社団法人日本品質管理学会

第32年度 自 2002年(平成14年)10月 1日
至 2003年(平成15年) 9月30日
事業報告

1.概 況(会長:橋 朗)

(1) 産業界における最近の品質に関わる事故・不祥事の発生に対して,産学の品質管理関係 者が,その原因を検討し,原点復帰への対応を考えていくために,2つのアンケートとシン ポジウムを実施しました.
  • 品質管理やTQM活動の強化のためには,経営トップのコミットメントが大切であるとの 認識から,CQO(Chief Quality Officer)という概念を提案し,経営トップのご意見  を伺いました.CQOのポストについては皆様がご関心をお持ちであり,経営トップの品  質戦略の条件を整理した学習カリキュラムの作成についても期待されていることがわかり  ました.
  • 品質保証部門の部門長の方に「品質保証活動の実態と今後」に関するアンケートをお願いしました.その結果,各社の現状の品質水準は,顧客の要求や競合先の水準を下回っているため,満足していないという声が多く,従来からの顧客に絶対迷惑をかけないための製品・サービスの質をさらに充実し,さらに新たに顧客価値を創出していくための質創造にも取り組んでいく必要があること,また,そのために,品質保証部門はさまざまな面で実力を高めていくことが期待されていることが確認できました.
  • 以上のアンケート結果からの提言と,トヨタ自動車,松下電器産業,花王の品質保証部門の代表による各社の活動報告からなるシンポジウムを開催し,将来の品質保証活動について考えていただく機会としました.
 
(2) 学会の研究会活動の理想の姿は,産業界のニーズに沿ったテーマを産学協同で研究していくことと考え,その一つとして,「シミュレーションとSQC」を取り上げ,検討しました.その結果,デジタルエンジニアニングと品質保証,SQCとシミュレーションの予測モデル,シミュレーションの現状の課題の検討,の3つの分科会を作って立ち上げ,横断型基幹科学技術研究団体連合との連携をとりつつ研究を進めることとしました.
 
(3) 2002年11月15日−16日に東京で,合計167名(海外68名)の参加者を得て,第16回アジア品質管理シンポジウムを開催.アジアの10の品質管理組織の参加によるANQ(Asian Network for Quality)設立のための記念すべき大会となりました.また,2003年9月22日〜24日には,北京で第17回アジア品質管理シンポジウムが開催され,日本品質管理学会からも41名(中,23名の発表)が参加しました.この参加に際しては,学生の論文発表者に奨励金を支給するとともに,優秀論文を表彰しました.
 
(4) 本部主催事業について,第85回講演会(日本のものづくりの強さ−トヨタ生産方  式の原点とITの理論に学ぶ−),第71回研究発表会,第92回シンポジウム(I  SOマネジメントを取り巻く環境),ISO9001 2000に基づく第3者審査のためのガ  イドライン説明会,第94回シンポジウム(顧客価値保証のアプローチ)など,多く  の企業会員に参加していただきました.
 
(5) インターネットによる品質管理相談室によるサービスを開始しました.
 
(6) 中部支部では,日本のものづくりの原点復帰と今後の方向を考えるシンポジウムな  ど行事への参加者も多く,収支が大いに改善されました.また,関西支部では,支部  長,理事,幹事長,代議員,幹事による合同役員会を2〜3ヶ月に1回開催し,研究  発表会等,精力的に多くの行事を計画,実施されました.

2.長期計画委員会(委員長:橋 朗)

(1) 産業界のニーズの高いテーマに対して,タイムリーに研究を進めていく活動として,「シミュレーションとSQC」を取り上げ,3つの分科会と拡大研究会を設置し,横断型基幹科学技術研究団体連合と連携しつつ活動を進めていくこととにしました.
 
