一般社団法人日本品質管理学会

第45年度 自 2015年(平成27年)10月 1日
至 2016年(平成28年) 9月30日
事業計画

1.運営方針

 1970年日本品質管理学会(以下、JSQC)は、品質管理の一層の発展と学理の探究を目指して、高度経済成長の後期に設立されました。その後1990年頃までには、日本は全社的品質管理活動を世界に先駆けて展開し、国際経済のトップに立ちました。JSQCの先達は、産学が連携した実践的研究を通じて学理においても世界をリードし、わが国産業界の発展のみならず、品質文化の国内外での醸成を支えました。科学的品質経営をソフトウェア産業、サービス産業等に拡張する方法論についてもJSQCは様々な提案をしたのです。
 しかし、バブル崩壊以降続いた日本の自信喪失は、わが国産業界の最大の強みであり、イノベーションの源泉であった全社的品質経営の展開と学理の発展に急ブレーキをかけてしまいました。今日でも「日本の品質管理」ブランドは、未だ世界の産学に通用しますが、その活動・学理を自律的に支える中堅・若手の中核人財が、10年後には枯渇するリスクが高まっています。
 JSQC第44年度では、大久保会長のリーダーシップの下、オールジャパンの発展に寄与するために品質の発展と学理の探究のあるべき姿をゼロベースで見なおし、第50年度(2020年)を完成年度とする新中長期計画を取りまとめました。第45年度以降、この新中長期計画を“QSHIN2020”と呼ぶことといたします。第44年度に創生された日本品質管理学会の(1)「真価」、(2)「深化」、(3)「新化」、(4)「進化」活動をQSHIN2020では、それぞれ(1)救真、(2)究深、(3)求新、(4)急進と位置付けます。
 第45年度は、QSHIN2020に沿って、学会活動を変容させる過渡期と位置付け、必要な活動と組織の再編に関わる規定整備に当たります。もちろん、第45年度においても、本部・支部・部会などの現行組織がこれまでの事業を適切に運営し、会員の皆様方にこれまで通りの水準の高いサービスを提供することは約束いたします。
 一方JSQCは、全ての本部・支部の現状の活動を第45年度末で終了させる方針であることを宣言します。第46年度以降、JSQC本部・支部のトップダウン的活動は、QSHIN2020に基づき、様々な連携組織の中で、日本再発展システムの歯車としてフル機能すべき活動に重点化します。また、第45年度に先行可能な事業には着手いたします。JSQC会員の皆様方には、ぜひ学会の新たな姿をご理解の上、ご支援・ご協力賜ることを衷心よりお願い申し上げる次第です。
 以下では、QSHIN2020の概要並びに関連する第45年度活動を示します。
(1)  救真2020: Japanese Association for Qualityの創設
 社会のGood Quality Practiceを見える化し、支援することで、Q活動による日本の再活性化を図ります。このため、Qに関わる活動の適切な発展・支援に賛同する産官学のあらゆる組織を支援者とする緩やかな連合体であるJAQ(仮称:Japanese Association for Quality)の設立、並びに設立後の支援に注力します。JAQは、正しいQ活動やその方法論の社会全般への浸透と強化を目的とします。このため、Q活動のあるべき姿を示し、着実なQ活動を評価・表彰する制度の支援・構築活動を行うと共に、Qに関わる基礎教育の全国民への共有化を図ります。
 第45年度には、一般財団法人日本科学技術連盟、一般財団法人日本規格協会と調整作業を続け、JAQ組織・活動案などを起案し、JSQCとして必要な規定の整備を行います。また、標準委員会を中心に、Q活動のあるべき姿に関するJSQC規格案の整備を推進します。さらに、初中等問題解決教育に取り組んできたTQE特別委員会活動などをJAQ活動への発展を見据え、主要な連携組織を明確にします。特に、文部科学省次期指導要領での社会的問題解決力育成強化を目指します。
(2) 究深2020:先進型マネジメント理論・技術の吸収と研究開発推進
