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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2007 3月 No.275

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■トピックス:計画研究会「サービス産業における顧客価値創造研究会」について
■私の提言:「職場力」向上に向け他学会との連携を
・PDF版はこちらをクリックしてください →news275.pdf

■ トピックス
  計画研究会「サービス産業における顧客価値創造研究会」について

主査・成城大学 神田 範明

 昨年度定められた当学会中期計画では「Qの確保」「Qの展開」「Qの創造」の3大目標が掲げられ、 各委員会などでこれに向けての取り組みが活発に行われています。この内「Qの創造」の一環として 昨年末に創設されたのが、「サービス産業における顧客価値創造研究会」です。

サービス産業は当学会では会員数はかなり少ないのですが、日本のGDPでも就業者数でも優に60%を越え、 文字通り我が国最大の産業です。顧客ニーズの多様化と規制緩和に伴い競争が激化し、顧客にとって 価値の高い新サービスを適確に、早く、次々と創造することが肝要となっています。この基本は製造業と何ら変わりはありません。
 品質管理分野でも「サービスの品質」はもはや珍しい概念ではありません。 しかし、以前筆者らが「日本ものづくり人づくり質革新機構(JOQI)」顧客価値創造部会でも議論したように、 その「創造」となると、人に依存する要素が多い、(従って)ばらつきが大きい、しかも建築・インテリア などハードウェアに依存するところも影響が大きい、企画が経営者の感覚的な「独断」から始まることが多いなど、 製造業と異なる困難な部分が多々あります。
 このためほとんどのサービス関連の研究や書籍は目標を「顧客満足」に置き、マイナス(不満レベル)をゼロ (通常レベル)にする日常の改善活動を目指しています。改善は無論重要です。 継続すれば企業はかなりの評価を受けるでしょう。しかし、それは真の意味の「創造」ではありません。 創造とはゼロをプラス50、プラス50をプラス100に押し上げて、顧客に「満足」レベルではない、ダントツの 「感動」を喚起することです。
 従来サービス産業に対しては製造業で成功した品質管理の概念と手法をそのまま (または装いを変えて)入れて、改善ではかなり成功しましたが創造というプロセスではあまり成果を挙げていません。 その原因はAソフト面とハード面を同時に把握する企画の考え方が不足しているBニーズ発見のための調査が不十分であることC 発想やアイデアの創出が独善的で質も量も不足していることD絞り込みや決定のプロセスが極めて恣意的であること、 などが挙げられます。これらの多くは実は製造業での商品企画不得意企業でも共通な課題ですが、技術者が少ない分、 サービス産業では分析的・科学的なスキルが乏しいという背景があります。また一方で、筆者らが開発したP7 (商品企画七つ道具)はマーケティング手法とTQM手法を融合して使っていますので、サービス産業の方々には 一般のQC手法よりなじみやすいという長所があります。P7の活用で企画の質を上げることが突破口となる可能性は極めて 高いと思われます。
 当研究会では、これらの認識に立って、満足レベルではなく、感動レベルのサービスを創造する 「システム」を構築します。本年から3年間を目標に文献調査、実態調査、メンバーによる実践的事例研究を積み重ね、 いくつかの実用的モデルを構築し、3年後の成書出版を目標に、サービス産業における顧客価値創造の方法論で世界にも 類のない提案をするつもりでおります。実証事例を10件以上集積して公開します。理論モデルと実証事例が揃うため、 規模を問わずどの企業も実践レベルで参考にできるようになります。サービス産業では中小企業が圧倒的に多いため、 大企業でしか活用できないような方法論は不毛です。
 2月末現在でメンバーは16名、内11名は企業会員で、実践できる内容を目指し、 事例をどんどん出すことを目標に頑張っていただいております。幸いメンバーには前述のJOQI・ 顧客価値創造部会でサービス産業を担当した会員、筆者のような商品企画手法の開発者、コンサルタント、 大学院生等の人材を集めており、今後の展開が極めて楽しみであります。
 当研究会を契機として画期的新サービスが次々に生まれ、TQM的な、システマティックな方法論の優位性がサービス産業 に浸透し、製造業を含めた全産業でのQの創造が可能となることを念じており、会員諸兄のご支援・ご鞭撻を切に願っております。


■私の提言
 「職場力」向上に向け他学会との連携を

日野自動車株式会社 瀧沢 幸男

 最近、東京多摩地域の或る協会が主催して「職場力」について考えるイベントが開催されました。 企画運営に携わった者として、学会員の皆様にもぜひお考えをいただきたい項目として提言をする次第です。
 「職場力」については多くの定義がありますが、先ほどのイベントに際し上司から 「職場力」について助言を得たのは、会社をトラックに見立て、未来に向かって走るためにはエンジンが必要であること、 正規の馬力を発揮しないとトラックは動かないという例えでした。つまり会社には多くの組織があり、 エンジンと同様にきちんと組み立てられないと会社は動きません。
 また、正規の馬力を発揮するには、一頭一頭の馬を日頃から鍛錬して最大限の力を発揮させ、 さらに多くの馬を一つに束ねて総合力としなければなりません。この日頃の鍛錬と統制の取れ具合が 「職場力」ではないかという助言です。
 自動車の開発〜評価〜生産準備〜生産〜販売・サービスまでお客様に価値を提供するためには、 一人一人が高い倫理観や使命感を持ち、最大限の努力で持てる力を発揮することが求められます。 そのために、職場には五大使命の一つとしてモラールアップが掲げられています。 最近新聞やテレビで企業の不祥事が散見されますが、このことは、製品の質・仕事の質・経営の質と同様に、 それを生み出す「職場力」のあり方も問われているのではないでしょうか。
 ところで、当学会には産学合わせて3千名の会員が所属していますが、技術系の方が大半ではないかと拝察致します。 「職場力」向上を当学会として考える時に、医学や心理学を修めた方、社会科学を修めた方、 事務系の方々の多く集う他学会との連携は大切な視点ではないかと常々考えてまいりました。 インターネットで他学会の活動を調べてみると、ワークモチベーションに関する研究や動物としての 人間の行動科学に関する研究など興味深いものが数多く見られます。当学会の管理技術に関する研究と連携することで 新たな価値創造につながるのではないでしょうか。
 故西堀榮三郎先生の唱えられた「異質の協同」ではありませんが、会員の皆様にも是非お考えいただきたいと存じます。


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