(2) CQOに関するアンケート結果に対して,企業においてCQOが果たすべき役割は,顧客満足を形成するための質創造であると考え,その活動内容と組織における推進方法,結果の評価などについて研究し,企業に提案していくことを,今後の学会の研究テーマとすることを確認しました.ここで,質創造といっているのは,品質保証と魅力品質の創造を含めた活動を総称しており,企業の質経営は顧客創造を目的としたものであるという考えに基づいて提案しています.

3.事業委員会(委員長:神田 範明)

昨年10月4日の第84回講演会(情報システムの品質とその信頼性)で本年度事業が始まりました.10月26日第32回年次大会(武蔵工業大学)ではお陰様で多数の参加を得て,成功裡に幕を閉じることができました.その後も本年度行事は本部(年次大会,研究発表会,ヤングサマーセミナー各1回,講演会2回,シンポジウム2回,事業所見学会3回,クオリティパブ6回,説明会1回),中部支部(研究発表会,シンポジウム各1回,講演会2回,事業所見学会3回),関西支部(研究発表会2回,シンポジウム2回,講演会1回,事業所見学会4回)と順調に開催され,実績を上げております.支部行事は基本的に各支部の主体性にお任せしており,地域の会員のニーズを反映した行事プランを立案していただき,各々好評をいただいております.

本部行事は基本的に31年度のスタイルを継承し,会員のニーズに沿ったタイムリーな企画を目標に実施して参りました.

1月の講演会(日本のものづくりの強さ)はトヨタ生産方式とITの関係から日本のものづくりを見つめ直す契機となり好評をいただきました.5月の研究発表会は発表62件,参加321名と近年稀な大盛況となり,当学会の未来に明るさを感じることができました.第92回シンポジウム(ISOマネジメントシステムを取り巻く潮流)では最新のISO関連の情報が次々に紹介され,江戸東京博物館ホールが300名余の熱気に包まれました.事業所見学会(パイオニア川越工場,サンデンフォレスト,コーセー狭山事業所)では工夫を凝らした見事な生産・環境・人材育成などのシステムを紹介いただきました.クオリティパブでは1つのテーマで30人前後の参加者がくつろいだ雰囲気でディスカッションできる場を隔月で提供しています.32年度も各界から様々なゲストを6名お呼びし,ソフトな学会行事を展開し好評をいただきました.また,8月のヤングサマーセミナーでは近年最高の43名もの参加があり,若手の活発な研鑽とコミュニケーションの場となり,この面でもJSQCの将来に希望を繋ぐことができました.

本部行事はお陰様で全体としては昨年度に続いてかなりの活況を呈しており,会員の皆様のご協力に厚く御礼申し上げます.ただ,見学会,シンポジウムについては参加者数にばらつきが見られ,時期・場所・内容について,より深く配慮すべき点があると考えております.

4.中部支部(支部長:大西 匡)

  1. 基本的な考え方
    グローバル化して行く「日本のものづくり」における品質確保の原点復帰と今後の方向をさぐる.
    1) あたり前の品質の確保 −原点からの総点検−
    2) グローバルな視点での品質管理活動のあり方の追求