1) 将来のQ活動に必要となる可能性の強い、先端的管理技術、Q活動を支えるマネジメントサイエンス動向を発掘・評価し、会員に情報提供を行います。特にJSQCの研究開発活動が必要な項目は、論文・著書の出版・競争的資金獲得・若手会員の育成・中堅会員の昇進・他学会との連携を意識した計画研究会を立ち上げ実効的な活動を展開します。
 第45年度には、研究開発委員会が必要な研究のロードマップを形成し必要な計画研究会を明らかにします。また、第46年度以降、現行の本部・支部研究会活動を本部の管理下に置くことを前提に、現行研究会の活動を総点検します。
2) 品質管理学会英文誌TQS(Total Quality Science)の学術的価値向上
 新設した英文誌を10年以内に日本の誇るQ学理の世界最高水準の学術誌に成長させます。
 第45年度は、まだTQS誌運営が開始されたばかりですので、ANQ活動と連携した当面の編集方針を維持します。一方、TQS編集委員会・論文誌編集委員会は、JAQ設立以降、究深2020に即した編集方針へ移行するための検討を開始します。
(3) 求新2020:QMの必要な分野への展開
 Q活動の展開・浸透が必要と考えられるサービス産業、地方行政のための質マネジメント研究を組織します。このため、本部にJSQC会員、サービス産業界関係者、関連他学会専門家による計画研究会を組織すると共に、支部では地域サービス産業、自治体を巻き込んだソリューション提供活動を展開します。
 第45年度には、サービス学会と連携し、本部にサービス・マネジメントに関する計画研究会を設置します。
(4) 急進2020:本部・支部活動の重点化
  1) 支部活動の重点化:地域産業界への価値提供
 第46年度以降、JSQC支部は、各支部地域産業界賛助会員組織・職域会員組織に対して、これまでの管理技術では解決が難しい問題に対して、若手・中堅会員と共にソリューションを提供するプロジェクトを活動の主体とします。JAQ設立後は、JSQCがコーディネータとなってJSQCを超えて他学術と協働しなければならない、一層難易度の高いソリューションの提供も調整し・提供することを目指します。
 このため、第45年度では支部規定を整備すると共に、第46年度以降、支部活動の存在しない東日本についても支部設立を目指し、準備作業を行います。
  2) 個人正会員のQ力量の見える化
 JSQC個人会員の専門分野別指導者としての力量を認証し、専門職として評価・表彰する活動を強化すると共に、学会正会員の専門職としてのQ活動や力量を社会に対して見える化します。
 第45年度は、会員の認証すべき専門分野を検討すると共に、講師・教員への学会による公式な推薦活動の準備を開始します。
  3) 本部事業活動の研究開発への重点化
 究深2020にも触れた支部研究会活動を本部の主要活動として実効化するために、研究会の権利とミッションとをより具体的なものとし、第46年度以降、学会誌特集、学会主催事業は、学会員の個人研究成果発表、相互交流を目指すもの以外は、原則として若手・中堅を含む本部研究会活動の成果発表と支部プロジェクト成果に基づくものに限定します。品質誌は、若手会員が利用し速報性を要する「論文誌」、研究会活動に関する論文、招待論説、解説、支部ソリューション提供活動の招待解説などからなる「特集誌」に分離し、論文誌は電子ジャーナル化します。
 第45年度は、研究開発委員会・編集委員会・事業委員会・広報委員会が協働して、第46年度以降の活動、特に品質誌の分離を定式化した活動を定式化し、関連する規定を整備します。
  4) 学会の果たす社会責任の明確化
 Qに関わる社会問題に対して、学会の立場で表明、提言、学会長の立場で緊急表明など公式見解を適切なタイミングで表明する仕組みを確立することで、JSQCがQに関する社会責任を着実に果たせる組織にします。
 第45年度は、広報委員会・理事会が中心になって、公式見解表明の仕組とプロセスを見解の妥当性に関係する事後リスク対応方法を含めて検討し、規定を整備します。
     
