JSQC TQM基礎講座 第5回演習問題 コメント

 

 以下に設問に示した状況と,コメントを述べます.

 

1.お客様相談窓口を設けて,顧客からのクレームを受け付け対応している.11件のクレームに対しては,修理,交換,補償などで対応している.しかしながら,クレーム内容が設計部門にうまく伝達されず,同じ製品に関して何度も同じクレームが発生している.

 

2.お客様相談窓口を設けて,顧客からのクレームを受け付け対応している.11件のクレームに対しては,修理,交換,補償などで対応している.技術的解析も行って当該製品に対しては技術対策も打っているが,技術標準に生かされないために,次の新製品に対しては似たようなクレームが発生している.

 

コメント:12はいずれもクレーム処理に関わるものです.1は,応急処置のみを行っていて,再発防止処置がうまく行われていない状況です.クレームを応急処置した後に,そのクレームの情報がどのように流れているのかを確認する必要があります.また,是正処置も十分行われていない可能性があります.これらの実施状況を確認することが必要です.クレームの再発防止策に関わるシステムの整備を促すような指摘が望ましいでしょう.

 2は,そこそこの再発防止対策は行っているものの,せっかく得られた技術情報が次期新製品に生かされない状況です.是正処置,予防処置に関わるシステムの不備を指摘すべきでしょう.

 12のいずれの状況においても,1件のクレームが発生してから,PDCAがきちんと回っているかについて一連の流れを追って確認する必要があります.ISO9001の項目ごとよりも,クレーム処理のシステムに問題がないかという観点から,あるクレームから深くシステムを見ていくべきです.そして,そこでの不備がISO9001の要求事項で指摘できるものは何か,という発想がないと,企業側にクレーム処理のシステム改善を促すことは難しくなります.

 

3.デザインレビューを実施しているものの,形式的になっていることが多い.事前配付資料を配付することになっているが,いつも実施前ぎりぎりであり,十分検討する時間がとられていない.その結果,量産直前になって設計不具合が発見され,設計の手戻りがよく起こる.

 

コメント:これは,デザインレビューの仕組みはあるものの,きちんと実施されていない状況です.ISO9001に要求されていることを確実に実施することで,改善が期待される状況ですから,規定されている設計に関する様々な確認行為の実施状況を確認すればよいでしょう.DRにかける時間が現実的に設定されていない場合が多いので,DRの視点が絞られていないことに関する指摘も加えるべきでしょう.

 

4.新製品の開発数が伸び悩み,利益率が年々落ちている.シェアも年々落ちてきており,近い将来赤字への転落が懸念される.顧客満足度調査によれば,他社製品に比べて機能・性能面で見劣りがし,不満を述べる顧客が多い.

 

コメント:これは,新製品の開発が停滞しており,利益や売上げがじり貧になっている状況です.新製品開発の活性度に関する直接の要求事項はISO9001にはないのですが,新製品開発は組織の持続的成長のために重要なポイントですので,組織に対して問題を気づかせる必要があります.顧客満足に対する活動の不備,新製品開発のステップの不備を,マネジメントレビュー,是正処置,継続的改善の不十分さから指摘する方法が考えられます.

 

5.設計変更が頻繁に行われ,量産前に設計不具合が続出している.その結果,設計リードタイムが計画をかなりオーバーしており,量産前に人海戦術で問題をつぶしている.設計部門は,コストダウンのために設計変更を行っているので,必要なことであり,よいことをやっていると思っている.

 

コメント:これは,いわゆる変更管理がうまく行われていない状況です.ISO9001にも,変更管理に関する要求事項がありますから,それに関するシステムを徹底して確認する必要があります.問題は,設計部門が変更を悪いと思っていないことです.変更の時期,数に問題があることから変更がうまく実施されないという問題点を挙げ,そもそも変更の数を減らすようなシステムに変えていくように促すべきです.

 

6.過去の設計の不具合を過去トラ(過去に起きたトラブル)集として蓄積している.ただし,事例をそのまま貯めているだけで,特に分析,整理することはしていない.設計者は,その過去トラ集を見ながら似たような事例がないかをチェックしているが,時間がないのですべてをチェックすることはできていない.その結果,過去トラ集にある設計不具合を再発することがある.

 

コメント:これは,過去トラ集を貯めるだけで分析していないために,せっかくの過去の情報が生かされていないという状況です.設計に関する確認行為の不備から指摘していくことになりますが,事例をただ集めるだけでは機能しないことを気づいてもらう必要があります.用いる手法を指定することはできませんが,FMEADRのチェックリストなどに,将来の新製品に生きるような汎用化に関する工夫がなされているかどうかをチェックするとよいでしょう.