理し、その効用・問題点を分析します。第2年度から第3年度にかけては、整理した汎用技術・管理技術の体系化モデルを考案します。モデル対象業種を当面事務機並びに自動車の2業種とし、協力企業を発掘し、実践の中で更なる課題抽出します。また、新たな汎用技術・管理技術体系を考案し、成果としてまとめ、 来年以降、山本渉氏(電気通信大学)が議長に就任するISO TC 69/SC8「新製品・新技術開発加速」や、田口氏を主査に推す国際的な動きが加速するTC 69/SC7 DFSS(Design For Six Sigma)等の国際標準化活動で、研究成果を万全に活かせればと考えます。
 こうしてRQESでは9月、JSQCでは11月の理事会で3年間の研究会設置が承認され、総勢22名の研究会委員が指名されました。JSQCは管理技術を開発してきた学が中心。RQESは、技術開発に携わってきた産業界中心、それに日本規格協会、日本科学技術連盟の委員が加わるという構成になっています。第1回研究会でJSQCの研究会としての主査は椿が、幹事は山本氏が、RQESの研究会としての主査は近岡理事が、幹事はJSQC会員でもある細川哲夫氏(リコー)が務めることになり、1-2か月に1回、両学会の持ち回りで研究会活動を進めます。
 今後、シンポジウムなどを企画したり、両学会誌への報告を行ったりして、両学会会員に研究成果を還元したいと考えます。JSQC会員の皆様方には、何卒今後の商品開発プロセス研究会活動へのご意見などお寄せいただければ幸甚です。


私の提言
AIと人間性尊重

鞄科技連出版社 戸羽 節文

 気になることがあって、石川 馨先生の『日本的品質管理<増補版>』を読み返してみた。本書は1984年に刊行されたが、その翌年春の入社内定を受けた私に、当時の取締役から「これから品質管理に携わる仕事をするのだから、まずはこの本を読みなさい」と渡された本である。
 もう30年以上も前に出版された本であるが、今の時代も色褪せない、光り輝く言葉があちらこちらに記されている。企業経営の目的は、(1)人、(2)品質、(3)価格・原価・利益、(4)量・納期として、まず第一に「人」が挙げられ、「経営で最初に考えなければならないのは、企業に関係する人間の幸福である。企業に関係する人間が幸福になれないような、幸福と思えないような企業は存続する価値がない」と書かれている。そして、その「人」とは、従業員、消費者、株主の順である。「まずは従業員が適切な収入を得て、人間性が尊重され、楽しく働くことができ、幸福な生活が送れるということである。この従業員の中には、その企業に関連する外注企業、販売・サービス企業の人たちも当然含まれる」とある。
 現代は、AIやIoT、ビッグデータの活用によって、企業・組織も社会も大きく変わる時期にある。日本経済新聞によると、「経済協力開発機構(OECD)は、2030年には32カ国の職業の46%、2億1千万人の仕事が、AIやロボットの影響を受けると試算している。人は新しいアイデアや技術を生むことが使命となる。企業も社員が創造的な仕事ができるように根底から変わらざるを得ない」とある。
 こうした変革期にあって忘れてはならないことは、AI、IoT、ビッグデータは手段であり、道具であって、主役はあくまでも人であり、人間性尊重の理念である。人が中心の企業・組織であり、社会であるということである。
 AIに人が支配された世界を描いた映画『ターミネーター』の舞台は2029年である。私たちは、この物語を現実のものとしてはいけない。


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