2.総合企画委員会

 救真2020に掲げられた、Qを求める企業・普及啓発団体、学術団体のオールジャパンの緩やかな連携組織(JAQ:仮称)2018年創設を目指します。このため、JAQ設立に向けた(一財)日本科学技術連盟、(一財)日本規格協会との調整作業を行い、JSQの活動などを計画します。
 また、総合企画委員会はQSHIN2020の司令塔として、特に急進2020に掲げられた方針の実現に必要な学会本部・支部活動の整理計画を進めます。規定委員会など関連委員会と一体となった活動を展開し、第46年度以降の学会活動に必要な組織・規定の変更を提案します。

3.事業委員会

 第45年度本部行事の構成は、基本的には平年時と同様、以下の通り予定しています。各支部の行事に関しては各支部の事業計画をご参照ください。
(1) 年次大会、研究発表会[各1回]
(2) シンポジウム[2〜3回]
(3) 講演会[2〜3回]
(4) 事業所見学会[3回]
(5) クオリティトーク[5〜6回]
 平成24年末の政権交代後の円安誘導政策により、一方で輸出企業を中心に企業の業績は回復基調にあると思われますが、一方では輸入品価格の高騰、消費税率引き上げに伴う反動などで、必ずしも企業環境は楽観視はできない状況です。また、TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)が基本合意に達したことにより、TPP加盟国間では、関税ゼロ化に向けての動きが加速するなど、国際的に競争力のある製品・サービスが期待される中、日本や世界が直面する様々な課題に対して、日本的品質管理が貢献できる・貢献すべき分野をテーマにした事業を企画します。産業界が直面する重要な課題を取り上げたタイムリーなシンポジウム、講演会を開催します。また、学会の社会的責任に応えるべく最大限の努力をしていきます。品質管理を推進しているデミング賞委員会の活動やQCサークル全国推進組織との連携を図り、品質管理の普及・推進に役立つような事業を展開していきます。
1) 部会/研究会活動との連携:部会や研究会活動の活発化を後押しし、その成果を発表する場をシンポジウム、講演会等で積極的に提供します。
2) 品質誌との連携:特集記事との内容面・講演者等での連携を図り、魅力的なシンポジウムや講演会を開催します。
3) 研究発表会での産学連携の強化:医療関係では、セッションを構成できるくらい実践報告もなされるようになってきていますが、一層の産学連携を強化すべく、産業界からの実践報告の発表件数を増やす新たな方策を考慮します。
4) 品質管理の推進を行っているデミング賞委員会、QCサークル推進組織との連携を深め、連携した品質管理の普及・推進に役立つ事業を企画していきます。
5) ヤングサマーセミナーに代わる行事の開催:次世代へのTQMの継承と発展のため、若いメンバー相互の研究・交流の支援のために、ヤングサマーセミナーを開催してきましたが、昨年度から中止しています。それに代わる、若手研究者の相互啓発・ネットワークづくりのための新しい行事を企画していきます。
6) コミュニケーションの場の充実:本来学会とは、同じ研究分野に携わる人たちのコミュニティです。会員同士の相互交流がきわめて重要です。クオリティトークや事業所見学会のような気軽に参加できる事業などを通じて、会員間の相互交流を深めます。44年度から、新入会員にクオリティトークについては、体験参加ができるような招待券を発行していますが、必ずしも意図したような参加者増につながっていませんので、新入会員が参加したくなる行事を企画していきます。

4.中部支部

中部支部の基本方針
 企業を取り巻く環境は年々厳しくなっており、苛酷なグローバル競争に勝ち残るためには人づくりがますます重要になっています。過去の経験に頼るのではなく、自ら新たな問題の解決ができる力を持ったグローバル人材の育成が急務となっています。また、大企業だけではなく、日本のものづくりを支えている多くの中小企業で品質経営の実践が求められています。日本品質管理学会本部はSHINKA即ち「深化」:学理を更に深める、「新化」:未来に向けた新しい価値を見つけ出す、「進化」:今後大きく変化していく社会への対応と発展に寄与し続ける とこれらのSHINKAを具体化した長期計画の中で「日本品質管理学会のあるべき姿=真価」を明確にすることに取り組んでいます。
 中部支部では、中小企業・サービス分野の企業も含めた人材育成に貢献し、産業界全体の品質レベルの底上げと仕事の質向上を図ります。このため、産学連携による研究会活動・行事を中部支部のSHINKAの発信の場ととらえ、その内容の見直しと充実を図ります。
【中部支部のスローガン】 グローバル競争を見据えた産学連携による「SHINKA」の発信
 産業界からの問題提起と、学界での解決策の掘り下げや理論付けを行う研究会活動を基盤とし、その研究成果を中部地区を中心に、ものづくりの現場にとどまらず医療・サービス分野の企業にも継続的に公開することにより、現場での品質管理の推進と充実に寄与します。
産学協同で実施する行事を品質管理の展開と啓発の場と考え、会員だけではなく一般の方々に対しても、品質管理の考え方を浸透させるため、有益で魅力ある行事を企画し参加を促します。
行事計画の具体的な進め方
1) 研究会  
   産学連携をベースにした研究会活動を支部活動の中心と位置づけて、次世代を見据えた若手研究者の活性化と内容の更なる充実を図ります。
・東海地区の若手研究会(名古屋工業大学:仁科健氏)[6回/年]
・北陸地区の若手研究会(金沢工業大学:石井和克氏)[発表会:1回/年]
・中部医療の質管理研究会(中部学院大学:国澤英雄氏)[6回/年]
・企業の困り事(例えば再発防止、未然防止など)をテーマとした、新規研究会の立上げと推進[詳細別途]
2) 研究発表会[1回/年]  
   会員の多岐にわたるニーズに応えた幅広い研究・開発テーマで、かつグローバルなものづくりの現場に展開できる事例を発表します。
学会の新しい研究成果と一般も含めた産業界からの具体的実践事例を発表します。
若手研究会(東海地区、北陸地区)、中部医療の質管理研究会から、実践に使える活動成果を発表します。
3) シンポジウム(基調講演とパネル討論会)[1回/年]
 
