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学会誌「品質」
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JSQCニューズ 2002 9月 No.239

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■トピックス「NEC TL 9000の認証取得について」
■私の提言「ストック型リソースの能力向上とTQMの役割」
・PDF版はこちらをクリックしてください →news239.pdf

■ トピックス  NEC TL 9000の認証取得について

日本電気株式会社 企業品質推進部マネージャー 小林 真一
日本電気 IPネットワーク事業部とIPソフトウェア技術本部は、日本で初めてTL 9000(電気通信産業の品質マネジメントシステム規格)の認証を取得致しました。併せて東北日本電気魔燗喧k地区で初めての認証を取得致しました。

TL 9000は、通信サービスの品質向上に取り組む国際的な組織QuEST Forumが制定する電気通信産業のセクター規格であり、今までに全世界で240件を超える登録証が発行されています。近年はアジア地区の取得数が4割を越えるまでに普及してきており、国内でも認証登録の動きが高まることも予想されます。

1. TL 9000との関わり
1998年1月に結成されたQuEST Forumが、1999年2月に開始したTL 9000パイロットプログラムに当社の米国現地法人NEC Americaも参加したことが関わりの始まりです。その直後からTL 9000の内容や動向を調査してきましたが、2000年の後半になり、海外の通信プロバイダからTL 9000の取得状況などの問合せが入ってくるようになりました。今後のビジネスを展開する上で、いずれは必要なものになるだろうとの判断からTL 9000認証取得への取り組みを決意しました。

2. TL 9000への適合
TL 9000はISO 9001:2000の要求事項51、業界特有の追加要求事項81、製品別に定義され11種類の品質データ測定管理から構成されています。追加要求事項では製品の信頼性、ソフトウェア開発、ライフサイクルモデル、顧客とのコミュニケーション重視など強化されています。品質データ測定管理では問題報告数、解決期間、返品率、ソフトウェアパッチ品質、修理成功率などを測定し、目標を定めて継続的に改善していくプロセスが求められています。

3. 継続的改善
製品の品質改善を効果的に進めるには、自社製品の業界内での優劣を知ることが必要です。電気通信製品は多種多様であり、同じ土俵で比較できるよう製品を8つに大分類し、更に60以上のカテゴリに分類されています。また同じ機能の製品を規模等で規準化し、単位当りの品質データとして比較できるよう工夫されています。製品毎の品質データは3ヶ月単位にMRS(Measurement Repository System、テキサス大学ダラス校に設置)という測定値蓄積システムに送信し、統計処理されます。カテゴリ毎に一定以上のデータが集まると平均、最高、最低などの業界統計が公表されます。この業界統計に、自社固有の品質データをプロットすると世界的な規模で自社製品の品質の位置を把握することができるようになっています。これを分析し、品質改善プログラムの策定・実行、改善度測定、品質データ登録、業界統計値入手、ベンチマーキングというP-D-C-Aを繰り返すことができます。

4. TL 9000への期待
TL 9000は、ISO 9001や他のセクター規格にはない品質データの測定管理という大きな特徴を持っています。これを有効に活用することにより、製品の品質を継続的に向上させていくことができます。TL 9000認証を取得しても、その後の改善を怠れば業界内でのパフォーマンスは低下しビジネスにマイナスに作用してしまいます。従って各組織にはたゆまぬ改善が求められています。この改善を業界に関係する全ての組織が進めて行けば、その積み重ねとして業界全体のパフォーマンスを継続して向上させていくことができます。NECは、今後とも皆様方と協力しながら、信頼の高い製品を社会に提供していきたいと考えています。

■ 私の提言  ストック型リソースの能力向上とTQMの役割

山梨大学大学院 教授 長田 洋
現在、日本企業は構造的な経営不振に苦しみ、従来の経営モデルを大きく変える経営革新(イノベーション)を追求している。この革新のためにはTQMはどのように貢献できるのであろうか。革新においては二つのアプローチが考慮されなければならない。第一はOutside inと呼ばれるが、環境の変化を予測し、その変化に迅速に対応することである。この面では、すでに戦略策定、方針管理、ビジネスプロセスの革新などTQMは有効なツールを開発し、提示している。第二のアプローチはいわばInside outともいうべきもので企業の革新力、変革力の担い手である人や技術などの経営資源に着目し、その資源の能力を上げて革新を図るもので近年、コアコンピタンスやコンピテンシーなどの研究が特に経営学では進んでいる。これらの革新を引き起こす経営資源は人、組織、技術、知識、ステークホルダーとの関係性(リレーションシップ)などであり、いずれも日常のビジネス、業務を通してその能力は向上し、成長するものである。筆者はこれを「ストック型リソース」と呼んでいる。

TQMではこのストック型リソースの形成、能力向上のためのマネジメントにも深く関係している。その代表例はQCサークルである。しかしTQMでは経営プロセスに関する手法やモデルに関する研究開発に比べてこのストック型リソースに関する研究は未開拓といえる。最近は人的資源マネジメント、組織マネジメントなど従来のマネジメントに加えナレッジマネジメント(知識マネジメント)や技術マネジメント(MOT)など新たなリソースマネジメントの研究が特に米国で活発になされているが、経営革新を効果的、効率的に導くためにTQM研究者によるこの分野での貢献を大いに期待したい。


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