JSQC 社団法人日本品質管理学会
HOMEENGLISH 入会案内 お知らせ 記録・報告 定期刊行物 論文・記事募集 関連情報 リンク コミュニケーション・メーリングリスト
学会誌「品質」
JSQCニューズ
Copyright (c); 2001 JSQC

JSQCニューズ 2003 6月 No.245

ニューズ・トピックスの一覧へ戻る
■トピックス「「蘇れ! クオリティ競争力!」第76回品質管理シンポジウム 報告」
■私の提言「初心に帰ろう」
・PDF版はこちらをクリックしてください →news245.pdf

■ トピックス
  「蘇れ! クオリティ競争力!」第76回品質管理シンポジウム 報告

財団法人日本科学技術連盟 安隨 正巳
“TQMやデミング賞は企業の役に立たず、過去のものになってしまったのか…?”そんな危機感を抱きながら箱根に各企業トップが集結した。
(財)日本科学技術連盟主催の第76回品質管理シンポジウムが6月5日〜7日に箱根・ホテル小涌園において開催された。「品質管理シンポジウム」といえば年2回開催され通称「箱根のシンポジウム」として親しまれ、品質管理界の一大イベントとして知られている。

今回のシンポジウムは、日本経済の牽引役ともいえる自動車産業のトップにご登場いただき、クオリティ競争力向上のためにTQMをどう役立てていくべきかを考える意図があった。参加者は約180名にのぼり近年になく盛大に開催された。特記すべきは、全参加者のうち会長職7名、社長職20名、取締役以上を含めると実に53名の各企業トップが参加されたことである。今回主担当組織委員である前田又兵衞氏(前田建設工業桝纒\取締役会長)の“トップよ箱根に集まれ!”という熱いメッセージが届いた結果と言えよう。
紙面の都合のため詳述することはできないが、概要を下記にご紹介する。

特別講演:企業経営と顧客価値創造
−ユニチャーム『3つのDNA』の実践による経営革新−
高原慶一朗氏(ユニ・チャーム(株)代表取締役会長)
高原会長の生き様から生まれた3つのDNAの重要性、そしてその効果を高める“実行力”など、高収益経営を続けているユニチャームの強さの源泉を感じた。

基調講演:日本の優秀企業研究−我が国企業再生の方向を探る−
新原浩朗氏(独)経済産業研究所 コンサルティングフェロー
どうすれば優れた企業に変革しうるか、15年間もの研究成果からその条件を具体的企業事例により明示し、日本企業再生の条件を話された。

発表1:ブレークスルーの源泉 −米国MITの事例より−
司馬正次氏(MIT 客員教授)
グローバリゼーションが進む中、米国MITの事例からブレークスルーの源泉について説得力溢れる発表であった。日本企業復活へのヒントが大きく示されたといえよう。

発表2:ITを活用したトヨタのモノづくり改革
白水宏典氏(トヨタ自動車磨@代表取締役副社長)
ITを高度に活用したトヨタのモノづくり改革について“デジタルエンジニアリングの活用”を中心にご説明をいただいた。さすが“世界のエクセレントカンパニー・トヨタ”といった内容であった。

発表3:クオリティ競争力を支える人づくり
山本卓志氏(本田技研工業(株) 取締役)
本田宗一郎氏の精神を脈々と受け継ぐホンダフィロソフィ、品質教育、New HONDA Circle活動、品質管理など“ホンダ流 人づくり”について明快な説明がなされた。

発表4:三菱自動車におけるクオリティプロセス
シュテファン・ブッフナー氏(三菱自動車工業(株) 常務執行役員)
三菱自動車における変革への挑戦について、“クオリティ”に対する想いを中心にターンアラウンド計画、クオリティゲートシステムなど具体的事例をまじえて説明があった。

特別発表:CQO概念の確立
橋 朗氏((株)デンソー 取締役会長・ JSQC会長)
企業におけるCQO(Chief Quality Officer)設置の必要性について、アンケート結果なども踏まえながら橋氏より説明があった。

特別講演2:V字回復を支えた経営システム
−日産リバイバルプランから“日産180”へ−
カルロス・ゴーン氏(日産自動車(株)取締役社長兼CEO)
シンポジウムのフィナーレを飾ったのは、奇跡のV字回復を果たした日産自動車・ゴーン社長の講演であった。ゴーン社長の強いご希望により講演30分、質疑1時間という対話重視形式で進められた。

今回のシンポジウムは、様々な視点からクオリティに関する有益な議論がなされた意義深いものであった。TQM復活へ向けて確かなる一歩を踏み出したといえるであろう。

次回は、11月27日〜29日「挑戦と創造−グローバル化のもとでの新たなTQMを求めて−」をテーマに開催を予定している。ハイアール・張社長、コマツ坂根社長などの講演が内定している。皆様の積極的なご参加をお待ち申し上げたい。

■ 私の提言  初心に帰ろう

日本特殊陶業株式会社 取締役 高見 昭雄
21世紀になり、世の中がますます騒がしくなってきたと感じるのは、小生だけであろうか。弊社が属する製造業では、経営分野では企業倫理・危機管理・中国の脅威などが声高に言われ、事業分野ではTOC・SCM・MOT・PLMなど、“ITを活用したソルーション”なるものが新聞や雑誌の誌面をにぎわしている。(工場では不良・歩留り・在庫・災害など、30年来の問題が依然として無くならず、そのギャップに戸惑いを感じているが…)TQMの世界でも、いろいろな用語が氾濫している。“基本を大切に”と言われ、1.お客様第一、2.全員参加、3.継続的改善、4.品質重視、5.事実重視など、両手では足らないほどの“基本格言”を教えられた。また、方針管理・日常管理、PDCA、QCDSME、SQC、3ム、5ゲンなど、日本語だか何語だか分からない“略号”を聞いた。研究出身の小生には、前述のITソリューションとも合わさり、チンプンカンプンな時があったが、思想・行動・目的・ツールなどに整理してみて、何となく分かったような気になってきた。

現在のように、地球の裏側の政治や経済の変化が企業活動に影響し、その変化が早くて激しくなると、それへの“対処”に追われ、“解決(真の原因への対応)”が疎かになってしまう。製品品質の確保と向上から出発し“改善ツール”として発展したTQMであり、品質の意味がモノ→サービス→しくみ→経営と広がっても、この解決に有用であろうと思っている。今私たちは、解決以上に改革を求められている。“しくみ”や“経営”の改革に、どうやって活用すれば良いか、悩む場面が多くなっている。

壁に当たった時には、基本に戻れと先人に言われている。TQMの基本とは・TQMの目的は何であろうか? いやいや、弊社のそもそもの設立の目的は何であったのか、仕事をする姿勢とは何であったのか? 創業者の精神や、ものづくりの魂をひもとくことにより、改革へのヒントが得られそうである。

※言葉の注
・MOT: Management of Technology(技術経営)…雑誌「マネジメント」03.3月号
技術開発への投資の、費用対効果を最大にするためのマネジメント
・PLM: Product Lifecycle Management …雑誌「マネジメント」03.4月号
製品の開発〜製造・販売〜廃棄・リサイクルの、ライフサイクル全プロセスを包括的に最適に管理するソルーション


このページの最上部へニューズ・トピックスの一覧へ戻る

--------The Japanese Society for Quality Control--