産学界の関心が高く、一般からも多くの参加者を得られる基本方針に沿ったテーマを選定し企画・運営します。
時代背景に沿ったテーマの中で、参加者の活発な意見を通じて、問題意識に対する答えが導出できる場をめざします。
4) 講演会[1回/年]  
   グローバルなものづくりの現場で役立ち、かつ一般からも多くの参加者を得られ、会員獲得につながる魅力的な企画を立案・運営を行います。
5) 事業所見学会[2回/年]  
   品質向上・人材育成に工夫や特色のある多様な業種、業態の事業所を選定します。
6) 幹事研修会[2回以上/年]
   幹事間の意思疎通を図り、行事の企画力・運営力のアップにつながる研鑚・議論できる研修を企画します。
中部支部の運営について
 研究発表会を企業の困り事を解決する場として、産からの参画を促進していきます。
 また、その運営に当たっては、品質関連団体との行事共催なども考慮し進めていくことを検討します。

5.関西支部

(1)運営方針
   日本企業は、世界経済の中で勝ち残っていくために、さまざまな構造改革や将来の成長戦略構築に頭を悩ませています。また、低炭素社会の実現に向けて、太陽光発電や電気自動車など、革新的な技術開発が求められる時代となってきました。今後、日本企業がさらに成長し、グローバル競争に勝ち残っていくためには、日本企業元来の強みである「技術開発力」「品質力」ならびに、それらの元となる「人づくり」がますます重要となってきます。
 このような状況の中、これまで日本の文化や産業を支えてきた“ものづくり”“ことづくり”の基盤を引き続き維持・発展させていくことが必要であり、このとき、品質管理の果たすべき役割はますます大きくなっています。
 関西支部では、品質力、組織・マネジメント力、現場力、顧客対応力の向上策について具体的に提言することにより品質管理のレベル向上に貢献することを目的に、事業活動のさらなる活性化を図り、より多くの会員が満足できる活動を展開していきます。

(2)事業内容
  1) 研究会
  (1) 統計的品質情報技術開発研究会
「新たなSQCの開発・実践を行うこと」「誤用を防ぐために既存SQCの再検討を行うこと」を通してSQC活動を活性化させます。今年度からは、品質管理教育の教材開発や教育の仕方等の検討も行います。
  (2) 科学的先手管理アプローチ研究会
マネジメントの課題を階層別に取り上げ、日本品質管理学会が培ってきた数々のQC(信頼性、IE、OR等を含む)技術をベースにし、科学的な先手管理、源流管理へのアプローチを体系化します。また、これらの成果を出版化し公表します。
2) 研究発表会 【1回 】
  企業のニーズと学におけるシーズをマッチさせ、産学で相互に研鑽できる発表会を企画します。
3) シンポジウム 【1回 】
  今、最も要求されているテーマを選定し、活発な議論のできるシンポジウムを企画します。
4) 講演会 【1回 】
  “ものづくり”“ことづくり”の発展に寄与できる魅力ある講演会を企画します。
5) 事業所見学会 【 2回 】
  特色のある事業所の見学を企画します。
6) QCサロン 【 5回 】  
  会員サービスの充実を図るため、講話とざっくばらんな質疑応答ができるサロンを企画します。

(3)その他
  1) 関西支部企画運営委員会の実施
 支部運営に関する各種の検討を行い、支部事業の活性化を図ります。中国四国九州地区の会員に対しても支部事業の案内を行い、支部事業への積極的な参加を働きかけます。
2) データ管理の質的向上と定点観測
 支部活動に関する各種データ収集・管理を継続的に行い、支部活動の現状把握や活性化に役立てます。

6.論文誌編集委員会

(1) 従来からの方針を引き継ぎ,論文審査において、査読意見を参考にしつつも論文誌編集委員会の主体的な判断に基づき採択の可否を決定していきます。また、「著者責任」を基本とし、新規性・価値のある主張を含む論文については原則として掲載する方針についても、変更ありません。年間の掲載数15本をめざします。
(2) 規定された方法に従って、投稿論文審査の質の向上と迅速化を図っていきます。
(3) 国際委員会と協力して、ANQ Congress 2016への論文発表促進、特に若手研究者への支援を積極的に行います。
(4) 国際委員会と連携して、ANQ 発表論文を対象とした英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の発行に向けて活動します。45年度はVol.2 No.1及びNo.2を発行する予定です。
(5) 論文掲載には相当なコストがかかるため、学会の財政状況を鑑みますと、論文掲載料の徴収は避けらない状況です。会員の理解を得つつ、引き続き検討いたします。
(6) 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)でのシステムを参考にしながら、「品質誌」論文誌においても、論文審査プロセスの効率化を目指し、電子投稿・審査システム導入に関して、引き続き検討いたします。