  2. 具体的な行事のまとめ
    1) 研究発表会(1回/年)
    8月6日,名古屋工業大学において開催しました.『品質確保の容易化と確実化に向けた研究と実践』をテーマとして,発表事例は,産業界8件,学術界5件,官公 庁1件の14件であった.昨年の意見を反映して発表の間に5分間の準備時間を入れ好評でした.参加者は119名.懇親会では,発表者の苦労話や若手参加者から学会への意見を聞くなど和やかな雰囲気の中,有意義な情報交換ができました.
    2) シンポジウム(1回/年)
    7月10日,名古屋市中区役所地下ホールにおいて開催しました.テーマは「『日本のものづくり』における品質確保の原点復帰と今後の方向を探る」です.
    潟fンソー 特別顧問,豊田紡織椛樺k役/前支部長の太田和宏氏の基調講演をはじめ,事例講演3件,パネル討論会の3部構成.参加者189名.
    参加者からは,「これからの指針の参考を得ることが出来た」,「実体験の話が参考になった」などの意見が寄せられ,好評でした.
    3) 講演会(2回/年)
    4月22日,豊田工機(株)厚生年金基金会館「ういず」にて開催.テーマ『創造的なものづくりマネジメント革新−開発段階でのものづくりマネジメントと品質工学の活用−』,講演2件,参加者148名でした.
    8月26日,桜華会館にて日本品質管理学会,日本OR学会,日本経営工学会3学会の共済で開催.各学会1件の講演3件,参加者61名でした.いずれも,それぞれの学会の活動をよく現し,共催行事にふさわしい示唆に富んだ講演でした.
    4) 事業所見学会(3回/年)
    4月25日,中部国際空港旅客ターミナルビル工事現場にて開催,参加者45名.
    6月3日,潟fンソー技研センターにて開催,参加者45名.
    7月25日,アサヒビール名古屋工場にて開催,参加者28名.
    参加希望者が定員オーバーとなるほど申込みがあり,また,受け入れ事業所の配慮によって見学に会わせた作業進行をしていただくなど,有意義な見学会でした.
    5) 幹事研修会(3回/年)
    1月22日,名古屋工業大学にて仁科先生より若手研究会の取り組みの講義を受けた.5月23日,(株)コマニーの工場見学,5月24日キリンビール北陸工場見学を実施.北陸地区の活動に触れることができ,大変有意義な研修の場とすることができました.なお,第3回幹事研修会は,行事が重なったため来年度へ延期致しました.
    6) 若手研究会
    金沢地区では石井先生(金沢工業大学),東海地区では仁科先生(名古屋工業大学)を中心として産・学会からのメンバーによって活発な活動が展開されました.

5.関西支部(支部長:中島 昭午)

  1. 基本的な考え方
    大変革時代において,品質管理に求められるものの追求を通じ,企業への貢献,関西支部の存在感の確認
    「現場に密着した,新たな管理技術の再構築」−上手なもの造り,現場の技術の伝承−
    (1) 現場重視,現場力の向上
    (2) 現場力の向上のための新規で易しい手法の開発

  2. 活動のまとめ
    (1) 事業所見学会
    ノーリツ竃セ石本社工場(顧客視点での品質管理への取り組みについて)(3月)
    千寿製薬潟Rーベクリエイティブセンター(医薬品の安全性試験の品質保証)(9月)
    (2) シンポジウム
    第93回 企業再生へ向けたマネジメント力の再構築(1)(7月)
    (3) 講演会
    第87回「企業経営と顧客価値創造−ユニ・チャーム『3つのDNA』の実践による経営革新−」(10月予定)
    (4) 研究発表会
    第73回(9月)
    (5) 研究会
    関西支部として3テーマの研究会を実施
    (6) QCサロン
    原則,偶数月第3金曜日に開催,4月から関西支部会員(メールアドレス登録者約350 人)に開催案内を通知,毎回30名以上の参加
    (7) 事業運営幹事会
    事業運営幹事会から合同役員会として,支部長,理事,幹事長,代議員,幹事をメンバーとして2〜3ヶ月に1回開催

6.投稿論文審査委員会(委員長 鈴木 和幸)

(1) レフリーと著者との議論に投稿論文審査委員会として積極的に関与することを努めました.
(2) 17AQSの論文奨励・作成支援に関して以下の活動を行いました:
  1) 17AQS論文作成への助言および順位付け
  2) 若手奨励金の適用対象者の選定
(3) 投稿論文審査のスピード化をめざし,新規投稿へのfirst response を3ヶ月以内に行うことを目標に活動しました.この結果,3ヶ月以内のfirst responseは70%となりました.
(4) 30年度の投稿論文数19本,31年度27本に対し, 32年度は20本となりました.掲載論文は31年度13本に対し,32年度は計16本の論文を掲載できました. (Vol.32 No.4: 6編,Vol.33 No.1: 4編,Vol.33 No.2: 2編,Vol.33 No.3:4編)
  10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
30年度 19
31年度 27
32年度 20

7.編集委員会(委員長:永田 靖)

特集については,「商品企画システムの構築」,「タグチメソッド」,「シックスシ グマ」,「品質経営のための調査の方法」を掲載いたしました.また,各種ルポルター ジュなども掲載いたしました.

