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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2005 5月 No.260

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■トピックス:(財)日本規格協会との新しい取り組み ─ 品質管理検定制度 ─
■私の提言:Q-Japan構想 ─ 強い現場 ─
■わが社の最新技術:超親水性精密印象材「フュージョン」
・PDF版はこちらをクリックしてください →news260.pdf

■ トピックス
  (財)日本規格協会との新しい取り組み ─ 品質管理検定制度 ─

JSQC庶務委員長・早稲田大学理工学部 棟近 雅彦
この度、品質管理学会は、(財)日本規格協会(以下、規格協会)との共同事業として、品質管理検定制度を開始することにした。制度の詳細については正式決定されていないが、近々にこの事業の運営主体である規格協会から公式の発表がある予定である。細部については変更もあり得るので、速報という形で本制度について紹介することをご理解いただきたい。

この制度は、もともとは規格協会が企画し、検討を進めてきたものである。これは、企業のものづくりに関わる品質管理に関しての底辺層の底上げによる品質意識向上、製品品質の向上を目的としている。また、JISマーク認定工場の制度改革とも若干関連している。JISマーク認定工場の認定を受けるためには、工業標準化品質管理推進責任者を選任する必要があった。しかし、制度の改革にともないその義務がなくなり、資格そのものはなくなることになった。品質管理に関わる資格制度は、民間では一部行われているものの、この制度がなくなれば品質管理の推進に一定の成果を収めてきた仕掛けの一つがなくなることになる。今回提案する検定制度は、必ずしも工業標準化品質管理推進責任者を引き継ぐものではないが、これまで品質管理の推進に大きく寄与してきたものであるから、そのフォローアップも一つのねらいにしている。

品質管理学会では、長期計画委員会でパブリシティの向上を一つの課題として議論していた。そのための一つの方策として、規格協会からこの検定制度を協力して運営してはどうかとのご提案があり、理事会を中心に検討を進めてきた。そして、後述するいくつかの意義があることから、共同運営に参画することを決定し、運営にあたっての覚書を規格協会と交わした段階である。

この制度は、品質管理と標準化についての知識レベルによりいくつかの級を設け、級ごとに筆記試験を行い、得点が基準点を満たしていれば認定書を発行するものである。知識の内容としては、統計的方法、品質管理技法、標準化、管理・改善の考え方などである。当面は、このような知識レベルを評価することになるが、問題解決能力や指導力、管理能力などは筆記試験のみでは評価できない側面も多いので、面接、論文などその他の評価方法を将来的に取り入れることも視野に入れている。

学会としては、運営委員会に委員を推薦し、制度そのもののあり方について意見を述べるとともに、試験問題作成などに協力していく予定である。試験の合格者は規格協会、品質管理学会の双方が認定し、発表することになる。

この制度は、企業においては、教育計画・人事計画、品質管理教育計画立案、社員・派遣社員などの採用時の評価、社内研修の効果確認、品質管理に対する意識高揚、品質管理レベルの向上などに活用できる。

検討のきっかけは学会のパブリシティの向上であるが、品質管理の推進・発展に寄与するかという視点が大切であり、理事会でもその点を中心に議論した。特に、○1当学会の事業目的に沿っているか、○2社会的貢献に寄与できるか、○3パブリシティの向上等メリットのある事項は何か、○4結果の質を保証できるか、○5当学会にとって過度な負担とならないかという観点から、検討を加えた。○1○2に関しては、本制度は品質管理の発展に寄与するものであり、品質立国再生のためにも有効と考えられる。○3については、認定主体として当学会の名前が出ることも重要であるが、品質管理技術者の底辺が拡大して、結果として当学会への入会者が増えることが期待できる。○4については、運営委員会へ参画して意見を述べるとともに、試験問題作成にも参画し、最低限の知識レベルの保証は可能である。○5については、事業運営の主体は規格協会に担っていただくので、特に問題はない。飯塚会長は、Q-Japan構想を掲げており、その方針とも整合するものである。

現在はっきりしているのは、規格協会と当学会の2団体が運営に関わるということであるが、他の関係諸団体にも協力、支援をお願いしている。多くの関連団体から幅広く意見を取り入れることで、この制度をより充実したものにすることが期待できる。なお、詳細情報は規格協会ホームページ(http://www.jsa.or.jp)にアクセスされたい。


■ 私の提言
  Q-Japan構想 ─ 強い現場 ─

サントリーフーズ株式会社 岩田 修二
現在、品質管理学会は運営方針の中核にQ-Japan構想を据え、その具現化への活動を展開している。TQCからTQMへの変革を促した環境変化への的確な対応と、持続可能な成長を目指すQMSの確立であり、品質立国日本再生への道と位置付けられている。