7.学会誌編集委員会

 第45年度も、昨年度に引き続き特集企画・研究会報告を通じて、品質管理に関する企業活動や最新の研究内容を提供していきます。前年度の委員会にて、以下の特集企画を予定しています。
Vol.45, No.4(2015年10月発行):『初等中等教育における問題解決力育成へむけて』
Vol.46, No.1(2016年1月発行):『安全・安心のための管理技術と社会環境』
Vol.46, No.2(2016年4月発行):『TQM推進部門のこれからの役割』
Vol.46, No.3(2016年7月発行):『海外生産における日本のマザー工場の役割』
Vol.46, No.4(2016年10月発行):『新時代のブランド・マネジメント』
 また、以下の連載企画の継続を予定しています。
連載:『経営トップ:私のTQM事始め』
 このほか、新中期計画で示された学会誌再編成の指針(各研究会による報告・特集企画を中心とする)を実現するために、編集委員会の構成を見直し、研究開発委員会・事業委員会・広報委員会等を含めた新しい運営体制に切り替えていきます。

8.広報委員会

 学会員・非会員の双方に対しJSQC の存在感や認知度を高め、品質管理に関して産業界に役立つような意見表明や解説、各種活動の内容や記録などを広く発信していきます。
(1) 学会の目的が新たな方法論の研究開発と実践、それを支える専門家の育成であることを考慮し、会員および非会員の学会活動へのより深い「参画」を促進することをねらいとした広報活動を行うべく努力します。
(2) 学会活動を学会員・非会員により深く認知し理解して頂くため、昨年度実施したアンケート調査に基づき、Webページの改修を進めていきます。
(3) 学会の中期計画に即した形で、関連学会や関連団体などとの連携を深め、より価値の高い情報提供を目指していきます。

9.会員サービス委員会

 近年の会員数の減少に歯止めをかけ、会員数増加に繋がるような活動を実施していきます。
(1) 職域会員や品質技術者により、安定的かつ意欲的な新規会員増強へと導きます。品質技術者には認定証を発行するとともに、希望によりWebサイト上に氏名、所属を公開します。
(2) 中堅・若手会員数を増加するための施策を検討し、関係委員会と協力して、正会員・職域会員への価値提供を目指します。
(3) 賛助会員会社に対するメリットを強調し、賛助会員退会を食い止める策を講じるとともに、賛助会員への専門的価値提供を促進します。
(4) 時代の流れに適応し、フェロー会員制度等を含めた会員制度の新たな在り方について検討していきます。
(5) 会員資格審査については、理事会のご協力をいただく中で粛々と実施していきます。

10.規定委員会

 第45年度は、QSHIN2020に沿って学会活動を変容させる過渡期にあたり、学会活動の更なる発展に貢献すべく各委員会等と協力し、QSHIN2020の実現に向けてそれぞれの活動や組織が効果的かつ効率的に進められるよう、活動の実態に即した規程、内規等を適切かつ迅速に作成、改訂するように取り組みます。

11.研究開発委員会

 中長期計画、および、昨年度の研究開発ワークショップの活動成果に基づき、以下の活動を行います。
  研究開発委員会が学会全体の研究会活動を把握し、研究会間の情報共有、研究会活動の活性化、新たに必要な研究会の提案など、学会の研究活動をさらに活性化するための支援・方策を円滑に実行できるための組織体制作りを各支部と連携をとりながら進めていきます。
  研究会活動とその成果を学会員へ広く伝えるために,活動報告を学会誌へ定期的に掲載する計画を作成し、学会誌編集委員会と連携をとりながら順次実行します。また、研究成果を対外的に広報するための方策を事業委員会、広報委員会と連携をとりながら検討、実施していきます。
  将来を見据えた研究分野の検討と新たな計画研究会の設置を検討します。
  以上の活動を円滑に、かつ、確実に実行できるように研究会内規を整備します。
     
(1) テクノメトリックス研究会
   テクノメトリックス研究会では、第44年度に引き続き、「統計的手法を中核とした品質管理手法の開発・普及」を目指します。具体的には、メンバーが興味あるテーマを持ち寄り、それについて議論を行い、品質管理の手法として確立できるようにします。多変量解析法を中心に、実験計画法、統計的手法の理論的側面、解析事例、解析手順などさまざまな視点から研究をします。また、昨年度同様、おおむね3ヶ月に1度の開催を考えています。そして、研究成果については、JSQC研究発表会、年次大会や品質誌などで積極的に発表していく予定です。
   