8.広報委員会(委員長:坂 康夫)

会員サービス向上に向け,以下の取り組みを行いました.
(1) ホームページコンテンツの充実
  • 品質管理相談室開設
    会員からの品質管理に関する質問,相談を受け付ける「品質管理相談室」をホームページ上に設置しました.
  • ホームページ更新ルールを作成し,新鮮な情報の提供に努めました.
  • 次のリンク先を追加しました.
    • 日本技術者教育認定機構(JABEE)
    • 国立情報学研究所電子図書館サービス「品質」掲載一覧
(2) JSQCニューズの発行
2002年11月号(NO.240)〜2003年9月号(NO.247)の8編を発行しました.
主なトピックス
  • ・失敗学会設立の経緯(特定非営利活動法人 失敗学会 副会長 飯野 謙次氏)
  • ・第16回アジア品質管理シンポジウム開催(飯塚 悦功先生,鈴木 和幸先生)
(3) プレスへの情報発信
日本経済新聞社に「第16回アジア品質管理シンポジウム開催」の記事掲載をお願いし,掲載していただきました.
(4) ホームページ WEB アクセスログ解析結果の統計データを報告しました.

9.会員サービス委員会(委員長:松本 隆)

第30〜31年度は会員数の拡大に力点を置き成果を上げました.第32年度は活動の内容の充実による,会員のサービス向上を図るべく以下の事項を重点的に実施しました.
(1) 新サービスの企画と充実
第31年度に企画した以下の新しいサービスを立ち上げて,充実させました.
@ カテゴリー別Webページ「仮想コミュニティー」の充実
A「賛助会員 品質管理推進者 懇談会」の新設
(2002年10月第1回,2003年5月第2回 開催)
(2) 会員のご意見・ご要望の把握のためのアンケートの検討
日頃学会の行事に参加している方々の要望を含め,非参加者や地方の会員のご意見を伺う機会がほとんどない.そこで,多くの会員の学会に対する意見・要望を聞いてみたい.この目的でメールアドレス登録者約2300名を対象にしたアンケートを企画し,その結果をもとに学会としての「顧客満足度」の向上を図るべく,検討しましたが,実施には至りませんでした.
(3) 会員増強策
第30〜31年度に引き続き以下のキャンペーンを行いました.
・メーリングリスト会員(約2300名)へeメールによる勧誘呼びかけ(含むISO9000審査員関係者)
2003年9月30日現在の会員数: 名誉会員31名,正会員 3,208名,準会員 124名,
賛助会員 191社217口,公共会員22口

10.規定委員会(委員長:竹下 正生)

以下の内規の改定案を作成し,理事会への報告・承認を得て施行しました.
  (1) 学会規則210 研究奨励賞内規 (改定案)
  (2) 学会規則216 最優秀論文賞内規 (改定案)
  (3) 学会規則217 品質技術賞内規 (制定案)
  (4) 学会規則219 品質管理推進功労賞内規 (改定案)

11.研究開発委員会(委員長:天坂 格郎)

第32年度の研究開発委員会は事業計画に沿って活動を進めました.これまでの研究テーマの特質を活かし,研究成果を積み重ねることで品質管理の体系を図ることが今後重要である.会員が抱える品質に関わる諸問題をタイムリーに研究し,新たな価値の創出を狙いに設けた“企画推進室”の支援も得て,研究成果の統合化による品質管理の体系化を加速させるべく,以下の諸活動を進めてきました.