構想の範囲は多岐にわたるが、「日本の製造現場の実力は落ちている?」という問題認識が底流にある。産業界からの現場力に関する問題指摘・改革提案も多く、強い現場造り・強い現場の再生が、この構想具現化の成功の鍵とも思える。

現場力の源泉は現場・現物・現実の三現主義の実践であり、日本のお家芸でもあったが、この三現主義の実践にも陰りが見えているという指摘も多い。メディアで派手に取り扱われる基幹産業での事故・事件は、この陰りを一層際立たせている。

企業・製品の競争力の低下という非常にシリアスな問題は、自らの現場力の実態を経営が把握できていなかったことが主要因であるとの認識をするべきであろう。

日本の現場力は、日本特有な能力・資質をもつ構成員による小集団活動(現場での全員参加型活動)に支えられてきたといえよう。しかし、徹底した省人化・ハイテク設備化、徹底した連続作業、徹底したアウトソーシング等の徹底効率化の流れと、結果としてのハイテク設備と単純作業の現場での共存等は、小集団活動への負荷を確実に高めている。このような現場の状況が、対応を取れる権限のあるマネジメントに「見える」ことが最重要課題となる。現場主義が浸透している企業とは、経営レベルでこれら現場の負荷が把握され、必要な場合、必要な経営レベルでの意思決定による措置がとられている企業である。一連の現場を取りまく環境の変化に経営が適切に対応した企業のみが、強い現場をもち、強い競争力をもった強い企業として持続した成長を遂げていると思える。

TQM先進企業の共通点は、会長・社長といった経営トップ中のトップが、現場について熱く語り、われわれに感動を与えてくれることである。強い現場を目指した小集団活動に関して、それらの企業をベンチマークとし、熱く燃えたTQCの時代を思い起こし、論議を重ねることが必要となろう。


■ わが社の最新技術
  超親水性精密印象材「フュージョン」

(株)ジーシー 経営企画室 村上 伸
例えば虫歯になり、歯科医院で治療を受けたとします。軽い場合は虫歯の部分を削り、セメントやプラスチックを詰めます。重い場合は歯冠全体を削って型取りし、その削った部分を金属や瀬戸物などに置き換えることになります。この型取りのことを歯科では印象採得といい、印象採得のために使用する歯科材料を印象材といいます。金属や瀬戸物などに置き換える型取りをするわけですから、印象材は精度のより高いものが求められます。

一般的な印象材としては、アルギン酸塩と石膏を主成分としたアルギン酸印象材がコストも安く、操作も簡単なので広く使われていますが、精度の点ではもっと優れた印象材があります。コストは高くなりますが、シリコーンを主成分としたシリコーン印象材です。シリコーン印象材は三十数年前歯科界に登場し、当初の縮合重合型からビニル基と水素基の付加重合である付加重合型へと進化しながら精密印象材として多くの歯医者さんに使われてきましたが、最後に残された問題点は疎水性ということです。

歯科の臨床において疎水性ということは印象採得時に出血や浸出液の影響で細部の精密な印象が採りにくくなります。そこで歯医者さんは出血や浸出液の影響を受けない工夫をすることになりますが、ここのあたりが歯医者さんの技術ということになってきます。歯科材料メーカーとしてはシリコーン印象材に界面活性剤を配合することで親水性を出すよう改良してきましたが根本の解決にはなっていません。また、印象を採った後、上手く印象が採れたかどうか歯医者さんがチェックするとき界面活性剤が入っていると印象全体が光って見え、細部が見にくくなります。細部を精密に印象したいのに、その細部のチェックがしづらいということです。

一方、親水性のあるゴム質の精密印象材としてポリエーテルを主成分とするポリエーテル印象材がありますが、この印象材は硬化後の硬度が高いため、歯の膨らみの下部を再現するにはシリコーン印象材の方が優れています。

これらの問題点を解決した超親水性精密印象材「フュージョン」は、シリコーン印象材として全く新しい技術で親水性の獲得に成功し、クラウンブリッジの印象で最も重要なマージン部を極めて高い精度で再現できることになりました。

わが社ではこの「フュージョン」に用いている技術を「Self-Wetting Technology」と命名し、その基本技術については特許出願中で、独自の処方、反応様式により構成されています。このユニークな技術により、これまで不可能であったポリエーテル印象材の高い親水性と付加型シリコーン印象材の寸法安定性、弾性性質を合わせ持つ全く新しいハイブリット精密印象材の開発が実現できました。「フュージョン」はこれまでにない口腔内細部にわたる鮮明な印象採得を可能とし、その結果、従来より高い信頼性を有した歯科治療の一助になるものと信じています。


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