(2) 医療経営の総合的「質」研究会
   従来までの研究活動を継続して、第45年度もわが国の医療の質向上への貢献を図ることを目的とし、医療関係者と品質管理関係者(アカデミック、産業界双方)及び産業界トップマネジメントの相互交流を通じて、医療における品質管理を基盤とした総合的「質」経営に関する検討を進める予定です。
  1) 「医療のTQM七つ道具」の広報・周知
    七つの道具(手法)の選定の良し悪しを含めさらに検討を進めましたが、本年度も、関係各病院での更なる実施検証を含めて、具体的な取組みの支援と取組方法のガイドラインを作成する予定です。
    全国の病院での医療のTQM七つ道具の具体的な活用方法・対策具体例、特に業務フロー図の作成とそれに基づく改善案、事故予防対策案の事例を収集し、医療のTQM七つ道具事例集を公表します。
  2) 医療機関におけるTQM普及を促進する医療制度・政策のあり方を提案
    医療事故調査制度の講演会を開催し、制度の在り方と事故の原因究明と責任追及は別という考え方を広報して参ります。
    医療の質の向上に資する無過失補償制度のあり方を検討・提言します。
    院内事故調査制度に対する質専門家の係わり方を検討します。
  3) 国内外の医薬品・医療機器メーカー等におけるTQM実施状況とそれに関連する制度・政策に関して調査し、その結果を学会発表・論文投稿していく。
    子カルテに付随した不具合事例の検討を行います。特に一部委員も参加して翻訳した米国医学研究所の「医療ITと患者安全」の啓蒙と講演会等を実施します。
    機器に関するJIS T 60601-1-8副通則の普及啓蒙を今年度も続行し、医療機器の病院安全体制の見直しに関する提言を行なって参ります。
    医療アラームに付随した不具合事例の検討と医療機器使用者のための警報装置(アラーム)ガイドラインの改訂と米国ECRIのアラームハンドブック、ワークブックの啓蒙を行なって参ります。
       
(3) 信頼性・安全性計画研究会
   本計画研究会は、第36年度から9年間、3期にわたり、製品安全を中心とした信頼性・安全性の作り込み技術や、社会インフラを中心とする維持管理やBCMの問題に関して議論を続けてきました。今後も引き続き、以下の観点から、ベストプラクティスの収集と解析、ケーススタディ、委員の研究成果の報告、委員間の情報共有と討議を継続し、情報の有効活用と的確な意思決定の実現を目指して未然防止による信頼性・安全性確保の体系化を図ります。
  1) 信頼性・安全性作りこみ技術
    新規トラブル未然防止法の高度化
    次世代品質・信頼性情報システムの具体化と深化
    ハザードに着目した根本原因分析(RCA)の高度化
  2) 安全・安心を達成するための社会インフラ構築
    レジリエントな体制作り
    品質と安全を重視する組織文化の確立
    ユーザ・メーカ・行政の三者協業による信頼性・安全性確保のための方法論
 本年度より第四期(45〜47年度)の開始となります。始めに昨年までの議論をまとめ、現代社会での課題を整理します。そして、社会への提案事項を研究発表するなど外向きの発信に取り組みます。さらに、本学会の特徴を活かした信頼性・安全性の取り組み方を考え、上記の観点を中心に社会の求める課題に取り組んでゆきます。

12.国際委員会

  第45年度の国際委員会は、第44年度の活動を基盤に、主に以下の事業を実施します。
(1) ANQ 2016への協力
 ロシアのウラジオストクにて、2016年秋にANQ(Asian Network for Quality)総会の開催が予定されています。ANQ理事会会長のユーリ氏が所属する組織であるロシアのROQ(Russian Organization for Quality)が主催します。大会開催の支援やアドバイスを、JSQCとして継続的に行っていきます。また日本からの参加者についても、ANQでのリーダーシップを発揮できるよう、引き続き多くの参加者を募る予定です。
(2) ANQの安定的発展のための調整
 2016年の春には北京、秋にはウラジオストクで、ANQ理事会の開催が予定されています。JSQCとしてANQの発展に積極的に関与しています。ANQ-CEC(ANQの品質管理検定委員会)、Ishikawa Kano Award委員会、ARE-QP(Asian Recognition of Excellence in Quality Practice)委員会に委員を派遣する予定です。財務委員会では、JSQCが委員長を務め、2016年春の理事会では、委員長からの財務報告を行います。また、各理事国の開催順から、2017年春の理事会開催国として依頼される可能性があり、必要時日本での理事会開催を引き受けることになります。
(3) 英文電子ジャーナルの刊行
 英文電子ジャーナル(Total Quality Science)の刊行の2年目が開始されます。TQSに対する期待もあり、今年のANQ発表件数は増加しました。第45年度では、この安定的な運営を目指します。
(4) 海外の品質に関連する学協会とのアライアンスに関する具体的な検討
 幅広く海外の学協会と交流をもつための具体的方策について継続して検討します。特に、ANQ関係団体と交流し良い関係を作りはじめました。今後はこれをさらに発展させ、ANQ関係団体以外に対しても若手会員が交流する際の支援ができるようなプログラムを検討します。また国内でも設置されたサービス学会との関係を構築し、サービス科学に関する国際組織との関係性も作り始めることを検討します。

