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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2012年 6月 No.317

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■トピックス:信頼性・安全性計画研究会の活動報告
■私の提言:科学的先手(SENTE)管理のすすめ
・PDF版はこちらをクリックしてください →news317.pdf

トピックス
信頼性・安全性計画研究会の活動報告

筑波大学 伊藤 誠

 信頼性・安全性計画研究会は、品質と安全性に関するトラブルが様々な分野で発生してきた社会情勢を踏まえ、2006年に発足したものである。参加メンバーは、品質管理、信頼性工学、ヒューマンファクター、等々様々な分野から産学の技術者、研究者が集結している。会合はほぼ月に1回、定期的に開催し、信頼性・安全性を確保するための活動の体系化と具体的な方法論の開発などについて取り組んでいて、第1期の成果は品質誌38巻第4号において特集記事としてまとめられている。現在、2期目の最終年度である。

 第2期では、次世代品質信頼性情報システム(Quality and Reliability Information System :QRIS)のフレームワークの体系化と、具体的な方法論の構築に重点を置いて2009年11月より活動を開始した。基本的な考え方については、活動報告の第1報として第92回研究発表会で報告しているが、概略としては、製品の稼働状況をリアルタイムにモニタリングし、シミュレーションに基づいて故障の予測を行い、顧客別にきめの細かいリスクコミュニケーションや保全を行おうとする、次世代型の品質・信頼性確保のフレームワークである。
 ところが、活動を開始して早々、製品の安全性に関するリコール問題が様々な分野で顕在化するところとなった。これをうけて、グローバル化が進む企業活動の中で信頼性・安全性を確保するために取り組むべき課題について、本研究会として見解をまとめておくべきであるとの認識に至り、そのための検討を行った。その結果は、研究会活動報告第2報として、第40回年次大会にて報告をしている。論点はいくつかあるが、大事なポイントとしては、新技術の導入に伴い発生しうるトラブルをしっかりと予測するとともに、どのように製品が使われているのか、文化的な背景も踏まえつつ市場のモニタリングに注力することが重要である。こうしたことを実践していくためには、やはりQRISが有効であると考えられる。
 リコール問題に対する取り組みがおおむねひと段落し、元の活動に戻り始めたところで、2011年3月の震災が発生した。伊藤の所属する大学も、比較的軽度ではあるが被害を受け、研究会としての活動は一時ストップした。なお、研究会の活動は行えていなかったものの、本学会ウェブサイトに設置された震災支援情報のページの立ち上げには、本研究会の主力メンバーが多数参画したことを述べておきたい。その間、2011年5月に本学会と応用統計学会の共催による「震災支援懇談会」が開催され、本研究会に対して、巨大インフラ(高速鉄道・高速道路等)への未然防止、ならびに、太陽光発電システムの信頼性と保全性について検討することが要望として挙げられた。応急的な対応を終えたころから研究会の活動を再開した。そこで討議されたテーマは、災害に負けずに、信頼性と安全性を確保するにはどうすればよいかというものである。本研究会としては、起きてしまったことへの批判ではなく、未然防止こそ重要であるとの視点に立ち、次に備えるための基本的な考え方の再構築などに取り組んできた。その検討状況の一端は、研究会活動報告第3報として第41回年次大会で発表してあるほか、2012年5月の第98回研究発表会でも、続編を第4報として発表している。ただし、取り組まなければならないことはまだ山積している。なお、学会を横断する組織である「横幹連合」でも、震災克服研究に関する取り組みが最近始まった。本研究会は、横幹連合の取り組みにも積極的に参画し、貢献していこうと考えている。
 振り返ってみると、さまざまな情勢に振り回されて、常に後手後手となってしまっている点が残念でならないが、学会員の皆様、ひいては社会全体に貢献できるよう、微力ながら今後も活動を継続していく所存である。会員の皆様のご協力が得られれば幸いで ある。


私の提言
科学的先手(SENTE)管理のすすめ

神奈川大学経営工学科 中島 健一

 統計的品質管理は、製造業はもとより、サービス業等を含め、あらゆる分野において現場の問題、経営的課題を顕在化し、それを解決する手法として体系化され、定着が図られてきました。
 「ものづくりの基本は品質管理」であることは、ものづくりの現場を出発点にして顧客満足(CS)を高めるために、全社的に展開してきたTQM活動において、実践的に示されてきました。しかしながらこれらの取組みのほとんどは、結果を見て管理を行う「後手管理」となっています。いわば、失敗してから慌てて処置をするような後手処理ともいえ、会員の皆さんも多かれ少なかれ、そのような状況に日々悩まされているのではないでしょうか。
 それに対して、これからの品質管理においては、現場を俯瞰的・科学的にとらえ、失敗しないように事前に有効な対策を立て、失敗が起こらないようにアクションをとる活動である「科学的先手管理」の活用を提言したいと思います。
 従来の再発防止、未然防止、予防処置等と呼ばれているものと、「科学的先手管理」の大きな違いは、コストミニマムで品質(Q)、コスト(C)、納期(D1)、量(D2)、環境(E1)、安全(S)、モラル(M)、教育(E2)の8つの機能それぞれに対してKPIおよび目標を設定し、失敗しないように事前に手を打つ管理の仕組みといえます。
 「科学的先手管理」の具体的な内容については、本学会の関西支部研究会のメンバーを中心に、毎年、学会の研究発表会等において発表・討議を行っています。既に実際の企業においても、その導入効果が検証されており、さらにPDCAサイクルをまわしながら継続的な研究が進められています。
 また、グローバル化するモノづくりにおいて、日本の国際競争力の新たな源泉として「先手」を“SENTE”とし、アジア諸国をはじめ多くの国々において導入されることにも期待したいと思います。その意味で、グローバルビジネスにおける先手管理においては、有効な手法として多種多様なものが求められるため、「千手」を考える必要があるのかもしれません。この分野に興味をお持ちの方は、是非、事務局までご連絡ください。


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