1)研究テーマの充実
第31年度に策定した,“中長期計画グランドデザイン”をさらに充実させてデザイン化したテーマ研究『成長の木』(2003-2005)をもとに,時代の要請に沿う研究テーマを取り上げて闊達な研究を進めました.その結果,@『知識創造(KC)実践研究会』(公募研究会,主査:サンマックス 長澤重夫氏,2003/5)が終了し,質・量とも拡充を図るための新研究会として,A『次世代型小集団活動実践研究会』(公募研究会,主査:玉川大学 永井一志氏,2003/4),B『環境マネジメントシステム研究会』(公募研究会,主査:東京情報大学 岡本真一氏,2003/7)を開設しました.さらに,C『デジタルエンジニアリングと品質保証研究会』(公募研究会,主査:日本電気通信システム 金子龍三氏,2003/後半),D『リフレクター研究会』(公募研究会,主査:富士ゼロックス社友 布施輝雄,2003/後半)の開設を準備中です.上記のほかに,現在も継続している研究会は,E『テクノメトリクス研究会』(計画研究会,主査:名古屋工業大学 仁科健氏,1994/7)F『医療経営の「質」研究会』(計画研究会,主査:田村 誠 氏, 2003/3), G『3PS研究会』(公募研究会,主査:玉川大学 大藤正氏, 2002/6)であり,何れも計画通り進んでいます.

2)研究成果の公表と研究参加のプロモーション
“魅力ある研究環境作り”を実現させるために,本年度は@当委員会の諸活動を広く紹介するためホームページを大幅改訂し,Aテーマ研究の終了報告書を会員・非会員の方々が購入し易いように一覧と内容を刷新しました.そして,Bテーマ研究の終了概要を『品質』誌に掲載し,さらにC計画研究会/公募研究会の研究成果の変遷,現在の研究会活動概況を広く紹介しました.併せて,D「研究開発委員会内規」,「研究会成果に関する内規」,及び「研究会報告書作成マニュアル」の作成を行いました.これらの諸活動をE当学会(第71回研究発表会)で紹介も行うなど,産・学の連携強化の布石により企業会員の研究会参加者も増えてきております.今後は(1)基礎的研究(管理手法と数理手法),(2)応用研究(実用性),(3)未着手の研究(新分野)が一層進むことが期待される.

3) 新たな研究会活動『シミュレーションとSQC』発足に向けて
学会長の要請により,グローバルな視点から研究会の基盤を一層強化する方案として“コンソーシアム”の意義を捉え,他学術諸団体とも連携する“拡大型研究会”による新研究テーマ『シミュレーションとSQC』を企画中であり,次年度発足の予定である.

(1)テクノメトリックス研究会(主査:仁科 健 20名)
継続テーマである“因果推論の品質管理への応用”に加え,外的基準がない場合の変数選択である主変数法,ケモメトリックス分野で活用されているPLS回帰など品質管理分野では比較的馴染みの薄い多変量解析手法について,その応用および統計的性質などの研究を進めました.また,MAS法の問題点,実験計画法に関連して,Shainin'sVariable Search の理論展開,過飽和実験計画のコンピュータ実験への応用などを議論し,その成果の投稿,あるいは投稿準備をしています.学会員へのサービスとして,学会ホームページとリンクした当研究会のWeb サイトにあるグラフィカルモデリングの解析ソフトをWindows 版としてバージョンアップさせました.

(2)医療経営の総合的「質」研究会(主査:田村 誠 16名)
1) 31年度に引き続き,委員会参加病院の訪問調査および職員に対するアンケート調査を実施しました.
2) 訪問調査をおこなった病院のまとめをおこない平成15年3月に報告書をまとめた「医療経営の総合的『質』研究会 報告書および資料集」
3) 調査対象を委員会参加病院から一般の病院まで拡大したアンケート調査を作成し,実施しました.
  • 全日本病院協会医療の質向上委員会と協力して,全日本病院協会会員病院へのTQM意識調査実施(平成15年9月).
4) 医療関係者への啓蒙活動の一環として,医療関係団体が主催する研修会,シンポジウム,出版物等に委員の参加・講演・寄稿等をお願いした.具体的には以下のとおり
  • 第44回全日本病院学会シンポジウム(平成14年10月12日)「医療経営と品質管理:質向上の組織的取り組み」
  • 四病院団体協議会主催の医療安全管理者養成講習会プログラム(平成15年10月―12月6日間)の企画協力
  • 第45回全日本病院学会シンポジウム(平成15年10月11日)「医療の質を考える」の企画および講演予定
5) 品質管理学会関連の会合あるいは出版物に経過あるいは成果の報告を行った.具体的には以下のとおりです.
  • 日本品質管理学会32年次大会で発表「医療の総合的『質』経営に関する研究(中間報告)−先駆的取り組みを行う病院の経験から−」