13.標準委員会

(1) 第44年度に引き続き、JSQC規格の制定を推進します。
  1) 「プロセス保証の指針」:2015年12月の制定を目標に推進します。
  2) 「公的統計指針のプロセス−指針と要求事項」:2016年初旬の制定を目標に推進します。
  3) 「方針管理の指針」:2016年春の制定を目標に推進します。
(2) 新しいJSQC規格の制定を推進します。
 「品質管理教育の指針」の制定活動を開始致します。2016年初旬にデザインスペックを作成し、その後原案作成を開始します。
(3) JSQC規格のJIS化を推進します。
  1) 「日常管理の指針」のJIS化について、JISCの審議会の結果を待ち、その後のフォローを行います。
  2) JSQC 規格「方針管理の指針」の制定後、JIS Q9023の定期見直しに合わせた改正 提案を念頭に、「方針管理の指針」のJIS原案作成に着手します。
(4) JSQC規格の普及活動を継続して推進します。
  1) 事業委員会等と連携し、規格制定後の講習会を引き続き実施します。
  2) 個別の要請に基づく、JSQC規格に関する講習会の開催を検討します。
  3) 賛助会員企業における、JSQC規格の常備化の推進など、講習会以外の普及についても検討します。
  4) 日本科学技術連盟や日本規格協会が実施するTQM研修へのJSQC規格の反映を推進します。
  5) 海外での普及を念頭に英語による販売窓口の設定を検討します。
  6) JIS化を完了した規格のISOガイド規格提案を継続して検討します。

14.FMES、横幹連合関連

 45年度も引き続き、FMES代表者会議、FMES/JABEE委員会、FMESシンポジウムに参画し、経営工学関連学会との交流、JABEEの審査活動、FMESシンポジウム等の活動に、中核団体として協力していきます。また、JABEEの役割についても変革が求められており、FMES代表者会議やFMES/JABEE委員会を通じて、今後のあり方について意見を述べていきます。
 横幹連合に関しては、これまでと同様、適宜活動に協力していきます。

15.研究助成特別委員会

 第45年度も引き続き若手研究者に対する研究助成を行います。募集要項の主な内容は以下の通りです。
 「助成金額は1件5万円で4件以内。対象者は、日本品質管理学会の正会員もしくは準会員、申請時に35歳以下で大学・研究所・研究機関等において研究活動を行っている者、留学生の場合は日本の大学院に在籍する外国籍の留学生等の要件を満たす者(年齢制限はありません)とします。すでに2回採択された者は選考対象から外し、助成対象は品質管理に対する研究全般およびANQ以外の国際会議での研究発表への旅費支援も含めます。期間は1年間(2015年10月から2016年9月)です。研究成果を品質誌へ投稿、あるいは、研究発表会などで発表することを奨励します。」

16.QC相談室特別委員会

 本相談室は学会ホームページ上で運営・展開されています。これまで、さまざまな項目に対してレベルの高い質問が寄せられ、それに対するボランティアの活発で的確な回答がなされ、一定数の閲覧者を獲得してきました。
 今後、現在のような掲示板による情報交換の場を設け続けて行くかについては検討の余地があると思われますが、第45年度は下記の方針での活動を考えています。
 1)掲示板の運営について:現在のパスワード記入方式に変更後「あらし」の問題が生じていないことから、この方式を継続する、2)自由な質問とボランティア的な回答という従来の形式を続ける、3)学会主催の催しの際等、機会をみつけ、相談室の存在をアピールし、より活発な利用状況をめざしていく。

17.TQE(問題解決力向上の為の初等中等統計教育)特別委員会

 全ての人々が各人の能力を発揮し、生きがいのある楽しい生活を送り、幸福になるための問題解決教育を初等中等の学校教育にて為しうるよう、過去6年間の活動を継承し、以下の取組みを行って参ります。
(1) 問題解決教育を通して、自己啓発・相互啓発が為され、一人ひとりの潜在的能力を引き出し、自らが主体性を持って行動し、人に優しく、社会に貢献しうるように、人間的成長を図るべく、TQE委員会の活動の見直しを図ります。このため、連携組織などを洗い直し、次期学習指導要領改訂作業を見据えた活動を行います。
(2) “総合的な学習の時間”を活用し、上記1.の問題解決教育の充実とさらなる普及に努めます。
(3) 上記1., 2.の為に、学校現場での具体的な教育教材事例を主要な学年ごとに開発することに努めます。
(4) 上記1., 2., 3.に関連し、問題解決プロセスの普及・啓蒙のために、問題解決教育ワークショップを開催致します。
(5) 初等中等統計教育における「生きる力」育成への活動支援として、40年度に設立された統計グラフ全国コンクールにおける 日本品質管理学会賞の周知・徹底を図り、応募件数の増加と、その質の向上に努めます。

