ISO9000s審査員のためのTQM基礎講座

今回の演習では,ISO 9001のいくつかの要求事項を取り上げ,この要求事項をベースに,SQC手法がレベルアップに効果的かどうかを議論しました.この背後にある狙い,背景などは次のとおりです.

(1)   「データで語る」,「事実に基づく管理」が品質管理の根幹をなしていることは周知の事実です.ではこの根幹は,TQMのどのような側面で有効であるのかを認識することが重要です.

(2)   「データで語る」,「事実に基づく管理」は,業種,規模によって,それが効果的に働く場面が異なります.演習では,審査を通した経験などにより議論が展開されたと思われます.議論をすることとで,その経験がチーム内で共有されることになり,それを通してTQMの知識が深まったと思います.

(3)   演習1のSQC手法の活用が効果的かどうかについて,想定した回答は次のとおりです.
(a) ホテルでSQC手法が効果的なのは,マーケティング的側面であり,顧客要求の探索に欠かせない.
(b) 自動車部品製造会社では,設計があればその段階で,SQC手法の活用が効果的である.製造が主体の会社の場合,製造での活用が効果的である.また測定が重要な部品であれば,測定関連でMeasurement System Analysisなどが重要になる.
(c) 建設については,高度なSQC手法の活用が効果的というよりは,効果的にデータを収集することが重点になる.したがって,チームが置く前提によって重点が変わる.
なお上記はあくまで,私自身の想定です.これは,組織の形態が変われば常に正しいとは限りません.ほとんどのチームが,前提をはっきりさせた上で議論をしていたのは,とてもよかったと思います.たとえば(b)自動車部品製造会社では,設計機能がないものとして,製造段階を想定している,などの声が聞こえたのは,演習を効果的に進めるのに大きな貢献をしたと思います.

(4)   演習1でSQC手法の貢献が少ないということについては,下記を想定していました.
(i) 全体的に,購買については手法の貢献が少ない.
(ii) マネジメントレビューにおいては,「手法の活用」というよりも,その前段階である「適切にデータを取る」ことが重要視される.なお規模が大きな組織になればなるほど,部門間での比較などが重要になり,手法の活用の貢献が増える.
(iii) 測定については,特殊なものを扱っていれば,Measurement System Analysisが必要になるものの,標準的なものであれば校正などの手続きが確立しているので,その貢献が少ない.

(5)   演習2では,次を想定していました.
(a) ホテルのマーケティング的側面の部門において,多変量解析,コンジョイント分析などが効果的である.一方,顧客満足度データについて,グラフ,基本統計量による集計は,最低限実施されるべき項目です.
(b) 自動車部品製造会社では,設計,製造,改善などで実験計画法や多変量解析などの活用が効果的です. 一方,管理図,グラフといったものがあまりないようでしたら,その会社の「データで語る」能力は相当低いといっていいでしょう.
(c) 建設については,適切なデータを収集し,グラフ,基本統計量の検討が重点で,高度なSQC手法の活用が効果的というよりは,効果的なデータを収集することが鍵になる.その意味でデータがあることが,最低限のレベルと捕らえることができる.

(6)   上記説明しましたとおり,各チームで同じ回答が出るとは思えません.今回の演習のように,チーム間で若干異なる回答が出るのは自然なことです.他チームの回答を読むときに,そのような事を念頭においてください.

次にチーム別に,コメントをします.これについて,上記の全体コメントと重なるものについては,基本的に割愛します.
第1チーム @データで検討し易い項目かどうか,ASQCを活用できるデータが得られ易いかを着眼点に演習1を行ったのはよいと良いと思います.
第2チーム 活用が効果的かどうかについて,組織間で比較を行うと回答のとおり,(b),(a),(c)の順になります.ただ部分的に見ると,ホテルのほうが顧客要求の解析では手法活用が必要になることが多々あります.
第3チーム 効果的な組み合わせ8.3は面白い着眼点だと思います.
第4チーム 前提条件をしっかりと固めて議論をしている点はとてもいいと思います.
第5チーム 演習(2)で(b) 7.3,7.5については,(a)試作時の工程能力指数はあくというのは,とても面白い着眼点です.
第6チーム (b)製造で考えると,私と同じ想定です.ホテル,建設については,ぜひ他チームを参考にされてください.
第7チーム 製造業での改善には,(b)-8.5のようなものが良く見られます.ホテル,建設については,ぜひ他チームを参考にされてください.
第8チーム 演習2の(a)ホテル―8.2.1顧客満足について,最低限必要なレベル,効果的な手法がとてもうまくまとまっています.また(c)-8.3の回答もとても興味深いです.