(3)3PS研究会(主査:大藤 正 15名)
3PS研究会では3PSの3P(プロフェッショナル,パートナー,プロジェクト)の関係をどのように捉えるかについて討論し,組織目的を達成する活動に関係する人々の行動に関する研究を中心に進めました.そしてリーダーシップ,モチベーション,モラールなどに関する過去の研究を調査し,自律型人財の在り方,要件,育成方法などを表出しまた.しかし研究会が若手の育成という意味合いの強い研究会となり,公表できる研究成果を得ることができませんでしたが,組織(プロジェクトチームやサークルなど)がその目的を効率よく達成するためには組織メンバーの状態とメンバー間の関係性,伝達情報の3点の研究が必要であるという結論に至りました.

(4)次世代型小集団活動実践研究会(主査:永井 一志 18名)
主として組織が行う活動には様々な種類がある.QCサークルを始めとして,タスク・チーム,プロジェクト・チーム等,複数の人間が関与する小集団活動が企業内では実践されています.
本研究会では,QCサークルに限定せずに,様々な形態で取り組まれている小集団活動を網羅的に研究の対象としています.組織の目標を実現するための小集団活動のあるべき姿や具体的な方法論の提示,また企業を取り巻く環境の変化への対応を考え,次世代の小集団活動について,何らかの指針を与えたいと考えます.
2003年4月より開始された本研究会では,図に示す研究テーママップに基き,月1回の会合で研究を進めています.
2003年9月までに実施した議論は以下のとおりです.
2003年4月(第1回):研究領域の確認とフリーディスカッション
2003年5月(第2回):研究マップの作成
2003年6月(第3回):小集団の定義と分類
2003年7月(第4回):コミュニティの形成(その1)
2003年8月(第5回):コミュニティの形成(その2)
2003年9月(第6回):コミュニティの定義と階層の関連

(5)環境マネジメント研究会(主査:岡本 眞一 21名)
環境マネジメント研究会は隔月1回の開催を原則として,7月より活動を開始しました.これまでに7月と9月の2回の研究会を実施した.第1回は,研究員の自己紹介と研究テーマとして,どのようなことを取り上げるかを議論しました.ISO14000の企業にとってのメリットとデメリットについて整理していく必要があるという意見が多く出された.第2回は「環境マネジメントシステム序論」をテーマとして,(財)日本適合性認定協会の大坪孝至氏による講演会を実施した.IS09000と14000の統合性や環境の改善指標に関する質疑が行われました.講演会の後に,本研究会で取り上げるテーマと,そのテーマに関連して実施しなければいけない調査活動の進め方について議論しました.

(6)知識創造実践研究会(主査:長澤 重夫 13名)
前年度の成果である“知識管理(KM)とKC概念図”“知識創造体系マップ”を更に発展させる為に三つの道を設定して活動をつづけました.
道1:“上記概念図の深化”,
道2:“例題や実践による知識創造手法研究”,
道3:“既存QC手法からの知識創造部分の抽出”最終報告書“知識創造研究会研究報告書”を去る5月に纏めました.
報告書は 第1章 概要   第2章 商品・サービス開発提供モデル
第3章 既存ツールのKC的考察 第4章 実務例
第5章 サークル活動とKC 第6章 ヒラメキとKC
第7章 KCとその実践 第8章 経過記述
という内容で構成されている(全57頁). 結果として知識創造の実務面を多面的に捉えることができました,更に一層具体的な個別ツールの研究が期待されます.

