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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2006 5月 No.268

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■トピックス:学会運営のプロセス改善−学会活動に対するアンケート調査結果の反映−
■私の提言:前進すること、原点を顧みること
・PDF版はこちらをクリックしてください →news268.pdf

■ トピックス
  学会運営のプロセス改善−学会活動に対するアンケート調査結果の反映−

理事 永原 賢造

学会運営のプロセス改善の起点として、学会員(代表として代議員)へのアンケートを実施し、新設「総合企画委員会」での中期計画へも反映途上にある。 学会員各位が,学会にどのような期待、及び要望を持っているのかを把握して、学会運営していく事が重要であることは申し上げるまでもない。
報告が遅くなったが、昨年8〜9月に、まず代議員94人を対象に、アンケート調査を実施し、67人から有効回答を頂いた。学会運営が、従来は年度毎の年度運営方針中心で運営して来ていたが、これからは学会活動にこの調査結果も参考にして、中長期計画をしっかりと展望し、それに基づいて年度計画に落とし込み、また中期計画も毎年ローリングして行くプロセスへ変更途上にある。
アンケート調査では、10項目にわたって学会のイベント参加率,その満足度,学会が扱う領域等について調査したが、ここでは「品質管理学会への参加目的」「学会活動の有効性」及び「当学会を周辺の人々にPRし薦められるか」について概要報告をする。詳細はHP添付を参照願いたい。
URL:http://www.jsqc.org/ja/oshirase/enquete/pdf1.pdf

なお、これらの調査結果からの改善課題として、産と学の学会に対する期待が異なっている点がある。例えば、産からは、現実に直面している問題解決に直結した事例や糸口を望み、一方学からは、研究成果のアウトプットの場にしているが、産の実態がわかりづらくなっている点もうかがえる。

これらの実態を認識し、中長期計画を立案して単年度計画に確実に落とし込むプロセスが必要との認識から、「総合企画委員会」を常設委員会として設置して、本年35年度からの向こう3年間の中期計画を立案している。

キーは、産学の一層の連携による日本の国際競争力に貢献する学会活動である。その骨子である「Qの確保」「Qの展開」「Qの創造」に関する中期計画の概要は別の機会に紹介したい。


■ 私の提言
前進すること、原点を顧みること

玉川大学 経営学部 講師 永井 一志
先日、同じ学科に属する法律学の教授と話をした。最近はhow toを意識した文献が多く、原点となる理論や、これが生み出された背景が書かれているものがなくなっている。寂しい気持ちになるというのが彼の意見であった。確かに、書店に並んでいる文献を見渡すと、彼の主張が決して間違いではないことに気付く。

身近な例として、1元配置実験の講義で平方和の分解について話をする場面を考えよう。この内容を受講生は非常に嫌う。これに対して、手順立てた計算方法を中心に話し、演習問題で理解度を確認すると、理解できたと喜ばれる。いわゆるhow toが受け入れられるのである。しかし、手順だけでは分散分析表がどのような理屈で作られるのかの理解には至らない。最終的には自身で再度勉強をしなければならなくなる。断片的なhow toだけでは、応用が利かなくなるのである。

また、筆者が研究しているQFDについても、品質表を作ることがQFDを実施することと誤解している人が少なくないことに驚く。どのような二元表を作成していけばよいかを考えるのが非常に難しいという声をよく聞くが、QFDという概念がどのような時代背景において、なぜ必要であったのかという原点を理解すれば、このような事態にはならないのであろう。これもhow toを重んじて来た結果ではないかと考える。

我々が何か新しい研究を進めていく際には、必ずその基礎となる研究が存在する。何もないところから新しいものを作り出すのは非常に困難である。つまり、原点を顧みることと、前進することは表裏一体であって、どちらも欠かすことのできない要素なのである。時代や環境の変化に対応するために、何事も前進することが求められているが、しっかりと原点を理解することが重要である。最近痛感するのは、私のような若輩者でも理論の原点を理解できるようなリファレンスがしっかりと残されているとあり難い。貴重な文献が余りにも少なくなってきている。

近年では、企業も教育を熱心に行うように変わりつつある。how toと原点回帰のバランスを保ちつつ、物事の本質を理解しなければ前進はあり得ないと自分に言い聞かせている。提言というには程遠い提言になってしまったことをお許しいただきたい。


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