18.安全・安心社会技術連携特別委員会

 日本原子力学会(ヒューマンマシンシステム部会/社会・環境部会)等との共催の「安全・安心のための管理技術と社会環境」シンポジウムを、引き続き積極的に推進します。また、自動車事故対策機構等の審議についても引き続き参加・協力していきます。ISO 39001についても、認証制度の普及、支援規格の開発などについて引き続き協力していきます。

19.JSQC選書刊行特別委員会

 「JSQC選書=品質管理に関する、非専門家向け高度教養講座」の地位を確立すべく、引き続き、品質立国日本再生に寄与するテーマで良質の書籍の発刊を目指します。
 並行して、第46年度以降の選書テーマ候補を充実させ、時宜を得た発行計画の立案を行います。その際、JSQC選書既刊本に対する読者の声の収集・把握に努め、今後のテーマ選定等に活かします。必要があれば、テーマ選定から発刊までの一連のプロセスを改善します。書籍の内容と購入者の傾向や関係を探ることも考えます。
 また、JSQC選書の知名度向上に向け、有効な広報策について検討・実践を試みます。

20.部会

(1) ソフトウェア部会
  第45年度は前年度に引き続き、以下のことを行います。
  1) 新たな研究テーマを設定し、活動を行います。
 前年度同様、一ヶ月に1回程度の会合を開催しながら、品質の高いソフトウェア開発に関するテーマを設定し、研究活動を進めます。また、アウトプットを意識した活動を行い、研究活動の活性化を図ります。さらにこれらのことより、部会メンバーへのサービスの向上を図ります。
  2) ソフトウェア開発関連の行事に積極的に協賛・後援します。
 他団体の開催するソフトウェア開発関連の各種行事に協賛・後援することで、部会メンバーの便宜を図るとともに、ソフトウェア部会活動の活性化を図ります。
   
(2) QMS有効活用及び審査研究部会
   昨年度に引き続き、継続したテーマで研究活動を行い、必要なものは年次大会などで報告する予定です。また、新たな研究テーマの開発を行う予定です。
  WG1: 審査の視点での改正ISO 9001の研究
組織が構築し、運用するQMSをどの様に審査するべきかという視点で研究します。
  WG2: 改正ISO9001の意図及び審査員の力量の研究
DISベースの研修成果のIS版への改訂、要求事項と管理技術との対応の明確化、管理技術の自己評価シートの検討及び検証を行います。
  WG3: ISO9001:2015 移行への実践研究《組織が如何に省エネで改訂9001に移行するか?》
2015版への移行の実践研究及び実践ポイントの第三者評価方法を研究します。
  WG4: 会社を強くする「効果的なQMS診断アプローチ」の研究
自己適合宣言チェックリストのISO9001:2015年版への対応を行い、JISQ17050-1に基づく自己適合宣言の試行を1社追加し、その検証を行います。
  WG5: 外部委託管理の指針研究
外部委託管理の指針のJSQC規格化を行います。
  WG6: ISO9001(2015年版)対応 中小企業向けQMSモデルの研究
業種別QMSの研究及び最先端企業の研究を行います。
  WG7: 有効性の高いマネジメントシステムに向上させるための審査技術の基本研究
研究成果を年内に出版します。
 
(3) 医療の質・安全部会
   第45年度も前年度に引き続き、研究活動はPCAPS、医療QMS等を中心に進めてまいります。医療QMSについては、医療における日常管理、方針管理を中心に、医療のTQMモデルの構築を進めています。特に、組織的改善活動をいかに進めていくべきかについて、重点的に研究を進めてまいります。PCAPSは、昨年度までに実装する病院が増えてきました。今後は完全実用化に向けて、研究を進めてまいります。医療界全体への啓発・推進活動も、昨年度以上に積極的に進めていく予定です。毎年開催している成果報告シンポジウムは、2015年2月末に開催する予定です。研究成果の発表は、JSQCだけでなく、医療関連の学会でも積極的に発表してまいります。
 教育・啓発活動については、医療の質マネジメント基礎講座を引き続き開講する予定です。今年度からは、医療系の大学と連携することで、より幅広く医療従事者に広報を行い、受講生の増加とともに、会員増も目指していきます。また、引き続きアンケート結果等を参考に、カリキュラムの見直しを行うとともに、アドバンストコースの検討を始める予定です。
 部会員数については、医療者の入会がさらに増えるように、広報活動を行っていきます。昨年度から始めた医療界を中心とする他学会での研究紹介、基礎講座の紹介等の企画を行い、効果を見ていきます。