12.国際委員会(委員長:飯塚 悦功)

32年度の国際委員会は主に以下の事業を実施した.
(1) 第16回AQSの開催
3組織(JSQC,KSQM,CSQ)による共催学会から,広くアジア諸国からの参加者が集うアジア国際品質大会へと性格を変えることを意図した第16回AQSを,JSQC主催で2002年11月15〜16日に開催した.多大な献身的準備が奏功して,参加組織10組織,参加者総数167名,口頭論文発表48件,ポスター発表12件という多数の参加を得て,参加者の誰もが大成功であると絶賛するシンポジウムとなり,AQSを変身させるという目的は期待以上のレベルで達成されたものと評価できる.
(3) ANQの設立,そして基盤確立
2002年7月AQSの拡大に応じてアジアにおける品質関連中立的諸機関のネットワークとしてその設立を決定していたANQ(Asian Network for Quality)が,2002年11月の第16回AQS開催時に開かれたAQN設立準備委員会における決議によって正式に発足した.参加組織は,JSQC(日本),KSQM(韓国),CSQ(台湾),CAQ(中国),ISQ(インド)のボードメンバに加え,HKSQ(香港),ISQ-Iran(イラン),PMMI(インドネシア),SQAT(タイ),STAMEQ(ベトナム)の計10組織である.最初の2年間の議長組織としてJSQCが指名され,会長に狩野紀昭氏が選任された.また,ANQ運営に関わる規則を検討し基本的な合意が得られた.
引き続き,2003年4月初め韓国ソウルにおいてANQボードメンバ会議を開催し,2002年11月のANQ発足時の会議に引き続き,ANQ運営に関わる規則類を詳細に検討した.この検討は継続する.また,このときISQ(インド)の提案によりDOG(ドバイ)のANQ加入が認められ,ANQメンバ組織は11となった.その他にもANQメンバ組織増加の努力が続けられている.
(3) 第17回AQS/第1回ANQ会議の共催,支援,そして積極的参加
2003年9月23〜25日にCAQ主催のもと北京で開催された第17回AQSに向けて,第16回AQSでの経験を体系的文書の形でCAQに提供することによって技術的な支援をするとともに,シンポジウムへの論文投稿,参加勧誘を積極的に行い,JSQCから23の論文発表,40名の参加者を得た.このとき2002年11月に設立されたANQの第1回会議も同時開催され,設立祝賀式典が執り行われた.SARS問題発生,経済停滞という厳しい環境にあって,100名以上の参加者がありJSQCとして可能な最高の貢献ができたものと評価している.

13.標準委員会(委員長 椿 広計)

品質管理学会として,国内外の品質管理関連分野の標準化活動とその活用状況を会員に対する調査で把握し,学会による標準化活動の方向性を探りました.結果を会員にフィードバックします.

14.日本学術会議 経営工学関連(担当:圓川 隆夫)

学術会議には本学会として,経営工学研究連絡委員会および人工物設計・生産研究連絡委員会経営管理工学専門委員会(実質的に合同で活動)にそれぞれ委員を派遣し,現在9つの学会から構成されるFMES(経営工学関連協議会)と連携のもとで活動をしています.本年度の活動としては,学術会議18期の終了に伴いJABEE関係に関連した研連報告書を取りまとめました.JABEE審査では昨年度に続き今年度も2校の試行審査を行い,次年度からの本審査に向けての準備体制を整えました.同時にFMESの活動のおけるJABEE審査の比重が高まったことことに対処するためにFMESの会則,覚書を改訂・整備させ,事務局も日本オペレーションズリサーチ学会が当面担当する等,大幅な体制強化を行いました.なお,恒例の研連シンポジウムは,「経営工学と企業の社会的責任」というテーマで本年12月5日にプロジェクトマンジメント学会の担当で行われることになっています.